受話器を取る

ガチャ




『………………………おい、これでいいのか?

あーあー、こちらは宙間探索業務を行っている者だ。

暗礁地帯の調査中に宇宙を漂っている漂流者を発見、救助したが、その漂流者がどういても発信して欲しいと言うため、この方角へ電波を発信している。

なんでも、


「死ぬと思った瞬間、光り輝く女神様に助けられた。その女神からこの方角帯へお礼を送って欲しいと言われた」


との事だ。




どうせ酸素が少なくなった時に見た幻覚だと思うが、漂流者の作業していた衛星からの距離と時間を考えると、ここにたどり着く前にとっくに死んでるはずでな。

どうやら、背負っていた酸素供給用のボンベから酸素が少しずつ漏れ、その勢いで宇宙を漂う速度が加速され、窒息すれすれでここまで辿り着けたらしい。



俺達が居る方向へ飛んできたのも奇跡だが、ギリギリ死なない程度に酸素が漏れていた事、その漏れた酸素が加速に適した角度で漏れていた事、この二つも相当な奇跡だ。



宙で働く者はみんな信心深くてな。

雲の上に天国は無いと知ってるくせに、毎日決まった時間に地球に向けて祈る奴は居るし、自室に小さな神社を作る奴も居る。

そういう奴らへのアピールのためにも、こうして奇跡を起こして下さった女神様へお礼の電波を飛ばしているわけだ。



通信用の電気もタダじゃあ無いんだが、これで従業員達のモチベーションが上がるのなら安いもんだ。



俺は一応リーダーなんで非科学的な事は信じていないが、責任者として彼に替わって礼を言わせて貰おう。

ついでに俺の借金を帳消しにしてくれたら女神様を信じるんだが、そいつは無理なお願いか?



まあいい、とりあえず伝えてくれと言われたから伝えるぞ。


ありがとうな。』




ツー ツー ツー

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