9.止まり木

 買い物をしたり村の人たちと話したりしているうちに、一日は終わってしまった。地形を把握するために村の外周を散歩していたディランは、元の民家の前に戻ってくるなり、空を見上げる。

 今日はよく晴れていて、まん丸の夕日によって雲が淡く染め上げられていた。空を映した海色の瞳の中に、赤いがともる。

 息を吐いて扉に手をかけたディランは、けれど、横から聞こえてきた足音に反応して手を止めた。訝しく思いながら、振り返る。野菜が山のように入った籠を抱えた少年と、ばっちり目があった。

 レビはディランを認めるやいなや、目を輝かせる。

「あっ、ディランさん! おかえりなさい!」

「ただいま。レビは何やってるんだ?」

「今日の夕飯に使う野菜をとってきてました! これからぼくも、手伝うんです」

 元気な言葉にディランはうなずく。「俺も何か手伝おうか?」という問いかけが喉元までせりあがっていたが、すんでのところで飲みこんだ。こういうとき、「お客」はそれらしく振舞っていた方がいいものだ。ちょうど、ドナの女主人からげんこつをもらったばかりでもある。

「じゃあ、そうだな。俺はゼフィーと今後の相談でもするか」

「はい! ご飯は任せてください!」

 思案するようにディランが呟くと、レビははきはきとそう言って、片手で扉を開けようとする。だが、その直前になって、突然ディランの方を見た。

 一瞬前までとは打って変わって、心細そうな表情が見て取れる。優しい光をたたえる瞳の奥に、かすかな迷いが漂っているように、少年には思えた。

「……レビ?」

 慎重に名を呼ぶと、彼は慌てたようにまばたきした。それから少し、うつむいて、再び顔を上げた。

「あの、ディランさん」

「うん?」

 明らかに何か言いたそうな子どもの呼びかけに対して、ディランはあくまでも穏やかに、続きをうながした。――しかし、結局、言葉の続きを聞くことはできなかった。

「……いえ。な、なんでもないです! 先に入ってますね!」

 無理に笑顔をつくったレビは、口早にそう言うと、体で扉を強引に開けて、家の中へと入っていった。

 再び遠ざかる足音を聞きながら、ディランはわずかに目を伏せた。


 それからディランは、家の二階でサーベルの手入れをしていたゼフィアーとともに、ルートの再確認などをした。そして、おそらく森林で黒装束たちは本気になって襲いかかってくるだろうという認識も共有した。ここからが正念場だと思うと、自然と気が引き締まる。

 話し合いをしているうちに夕飯もできあがったようで、やがて、階下からレビの声がするのを聞いた。二人は揃って一階に下り、何かと複雑な事情を抱える親子と、食卓を囲んだのである。

「そういえば」

 食事のさなか、レビが口を開く。その目はゼフィアーに向いていた。

「カルトノーアに行くって話ですけど、ゼフィアーさんは、いったい誰に荷物を届けるんですか?」

「む? どうしたのだ、急に」

「いえ……。カルトノーアっていうと、商人や富豪なんかがけっこう集まってるので、もしそういう人なら興味があると思いまして。無理して訊こうとは、思いませんけど」

 レビは言って、恥ずかしそうに笑った。彼も元は流れ者だ。こと大都市の事情には、普通の村人よりは詳しいと見えた。ゼフィアーも理解したようで、ふむ、と相槌を打つ。

 それから少し宙を見て考え込んでいた。

「……実は、届け先の人についてあまり詳しくは聞いていない。ただ、街の人に名を聞けば誰かしら知っている人はいるだろう、と」

「なんだ。じゃあ、有名人なのか」

 ディランは眉を上げて問うた。よく考えてみれば、届け先についての話をするのはこれが初めてかもしれない。レビは肯定して、続けた。

「うむ。彼は確か……ラッド、といえば通じる、と教えてくれた」

 ディランとレビは顔を見合わせ、少女が口にした人名を舌で転がす。そしてほとんど同時に、ある名前を閃いた。

 真っ先に反応したのはレビだ。彼は答えに行きあたるなり、目をむいて叫ぶ。

「そ、それってまさか、ラッド・ボールドウィンですか!?」

「むぅ? うん。そんな名前だった!」

 あっさりとした肯定。

 その瞬間、場の空気が凍りついた。ディランたちはおろか、ナタリアやロイまでもがぽかんとしてゼフィアーを見ている。

 当人は、妙な空気が漂っていることに気がつくと、きょろきょろした後にディランへ助けを求めてきた。

「ど、どうしたのだ? なんで、みんなこんなに驚いて……」

「おまえなぁ。あちこちふらふらしてるんじゃないのか。俺でもその名前は知ってるぞ」

「ええ!? いったい何者だ!」

 慌てふためく少女の質問に答えたのは、ロイだった。ついさっきの衝撃でパンの皿の上に落っことしてしまった、人参の煮物をそうっと木匙ですくってから、口を開く。

「ラッド・ボールドウィン。世界にその名をとどろかせる大商人さ。元は貧しい農村の生まれらしいがのし上がって、二十代の半ばには商会を立ちあげた。それが、今やあちこちに支部を置いてる大商会『希望の風』だ。嬢ちゃんも聞いたことあるだろう」

「あっ。た、確かに、『希望の風』の名には覚えがある……」

 そこでようやくゼフィアーは腑に落ちたような顔をした。そして心なしか緊張しているようにも見える。ディランもまた、落ち着かない気分でパンをつまんでいた。

「どんどん嫌な感じになっていくだけじゃないか」

 中の分からない、謎の集団に狙われている小包というだけでもきな臭いのに、さらにそれは大商人ラッド・ボールドウィンが求めるものだという。可能ならばそんな依頼には一生関わりたくなかった、と、少年はこっそり嘆いた。

 しかも、問題はそれだけにとどまらない。

「あんたに届け物を頼んだ人ってのは、ラッドとどういうつながりなんだ?」

 ゼフィアーに訊いたのはナタリアだ。なんだか苦い顔をしている。

「む。個人的なつながりがある、と言っていた。あいつも商売をしてはいるが、商会を持っているわけでなく、豪商というほど儲かってもいない」

「そりゃ参ったね」

 女性の苦々しい表情が色濃くなった。ロイやレビもいつの間にかしかめっ面になっている。再び、食事の席に重い空気が満ちた。

「多分あんたたち、カルトノーアに着いてから相当足止めを食らうよ」

 ナタリアの言葉に、ディランは無言でうなずいた。ゼフィアーも、さすがに焦りをにじませる。

「そ、そうか。それだけの大商人なら、日々商談やら面会やら、組織運営やらで忙しいはず……」

「うん。商会同士のつながりならともかく、個人だとねえ。取り次いでもらうのに時間がかかる。しかもあんた自身は『希望の風』と懇意にしてるわけじゃなさそうだ」

「残念ながら……」

 ナタリアの指摘を素直に認めて、ゼフィアーはうなだれた。そうしてしばらく黙りこくったあと――涙目で、ディランにすがってくる。

「どうしよう! どうすればいい、ディラン!」

「俺に訊かれても! というか、先にそのこと聞いとけばよかったって、俺もちょっと後悔してる!」

 ディランも泣きそうな気分でいた。

 ただの配達なら、手続きに時間がかかろうと待てばいい。そう割り切れる。けれど、今回二人が運んでいる荷物は、普通ではないのだ。取り次ぎがなんだ、手続きがなんだ、と言っているうちに、黒装束たちがカルトノーアに入りこんでしまっては大問題である。

 もし街中で襲撃にあえば、ラッドの耳に話が届く前に、彼の部下に怪しい者たちとして突き放される可能性も皆無ではないのだ。

 予想もしなかった展開の中、無関係なはずのロイたちまで慌てはじめている。だがその中でただひとり、レビだけは冷静に何かを思案していた。

 そして、混乱する人々へ向け、ひとつの希望を示したのである。


「『リグレット』の、ぼくの名前を使えば、もしかしたら……」


 少年の声が場の空気を打つ。食卓は一瞬にして、静寂を取り戻した。まっさきに訊いたのは、ディランである。

「どういうことだ、レビ」

「父が、旅の中で生計を立てるために商売をしていたんです。『希望の風』ともかなり関わっていたようでした。商談だけでなく、商会に属する人たちの護衛を買って出たりもしていました。だから……ラッド・ボールドウィンと面識があったんです。父も、ぼくも」

 最後の一言で、レビの育ての親たちが目をむいた。初めて聞いた、というロイの声が聞こえる。

 降ってわいた希望に、ディランとゼフィアーは顔を見合わせる。その間にも少年は、ぽつり、ぽつりと言葉をつむいだ。

「彼と会ったとき、ぼくは今より小さかったんですが。それでも『リグレットの親子』のことは、皆さん記憶にあるはずです。優遇される保証はないけど、誰の紹介も伝手もないまま行くよりは、きっと、ずっとましなはず」

 その場の全員、しばらく黙って彼の意見を聞いていた。だが、レビの声が途切れたその瞬間、ロイとナタリアは息をのむ。

「おい待て、さらっと言ったがつまりそれは」

「レビ、あんた……」

 二人がそれ以上何かを言う前に――レビは、ディランとゼフィアーを見つめてきた。続くであろう言葉に気づき、ディランは顔をこわばらせる。

 レビは深々と頭を下げ、彼が予想したとおりの願いを口にした。

「ディランさん、ゼフィアーさん。ぼくを、連れていってください! お願いします!」


 何度目の沈黙だろうか。

 しばらく、誰も、何も言わなかった。豪胆なゼフィアーすらも、目をむいたまま固まっている。

 ディランは彼らの中でいち早く、冷静さを取り戻した。張りつめてしまった空気を打ち破るべく、あえて笑いを含んだ声を出す。

「連れていってください、か」

 けれどあながち、装いだけの笑いでもなかった。

「そっちが本音だな、レビ」

 言い当ててやると、レビはぱっと赤くなった。何かを堪えるように唇を引き結んでいる。

 だがやがて、固く閉ざしていた口元をほんの少し緩めた。

「さっきの、商会の話も本当です。ぼくとしては、命を救ってくれたお二人に恩を返したい思いもあります」

 そこまで言ってから――彼は思い切ったように、全員を見回した。大きな瞳が鋭く光る。

「でも、ディランさんの言ったことも本当です。

ぼくは、引きとられたときから今までずっと……心のどこかで昔の生活を恋しく思ってた」

 ゼフィアーが食い入るように聞いている。ディランの対応はそれと比べれば冷めていた。瞑目して、じっと声に耳をかたむけた。

「それでも、苦々しく思いながらもどこの馬の骨とも知れない旅人の子どもを引きとってくれた村の人に、感謝していました。だから気持ちをずっと隠して、なんとか馴染んでいこうと思ったんです」

――しかし努力は、少年が期待していたほどに報われなかった。

 レビは年齢に似合わない聡明さを持っている。だからこそ、村人がどこかで自分を部外者扱いしていることには、かなり前から気付いていたのではないか。ディランはずっとそう思っていた。

「でも……それでも……」

 声が震えている。見ればレビはうつむき加減になって、一生懸命、口を動かしていた。

 育ててくれた人の前で口にする本音は、きっと、とても重くて苦しいものだ。それでも彼は――言った。

「お二人に会って、気がついてしまった。やっぱりぼくは、旅から旅への生活を求め続けているんだって。ここにいる生活を、大事なものだと思いながらも、きゅうくつで耐えられないって感じていたんだって。ぼくはそれが、とっても、悔しいんです」

 恩をあだで返すように思えたこと、それが悔しくて、嫌でたまらないと、細められた目が語っている。レビは、息を吸って、今までより少し大きな声を上げた。

「だから……きゅうくつさに耐えられなくなって、大事なものを見失う前に、一度ここから出たいんです。旅を恋しく思う気持ちを埋めると同時に、ぼく自身を見つめ直したい。だからどうか、お願いします」

 そう言って彼はまた頭を下げた。ディランとゼフィアーに対して。そして、育ての親であるロイとナタリアに対して。

 両親はすぐに答えを出さなかった。ただ、少ししかめた顔をディランたちに向けてきた。こちらの意見をうかがってきていることをすぐに悟って、二人は困惑気味の顔をお互いに見やる。

「うー……レビがほんとの気持ちを言ってくれたのは嬉しいし、ご主人たちがよいと言うのであれば、レビの意思を尊重したい、とは、思うが」

 ゼフィアーは、消え入りそうな声で言った。煮え切らない態度になるのも無理はない。二人とて、重い事情を抱えて旅をしているのだ。

 左右に泳ぐ琥珀色の瞳に目をやったディランは、まっすぐ親子の方を向いた。――ここは、本当のことを話した方がいい。そのうえでレビの意思と、覚悟を問わなければならない。

「今までは、村の人たちを不安にさせてはいけないと黙っていましたが」

 そんな切り出し方で、ディランはだいたいの事情を語った。ゼフィアーの小包のことと、黒装束の集団が襲ってくること。そして、自分はゼフィアーの護衛として雇われているのだということも。

 三人とももちろん驚いていた。深刻な表情で息をのんで聞いていた。ディランは形式的な説明を終えると、レビひとりに視線を注ぐ。そのつもりがなくとも、青瞳せいどうは刃のように冷たい光を帯びた。

「レビ。俺が何を言いたいかわかるな? 今の俺たちについてくるということは、危ない連中に、一緒になって追われるということだ。命の危険がある。相手の実態は何ひとつ見えないしな。だから俺は正直、おまえまで守ってやれる自信がない」

「そ、そこはなんとかします! ぼくも戦い方は教わりましたから」

「……武器が使えるというだけで、どうにかできる連中じゃないんだよ」

 静かに言って、ディランは横目でゼフィアーを見た。彼女も、深くうなずいている。

「武力でどうにかできるなら、そもそも私は、ディランを巻き込まなかった」

 少女の言葉は、もとの固い口調もあいまって厳かに響いた。さすがに、レビもそこまで言われると尻ごみしたらしく、眉をひそめる。

 けれど驚いたことに、彼はすぐ、強い口調で切り返したのだ。

「それでもいいです。どの道、ラッド・ボールドウィンに会うには、その人たちをどうにかして目的地に辿り着かなきゃいけないんですから」

 ディラン以外の三人が目をみはった。ディランはあえて表情を厳しくして、もう一度、問いなおした。

「本当にいいのか」

「――はい。覚悟を決めます」

 少年の答えは明快だった。揺るぎのない目を見て、ディランは悟る。

 これは、どうあっても折れない、と。

 彼は長く息を吐いて、ゼフィアーへ顔を向けると、苦笑した。その意味をくみとったゼフィアーも真面目くさって「しかたないなあ」と言った。ただそう言う彼女の頬は緩みっぱなしである。

 本音がだだ漏れだ、と呆れつつ、ディランは腕を組む。残された問題はロイとナタリアがなんと言うか、であった。レビもそこを理解しているのか不安そうな表情だ。

 しかし二人の予想に反して、親たちは苦々しさを抱えながらも微笑んでいた。

「――なんとなく、そんな気はしてたんだよなあ」

 やれやれ参った、とばかりに言ったのはロイだ。

「こいつはいつか、村の外へ出たがるだろうとは思ってたさ。田舎に腰を落ち着けてこそこそ暮らすような、それで満足するような性根じゃないってな。元が旅人の子どもだし」

 家の主人の言葉は、愚痴にも似ている。そこへ、ナタリアが便乗した。彼女は渋面のままだが、こう言ったのだ。

「そもそも私たちに、あんたを止める資格はないよ。いつも心のうちであんたを突きはなしていたのは、私らの方だ」

 レビは何も返さない。よほど意外だったのか、唖然としたままだった。

 ナタリアはそれを予想していたのか、静かに口の端をつり上げる。

「この村は、あんたにとって止まり木だったんだろうねえ。少しの間、羽を休めるための。そして今、羽やすめを終えて、また飛びたとうとしてるんだ」

 私らに止める資格はない、と繰り返す。

 二人は息子を、わずかな間でも息子だった少年を見据えた。

「行ってくるといい、レビ。おまえは自由に生きればいいさ」

「もし、もしも、旅に疲れたら、止まり木ここへ休みに戻ってくるといい。本当の家族になれないかもしれないけど、歓迎はするよ」

 冷たさと温かさをあわせもった言葉を受け、レビは深く頭を下げた。


 空はまだ暗く、空気はひんやりとして湿っていた。息を吸い、布袋を担ぎ直したディランは背後を見る。

 得意気な顔で、いつものようにそこにいるゼフィアー。そして、決意に満ちた表情でうなずくレビと、目があった。ディランは年下の少年少女の視線を受けとめ、にっと笑う。

「そんじゃ、出るぞ。日がのぼる頃には森に入るからな」

「はい!」

「了解だ」

 力強くこたえる声と、冷静に受け止める声が重なる。

 そうして村を発つ前に、三人は一度足を止めて振り返った。村の出口には、ロイとナタリアがいる。彼らは旅立つ者たちの視線を受けると、困ったようにしつつ、彼らの背中を押した。

「俺らが言えたことじゃないかもしれんが、レビのこと、頼むよ」

「はい」

「無論だ」

 ディランとゼフィアーは迷うことなく肯定する。レビはどうしていいかわからない、というように視線をさまよわせていた。

 そのとき、静かな村に子どもの声が響いた。

「おいレビ!」

 ディランたちが村に入ったとき聞いたのと同じ声。けれど、まとう空気はあのときよりもやわらかく、優しいものだ。レビは自分の名を呼んだ人たちが遠くから駆けてくるのを見つけて、目をみはる。

「ジェイク! リオも!」

 散々レビをからかっていた二人の子は、今日も大げさに彼を指さして怒鳴る。

「おまえ、ずるいぞー! 勝手に出ていくなんて!」

「村の外に出たいのは、レビだけじゃないってのにね」

 厭味を込めた二人の言葉はけれど、かすかに震えている。ジェイクはよく見ると切なげに目を細めているし、リオも悔しそうにしてレビから目を逸らしていた。少年たちの態度にレビは戸惑い、その一方で、ゼフィアーは笑った。

「なるほど。からかいや悪戯は、興味の裏返し――か」

 少女の小さな声は、すぐそばにいたディランにしか聞こえなかったが、彼にはゼフィアーの言いたいことがなんとなくわかっていた。

 彼らには意地悪な心もあっただろうし、嘘をついたり困らせたりするのは褒められたことではない。けれどあの子どもたちなりに、レビと距離を縮めようとはしていたのだ。――きっと。

 レビは呆然として二人の罵声を聞いていたが、その態度を見て何か思うところがあったのか、我に返るとにっこり笑った。

「ごめん、行ってくるよ! あ、そうだ、旅先でジレ草を見つけたらとってくるね!」

「――! ば、ばっかやろう! そんなのもうどうでもいいっての!」

「は、早く出ていっちまえ!」

 ジェイクたちは慌てふためき、出ていけ、出ていけと繰り返す。レビはそれに対し、わざと嫌らしく笑って「わかったよ」と返していた。ささやかな仕返しは成功したようだ。


「それじゃあ――行ってきます」


 旅の男とともに村へやってきて、しばらくの時を過ごした少年。彼は明るい声を残して村を去る。

 家族にはなれなかったかもしれない。村に馴染むことはできなかったかもしれない。それでも彼にとって、リフィエ村は、間違いなく第二の故郷なのだろう。

 ふっきれたような横顔を見て、ディランはなんとなく、そう感じていた。

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