第52話 精神科デイケアか、さもなきゃスポーツクラブ(!?)か
精神科デイケアを利用してみようと思ったきっかけは、症状が悪化して、会社を休職した私がひたすら、家で寝てしまい、全く何も、なーんにも、出来なくなったからだった。生活リズムが狂いまくっていた。
今ならばおそらく、段階的にリワークプログラムを利用したと思うが、当時(十年以上前)はそういった制度はネットで探しても見当たらなかった。まあ、私の探し方が悪くて見落としていた可能性もあるけれども。ただ、職場からも特にそういったところに通ってください、という指示も無かったので多分リワークという制度自体が構築の途上にあったのだと思う。
診察の際に生活リズムの主体が寝てばかりになっていることと、それを整えるためデイケアに通いたい旨を主治医に話すと、あまり感触は良くなかった。
開口一番「今、病院に併設されているデイケアは満員で順番待ち状態なんだよね」と医師は言う。
「それに寝てしまうのは、仕事で疲労した心身を休めている側面もあるから、しっかり休養をとってからにしてほしいんだけれど」とも言われた。
とはいえ、私の強い希望もあって、主治医の指示を受けた看護師さんが、近所にあって病院とも細いつながりがあるというデイケア施設のパンフレットを持ってきてくれた。
パンフレットを手にし、深夜、仕事から帰ってきた両親にデイケアに通ってみたいという旨を話すと、意外な反応が返ってきた。
「精神科デイケアって、作業所みたいなところでしょう? 真世には合わないんじゃない?」
「昼間寝てしまうなら、近所のスポーツクラブの昼会員になったらどうだ? 体力もつくし、いいんじゃないか」
……まあ、ラッキーなことに職場は公的機関(超ホワイト)だったため、休職中でも給料の七割ぐらいはゲットできた。それにデイケア施設を利用するのにも利用料がかかるので、毎日通うなら費用面ではスポーツクラブに匹敵する可能性もある。つまり金銭面では精神科デイケア≒スポーツクラブと言えなくもない。
私はまず両親の薦めのまま、近所のスポーツクラブを見学してみることにした。ちょうどよく、徒歩圏内にあるスポーツクラブで一日体験が500円、というキャンペーンを銘打っていた。
さくっと予約をいれて、平日の昼間、10時ぐらいにスポーツクラブを訪れた私は、驚いた。
佃煮にするほど人がいる。特にシニア層の女性が多い。空いているマシンはなく、私が好むヨガのプログラムは順番待ち。(システムが良くわからなかったため、その日はスタジオのプログラムを受けることすらできなかった)ロッカールームは、激混みでシャワーやジャグジーは先住者にまるっと占領されていた。
平日の昼間、時間がある人が考えることは皆、同じなのだと思った。
そして、そこにぐいぐいと割って入っていくパワーも当時はなかった。
今から思えば、そこが運命の分かれ道だったと思う。電車を使って、住宅街でなくオフィス街にあるスポーツクラブや、ヨガに特化したスタジオなどを見学してみれば、そして自分に合った場所を見つければデイケアのお世話にはならず健康的に、生活リズムが整った可能性もあるにはある。
でも、当時の自分の悪い癖(今でも少しその気があるが)で、オール・オア・ナッシング……な、極論に走ってしまい、スポーツクラブはないな、と一か所見ただけで判断してしまった。
そして、病院で紹介されたデイケア施設を見学するという流れになっていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます