11 泣き虫、弱虫

 お昼休みの時間になると、小笠原さんはやっぱりセシリーたちのところに行ってしまった。


 私はいつもよりもひどく寂しい気持ちになって、いつもよりも深い孤独を感じた。

毎日一人でお昼ご飯を食べているはずなのに、今日はひとりぼっちであることがひどく悲しく、そして情けなく感じられた。私の身勝手な思いだっていうのは分かってはいるんだけど。


 きっとそれは、さっきまで隣にあったはずの素敵な熱が消えてしまったから――私の隣に、ぽっかりと大きなクレーターが開いてしまったみたいだった。それも、とても深い穴が。


 私はそんな寂しさと孤独を背負いながらも、とりあえず何でもないという雰囲気だけは漂わせて、お昼ご飯を食べ行こうと立ち上がろうとした。


 すると、小笠原さんが席に戻ってきた。

 私は「何か忘れ物でもしたのかな?」って思ったけれど、彼女は私を見てにっこりと笑った。


「ねぇ、みんなで一緒にお昼ご飯を食べましょうよ? 私、これからセシリーたちとテラスに行くんだけど――あなたも一緒に」

「――えっ、私?」

 

 私は、小笠原さんのその誘いに戸惑った。

 案の定というか、当然のように、セシリーたちはまるで歓迎していない雰囲気で私を見ている。じろりと貫くような視線が隕石みたいに私に降り注ぐ。そして、ひそひそと小声で話し合いをはじめて、不穏な空気さえ流れていた。


「わっ、私は、いいよ」

「どうして?」

「私、お昼はいつも一人で食べてるし、それにセシリーたちだって私とじゃ話も合わないだろうしさ」

 

 私は適当な言い訳を並べたが、なんだか悲しくて泣きそうだった。


「アスカ、“泣き虫ポーラ”なんか誘ったって仕方ないよ」

「そうそう、“弱虫ポーラ”はいつも一人でお昼を食べるのが大好きなんだから」

 

 セシリーの取り巻きのソシエとキエルが、くすくすと笑いながら言う。

 セシリーだけはつまらなそうに髪の毛を弄っているだけで、私のことなんかまるで興味ないって感じだった。


「ほら、私なんてぜんぜん歓迎されてないからさ――小笠原さんは、みんなとお昼を食べてきなよ」

 

 私が言うと、小笠原さんは真剣な表情で私を見た。

 その後、なにかを思案するように綺麗な顎の先に指を置いて――そして、急に私の手を取ってセシリーたちに向って振り返る。


「私、今日は彼女とお昼を食べるわ」

 

 まるで高らかに宣言するかのように告げられたその言葉に、私は驚きを隠せなかった。


「ええっ?」

「ほら、早くを準備して。行くわよ」

 

 小笠原さんは、私の手を取って歩き出す。

 私はものすごく戸惑っていたけれど、彼女の手を通して伝わってくる温かな熱を感じて――ものすごく興奮して、そして高揚していた。

 

 二人で教室を出る頃には、私はもう寂しさや孤独といったものを感じてはいなかった。

 

 ぽっかりと空いてしまった深い穴は、大きなクレーターは――

 いつの間にか埋まっていた。

 

 

 私の胸を焦がす、素敵ななにかで。

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