小説に使える国際社会の闇知識

飛野猶

第一章 テロ組織と国際紛争

第1話 イスラム国とヒラリーメール問題

はじめまして、イザです。

仕事は、違法武器とかドラッグの仲介屋やってます。

そんな関係もあって、この章を担当することになりました。よろしく。


で。一話目は、いま一番ニュースなんかで耳にすることの多いテロ組織、イスラム国(ISアイエス)。

ISアイエスの他にも、ISISアイシスとかISILアイシルとかDAIISHダーイッシュとか色々呼び方はあるけど、ここでは面倒だからISで統一しとく。


設立は2004年。指導者は、アブ・バクル・アル・バグダディ。

主な活動場所はシリアとイラク。構成員数は2万~3万人。

推定資産は20億ドル(約2000億円)。

イスラム教スンニ派の過激派。

文句なしに、現在では最も裕福なテロリスト集団だ。


世界中でテロを行ったり、誘拐した人間の処刑動画をネットに流したり、日本人もターゲットになってニュースでよく報道されてたよな。

2015年にはパリ同時多発テロを起こして、30分の間に130人を殺害して、350人以上を負傷させた。


ISの構成員の多くは、イスラム国家樹立の理念に感化されて世界中から集まってきた他国の人間たちだ。若者が多いけど。

3万人ほどの戦闘員のうち、およそ半分が中東出身、2割ぐらいがヨーロッパ出身といわれてる。


ヨーロッパ出身者は、もともとイスラム圏からヨーロッパに移住した2世や3世が多いって言われてる。移住したものの、差別や疎外感、貧困なんかの問題を抱えていてるときに、ISに希望を見出して引き込まれるらしい。


募集方法は、ネットを使ったものが主。TwitterやYouTube、Facebookに様々な言語のよくできた宣伝動画を挙げて募集してるよ。


ISがほかのテロ組織と大きく違う点は、すでに国家としての体をなしてることだ。

シリア北部にある『ラッカ』を首都にして、通貨も独自のものを発行してるし。

道路、水道、電気といったインフラ整備もするし、学校や裁判所、金融機関も運営・管理している。


体制としては、最高指導者(カリフ)をトップに、シリアとイラクにそれぞれを統括する首相を置いている。んで、その下にさらに知事や、軍事・財務・法務・治安・広報なんかの省を置いて統治してるんだ。


ただ実際には力で市民や構成員を抑え込んでいて、独自解釈したイスラム法を使って毎年何千人という人間を処刑する恐怖政治を敷いてる。


主な財源は、支配地域から徴税した税金と、石油収入。ほかに、麻薬や身代金、寄付なんかからも資金を得ている。



ISが大きな力を持つようになったのは、シリア内戦に参戦してからだ。




この話を始めるには、シリア内戦がどういうものかから説明しなきゃなんねぇよな。


シリアは、アサド政権(シリア軍)とそれに反対する反政府勢力が内戦をしてる。

そのアサド政権を裏で支援してるのが、ロシアと中国、イランだ。

一方、反対勢力を支援してるのがアメリカとイスラエル。

だから、シリアはアメリカとロシア・中国の代理戦争に巻き込まれてるってわけ。


ISは、シリアでは反対勢力の一つなんだ。


アメリカや西側諸国は有志連合を作ってISに空爆をしかけてる。

ちなみに、日本もこの有志連合に入ってるんだか入ってないんだか微妙なところ。

人道的支援はするけど武力支援はしないってポジションだから。まぁ、でも有志連合側だろってことで、ISは日本も標的にするって言ってる。




この関係で話題になったのが、アメリカの大統領選挙で出てきたヒラリーのメール問題だよ。


ことの発端は、2011年10月20日にリビアの独裁者カダフィが殺されたことから始まる。


この件については、2013年に当時CIAとNSA(国家安全保障局)の職員だったエドワード・スノーデンが、NSAの極秘監視プログラム「PRISM」っていう大手IT企業のサーバーからメールやらチャットやらの情報を抜き出すシステムを内部告発したときに持ち出した機密情報の中に、国務大臣だった頃のヒラリー・クリントンと部下との間の極秘メールが含まれてて騒がれた。


スノーデンは、その後、命の危険を感じてモスクワに亡命している。

しかし、そのメール問題は一旦収束したんだ。


でも、今回、ヒラリーの関係者が未成年者にわいせつメールを送ってた件でFBIに家宅捜索を受けた時、押収されたパソコンの中からヒラリーが国家機密事項を私的メールで大量に送っていることが発覚して、いったん収束していたメール問題がFBIの再捜査開始っていう形で再燃した。


内容は国家機密だから明らかにされてはいない。


なんで、セキュリティのしっかりしている公的なアカウントを使わなかったのか?

それは、公的アカウントを使うと中身を公的な機関にチェックされるから、それを避けるために私的アカウントを使ったっていう話。


じゃあ、公的アカウントに載せられないほどヤバい内容って、なんのメールだったんだ?ってなるんだけど。




こっから言うことは、本当なのかどうか分からない。これをどう捉えるかは、あんた次第。よくある荒唐無稽な陰謀論だと笑うのもいいし、闇の中にある真実の一つだと捉えるのも、どっちも自由。



2011年10月20日にリビアの独裁者カダフィが殺されたんだけど、その2日前に当時国務大臣だったヒラリーはリビア入りしてる。雇ったアフガニスタン人の人殺し専門の傭兵たちを連れてね。

そして、カダフィを暗殺した。


アフガニスタン人の傭兵たちは、その後アフガニスタンに戻ったところでカブール空港で飛行機ごと「事故」で爆死している。消されたらしいんだけどね。


そして、ヒラリーはカダフィを暗殺した後、リビア政府が貯めていた134キロの金塊と200億ドル(約2兆円)の資金、武器・弾薬を手に入れて、それをクリントン財団の口座に入れた。


さらに、その資金や武器・弾薬を、シリアのアサド政権を倒すために、シリアの反政府勢力に渡して武力を増強した。主にアルカイダ系のISとヌスラ戦線(シリア征服戦線)っていう武装組織をこの金で育て上げた。ヌスラ戦線の一部はその後ISに統合されて、残りは現在はISと対立してる。


資金などの受け渡しは、ヒラリーの忠実な部下である駐リビアのアメリカ大使クリス・スティーブンスを通じて行われた。


この辺のやり取りが、私的メールの中に含まれているって言われてる。



CIAにはブラック・オプス(黒い軍事行動)を行う特殊部隊がある。アメリカに反抗する外国の大統領や独裁者を暗殺したり破壊工作したりする専門部隊のこと。構成員としては、30代~40代で退役した軍人を雇い入れてる。

CIAの生粋の職員は、事務屋のエリートが多いからね。あいつらは荒事はできない。

特殊部隊の方は実質退役軍人で構成されたCAIの実行部隊。それのトップでもあったのが、在リビアのアメリカ大使クリス・スティーブンス。

CIAは国務省の外局だから、CIAの上層部は国務省の人間なんだ。


クリス・スティーブンスはヒラリーからの指示と金を元に、CIAの特殊部隊を使っていろんな破壊工作を行っていた。ISを育てるのもその一環だった。



でもね。ISは、ヒラリーたちの思惑通りに動いてくれるような便利な団体じゃなかったんだ。牙を向いた。


2012年9月11日。リビアのベンガジにあるアメリカ領事館がイスラム過激派であるサラフィー・ジハード主義者たちの武装集団に襲われた。2000人が押し寄せて、ロケット弾やアサルトライフルをぶち込み火をつけた。

このとき、その領事館にいたクリス・スティーブンスはオンラインゲームをしていたらしいね。そして、「銃撃だ」っていう一言を書き込んだあとオフラインになって戻ってこなかった。武装集団に惨殺されて市内を引き回されてたんだ。

結局、大使のクリス・スティーブンスを含め領事館員4人が殺害された。


サダフィー・ジハード主義者ってのは、イスラム教スンニ派の中でも特に原点回帰を求める過激な主義のやつらのことをいって、ISもこの中に入る。


これのことをベンガジ事件っていうんだ。

そのしばらく後、ヒラリーは体調を崩し、入院。2013年の2月には退任している。


結局ISはアメリカにとっても手に負えないほどの凶悪なテロリスト集団に育っちまって、アメリカは西側諸国と有志連合なんて作って今はISに攻撃を仕掛けてるってわけ。




こんな話もあったな。日本ではあまり注目されてなかったけど、ほかの国では報道されてたことに、ISの兵士たちの投稿動画に大量のトヨタのピックアップトラックが映ってた報道映像がある。

数台どころじゃなく、数十台の綺麗な同一規格のトヨタ製ピックアップトラックが映ってたんだ。だから、当然、どっから手に入れたんだ?あいつら。ってことになる。トヨタ自身もアメリカの財務省のテロ資金調査部門から聞き取り調査を受けたりした。


この辺の調査はある程度結果が出ていて、アメリカの国務省とイギリス政府がシリアの反政府勢力に対してトヨタのトラック数十台を含む様々な資金・物資援助を行ったって報告が出てる。その一部、もしくは大部分がISにも渡ってたってことらしいよ。


なんでアメリカはシリアの反政府勢力を支援してるかっていうと、石油の利権をコントロールしたいってのと、アサド政権側についてるロシアと中国に石油をこれ以上渡したくないかららしいよ。

あと、戦争してるほうが儲かる人間も多いからね。


ついでに。ヒラリー・クリントンは、ネオコン(新保守主義)の一人なんだ。ネオコンの支持母体は在米のユダヤ勢。

だから親イスラエルで、反イラン。イランが支持するアサド政権が気に食わないのは、明らかだよな。ましてシリアはイスラエルのすぐ近くにあるし、そこに親イランのアサド政権の国があるのは目障りで仕方ないんだろうよ。だから潰したかったんだろうね。


こんな風にして、シリアの国内ではいくつもの勢力がぶつかりあってる。主に、アサド政権、反政府勢力(最大勢力はヌスラ戦線)、ISの三つの勢力が互いに戦闘を繰り返してて三すくみの泥沼状態。しかもアサド政権の後ろにはロシア中国イラン、反政府勢力の後ろには西側諸国、ISは税金と石油で高い資金力でガンガン武器とか買ってる。っていう構図。……これで、内戦が終結に向かうはずがないよな。


そして難民が大量に生まれて、ヨーロッパに流れ込んでるってわけ。


シリアの前は、アフガニスタンで同じような戦争してたじゃん。あと、中東に、カンボジアに、ベトナム。どれもアメリカが肩入れして大量に武力と武器を注入して大量の人間が死んだ。いつまで同じこと繰り返すんだろうね? あの国は。


トランプ政権になって、内に籠っててくれたほうが世界は平和になるんじゃね?なんてね。




そういや、ヒラリーのメール問題は、ロシアがしかけた……なんて噂もあるらしいよ。トランプは、ヒラリーと比べると遥かにロシアのプーチンと気が合うみたいだしさ。それにプーチン自身やその側近が、今まで何度も「ISを作ったのはアメリカとイスラエル」なんてこと言ってるし。

そりゃプーチンはいろいろ知ってるだろうさ。前にも書いたけど、NSAの極秘情報持って国外逃亡したスノーデンを匿ってるのはロシアなんだしさ。



結局。冷戦終わったって、手を変え品を変えアメリカとロシアは喧嘩し続けてて、世界中がそれに巻き込まれ続けてるっていう状況は変わりないんだよな。大統領選挙もISも、その一幕でしかないのかもな。

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