第六十三話「それが答えだから」
Side 冴葉 幸一
「なぜだ。なぜ志郎君は――立ち上がれたんだ――」
日本政府やグランドレイダーを一緒くたに敵に回した志郎君の姿が信じられなかった。
あれだけの闇、あれだけの絶望を見せつけられた。
にも関わらず、彼は決断した。
前に進んで見せた。
これが世界を救ったヒーローだと言うのか?
「何か勘違いしているみたいだけど、たぶんアレやせ我慢か何かだと思うわよ」
「や、やせ我慢?」
傍にいるセイントフェアリーが語りかけてきた。
何故だか少し恥ずかしそうだ。
「あなたは恋愛して好きな人と結婚して、子供作ったりしたんでしょ? だったら分かるでしょ? 自分の心の中ではそれらしい理屈を並べてるつもりだと思うけど、ただ私の前や皆の前でカッコイイ姿を見せたいだけなのよ、今のアイツ」
それを聞いて私は理解した。
自分もそんな時はあった。
久しく忘れていた。
同時に湧き出てくるのは涙と後悔だった。
「はは、ははははは――成る程な。私にもそう言う時はあった。なんで忘れていたんだろうな・・・・・・ごめんな――静与、幸与、美与、父ちゃんそっちに行けそうにも――」
「腐るのは勝手だけどね!! 間違いを認めたらどうするべきかは分かるでしょ!? 子供でも分かる事よ!! まずはこの事態を収拾する方法を考えなさい!!」
この子はとてもシッカリしているようだ。
そして容赦がない。
同時に志郎君は苦労しそうだと苦笑した。
「・・・・・・志郎君には不可能だと言ったが、実は全ての暴走状態のロボットを行動停止させるだけなら方法はある」
「なんですって?」
☆
Side 嵐山 蘭子
『自衛隊とかって凄いよな。お前達のような奴でもいざって時は助けるんだから』
自衛隊はくだらない不祥事は多いし、トイレットペーパーすら自費で調達しなければならない組織で特殊部隊の団長が一時期ブラック企業の社長みたいな奴だったりもしたが、くさらず真面目に頑張って勤めを果たしている自衛官も沢山いる。
ヒーロー部や悪の組織部、演劇部など――パワードスーツを身に纏った生徒達が逃げ遅れた市民達を、そしてあの口うるさく喚いていた市民団体までもを守るために戦っていた。
かく言う蘭子も、演劇部の顧問である能登 ミホリと一緒に戦っていた。
能登 ミホリは長いフワフワとしたピンク髪で瞳は垂れ目ガチで顔立ちもゆるふわ系の温和な女性だ。体付きも大人の女性と言った感じで性格も相俟って接しやすい美女である。
着ているスーツは露出度はなしで動きやすさを重視した白いSFドレスと言ったところか。手には剣を持っている。
部長の宝塚系女子ぽい、倉﨑 稜に似た雰囲気の金髪ショートヘアーでクールな雰囲気の美女、園原 ミサトは純白のSFドレス―煌びやかでお伽噺に出てきそうな騎士然とした専用のパワードスーツを身に纏い、手に持った剣で次々と薙ぎ払うと演劇部の女子達から歓声が上がっている。
(まあそれはいいんだが・・・・・・)
まるで借りて来た猫のように大人しくなっている市民団体に目をやる。
『色々と言いたい事はあるがそこで大人しくしてな――』
教師とて人間。
理由はどうあれ、理不尽な理由で教え子を犯罪者扱いされてむかつかない教師はいない。
そうじゃない教師は教師として欠陥を抱えている。
蘭子も事態を収束させるために戦いにまい戻る。
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