第12話 入院十二日目「どこにいようが人間関係の悩みはある」

一泊二日の外泊を終え、病棟に戻ってきた。外泊すると、ここがいかに特殊な世界か思い知らされる。


母の言う通り馴染んではいけないな、と思う。

陽子さんが退院して、りえさんや優香ちゃん、美香さんたちとトランプをするときなかなかしっくりといかなくなった。

どちらかというと症状が重く、頭の回転が遅いりえさんのフォロー(どのカードを切ればいいかそれとなく誘導する役回り)を陽子さんは担っていて、陽子さんの穴は私が埋めないといけないのだろうが、私はそこまで器用ではなく、さりげなく気をまわしてあげることができない。

陽子さんがいる間にもっとコツを聞いておけばよかったのかな。もっとよく観察しておけばよかったのかな。


でも、と思い直す。

ここは病院。静養をするべき場所(かつ何かを深く長くじっくりゆっくり考えるべき場所)であって、人付き合いを学んだり、人間関係に悩むための場所ではない。

本末転倒である。

私はやっぱり何か思い違いをしていたんではないだろうか。

確かに現実は辛いけれど、いつかそれと向き合わなければならない日が来ることは知っていたはずだ。

私はここに逃げ込んできた。逃げ込んで、時間を稼いで、そして今、何をしている?

家族は、親友は、本当は私の任意入院をどう思っているのか知らないわけじゃないはずだ。任意だから、いろいろすぐに所持の許可が下りるのでロッカーやサイドテーブルに私物があふれていることにも気づく。私はもっともっとシンプルにも生きられるはずだ……。

今後の目標

自分らしく、楽しく生きる(自分らしさが何か。未だによくわからないけれども)

体力をつける。昼間眠くならないように。厳しめに鍛える。

シンプルに生きる。


今日のメモ

今週末また外泊がある。

明日、13時から15時まで院外外出がある。


今日の処方

昨日と同じ。

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