第28話あとがき
後書きにプロの作家ではない自分がなにを書くか。
そもそも後書きって必要なのか?
非常に迷いましたが、レビューや、応援コメント等いただき、エッセイ・ノンフィクションジャンルランキングにも顔を出させていただきました(私の見た限り、最高順位は三位……だったはず)それなのに何の挨拶もせずに立ち去るのは心苦しく、お見苦しいとは思いますが筆をとりました。
少しですがこのエッセイを愛してくれた人、興味深く読んでくださった人たちにこの作品について、語りたいと思います。
まず、このエッセイ「精神科閉鎖病棟入院日記」ですが私にとっては「初めて」だらけの作品でした。
初めてのエッセイ作品であり、初めて原稿用紙換算二〇〇枚を超えた作品であり、初めて大きな反響をいただいた作品であり、初めてのペンネーム(普段は別のペンネームを使って公募に出したり小説を書いたりしています)を使った作品であり、初めてカクヨムという小説サイトに載せた作品なのです。
そして実を言うと「精神科閉鎖病棟入院日記」は五年ぶりくらいに小説を書かんとする私こと筆者のリハビリを目的として書かれた作品でした。
もともと私は高校ぐらいからぽわーんと(あくまでぽわーんと)文章で食べていきたいな、なんてことを考えて公募にいろいろ作品を出していました。
でも佳作はとれども大賞をとるにはなかなか至らず、自分の才能の無さがいやになり何度も筆を折ってきた経緯があります。
大体数年スパンで、書いては止め。止めては書きを繰り返してきたわけですね。
プラス長い文章……原稿用紙一〇〇枚の壁がなかなか突破できず(こういう方は結構いるみたいですが)思い悩んでもいました。
そんな私でしたが、尊敬する村上春樹先生が一日きっちり原稿用紙十五枚書いている、という話を小耳に挟み思ったわけですね。
(一日十五枚という枚数が多いか少ないかは人の主観によると思いますが)
なら、私はその半分。一日七枚書いたらどうか、と。
そして、お休みするときも二、三日はあったはあったのですがほぼ毎日休むことなく七枚ずつ書き進めることができました。
(だからほとんどの章が原稿用紙七枚分くらいの量になっています)
年内に書き終わる予定だったのが、少し延びましたが、大体の目標通りに完結させました。
(予約投稿しているので完結は一月十六日予定ですが、完結章とこの後書きを書いているのは二〇一七年元旦の朝になります)
毎日七枚は私にとっては集中して約一時間で書けるちょうどいい量でした。
毎日書くことの大切さも知ることが出来ました。
今は新しい作品を書くべく、或いは途中で止まっている作品を完結させるべく、執筆が出来るのが楽しみで仕方ない状態です。
ですが、おそらくそれらのは小説群はカクヨムに載せることはないと思います。
四月一日からカクヨムで「働く人小説コンテスト」が始まりますが、そこに載せる小説もおそらくは福井真世ではなく別名義になるかと。
私が長年温めてきたペンネームを使わずに福井真世として精神科閉鎖病棟任意入院日記を世に出した理由は当然ながらこの小説の特異性……そこがランキングに乗るほど受けた理由でもあると思うのですが……非常にデリケートな、プライバシーに関する問題を題材に扱っているからです。
人は誰でも触れられたくない恥部を持っているものだと思います。
探られたくない過去も。
私にとって精神科への入院歴はそこに当たるものでした。
そして、その暗部に光を当てることは非常に勇気がいる行為でもあったのです。
私が普段使っているペンネームは、私の家族だけではなく知り合い(それこそ、友人や知人レベル)にも知れ渡っているものなので、そのペンネームで精神科閉鎖病棟任意入院日記を世に出すのはその人たちにその恥部や過去をあからさまに晒すことであり、同時に匿名の悪意ある人にとっては私や、私の大事な人たちの『特定』をさせやすくする行為でもあります。
そんなリスクは書き始めた当初の段階では負えませんでした。
またプロフィールにも書きましたが、ノンフィクション・エッセイと言いながら、特定を防ぐために多少のフェイクは入っています。人物名はすべて仮名ですし、病院を特定されるような特徴を記載するのはなるべく避けました。
……はじめは、ここまで反響をいただけるとも、これほど自分がこの作品を愛せるとも思っていませんでした。
でも、書き進むうちに、私は知らず、涙をこぼしながら書いていました。
精神科閉鎖病棟任意入院日記は私にとって本当に大切な作品の一つになりました。
そうなったのはひとえに応援してくださった皆様が支えになってくれたからだと思います。
心より感謝いたします。
最後に。
この作品は加筆修正のうえ、公募にだしましたり、どこかへ持ち込んだりする可能性のある作品です。
ゆえに将来非公開になるかもしれません。
(なるべくそうならないよう努力はしますが)
ゆえに、無断転載・著作権を侵害する行為については一切お断りさせていただきます。
この作品を読んでくださった皆様のご多幸を、祈ります。
身内に精神病の方がいる方にとっては少しでも参考になりますように。
自分がそうであった方は、共感という名の癒しになりますように。
そして、そのどちらでもない幸運な方も少しだけ耳を傾けてほしいのですが
私も二十二歳で統合失調症になるまで、自分が精神科にかかるなんて、ましてや入院するなんて想像だにしていませんでした。
現実は想像を超えていきます。
残酷に。無残に。
(もちろん素晴らしい方向に裏切られることもあり、だからこそ人は生きていけるわけですが)
追記として第二十一話で記載した「人の歩みを止めるのは絶望ではなくあきらめ、人を進めるのは希望ではなく意志」という言葉が小学館漫画賞受賞をしたARMSという漫画からの抜粋であることを記しておきます。
この言葉は私に生きる力を何度も与えてくれた本当に大切な言葉です。
そして、この作品を今は亡きアンディに捧げます。(了)
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