第五十七話「人が掴みとったキセキ」
Side 天野 猛
(この力があればいける!!)
無数に存在したブレンを次々と必殺技を乱発して倒していく。
春歌やこの場にいる他の皆――舞や志郎、稜や恵理も同じだった。
「猛さん!!」
「春歌ちゃん!!」
そして二人は互いの腕を頭上で交差させ、合体技であるWレヴァイザーバスターで次々と駆逐していく。
ベルゼルオス(天村 志郎)やセイントフェアリー(揚羽 舞)、アウティエル(宮園 恵理)、クリムゾンフェザー(倉崎 稜)も出し惜しみ無く次々とブレンを片付けて行く。
(これで粗方片付いたかな・・・・・・そう言えば闇乃君は?)
ふと天野 猛は闇乃 影司の姿が見えない事に気がつきその姿を探す。
Side 闇乃 影司
たりない。
力は増大している筈なのにまだ足りない。
欲しい。
目の前の強大な敵を倒すのに必要な力が――
『うぉおおおおおおおお!!』
『ちぃ!? 調子に乗るなぁああああああああああああ!!』
ギャラクスと闇乃 影司は先程までとは違い、激しい攻防を繰り広げていた。
だが戦いその物はギャラクスが有利。
ギャラクスが殴り飛ばして吹き飛んだ先に瞬時に移動して殴り飛ばした後、エネルギー弾を雨のように降らして本気で殺しに掛かっているがそれでも闇乃 影司はまるでダメージなど入っていないかのように食らいつき、殴りかかる。
時折ブレンの分身体が邪魔をするが力任せに影司は払い除けてギャラクスに向かう。
正直無茶苦茶な戦いだった。
だがこの場の誰かがギャラクスを押さえないといけない程に、想像以上にギャラクスは強かった。
『お前だけに構っている時間はない。一気に決着を付けるぞ!!』
サッカーボールサイズの様々な色の球体がギャラクスの前で縦に円を描くように亜激しく回転を始める。
そして最後は一つの球体に収束し――
「どりゃああああああ!!」
「はああああああああ!!」
レヴァイザーと桜レヴァイザー、猛と春歌のペアがレヴァイザーキックを放つ。
通常時とは違い、今起きている異常現象で破壊力は格段に上がっているにも関わらず「邪魔だ!!」と片手で払い除けられた。
天村 志郎や揚羽 舞。
宮園 恵理も同じく弾かれる。
唯一違うのは―ー
『神殺し!?』
力が拮抗したのは倉崎 稜だけだった。
赤い光の剣でギャラクスに斬りかかり、ギャラクスは片手で押さえ込みながら、収束された光線を稜に放つ。
人を何百人も一気に包み込めそうな極太の閃光は動力炉の壁を貫いて――この調子だと円盤の外側にも貫通して大ダメージを受けているかもしれない。それ程の破壊力だった。
『影司さん。アナタは一人じゃないんです。無茶しないでください』
『あ、ああ・・・・・・悪かった』
隣に立った稜にそう言われて影司は落ち着く。
そして怒りに任せて戦っていた先程の自分を恥じた。
『もう誰も失いたくないんですね?』
『うん』
正直に影司は自分の気持ちに答える。
『僕もアナタを失いたくない。恵理さんも志郎さんも、舞さんも、猛君、春歌さんも――そのために力を貸してくれますか?』
『・・・・・・分かった』
なぜだか、影司はとても落ち着いていた。
先程まで体を突き動かしていた破壊衝動のような物が嘘のように収まっていく。
『このままではらちがあかんか・・・・・・』
そうしてギャラクスは――動力炉と思わしき方向へと飛んでいった。
そして動力炉の中へと、まるで液体の中に入り込むように沈んでいく。
『元々ブレンとは我の手駒にすぎん。同時に万が一の保険でもあった。この動力炉こそがブレンであり、この円盤こそがブレンの体である。そして――このギャラクスの切り札でもある』
影司は知らないがJOKER影浦はヒーロー部の面々には「動力炉と戦闘になる」と言う言葉を告げていた。
もしかするとブレンの本体である動力炉と戦うと言う未来もあったのかもしれない。
だが今は――ギャラクスは動力炉、すなわちブレンの本体と融合した。
サイズは人間サイズ。
ブレンとギャラクスが融合してそれぞれの意匠が混じり合った姿。
自分達がチート的な力を使ってもなお強かったギャラクスが更に別人とも思える程のパワーアップをした。
天村 志郎も「これはまいりましたね・・・・・・」とぼやいている。
『この手を使いたくは無かったが・・・・・・最悪、貴様達を抹消してでも未来を変える事にしよう』
そう言ってこの場にいた面々全員を超スピードでぶっ飛ばしていく。
闇乃 影司も倉崎 稜も同じだった。
☆
Side 天野 猛
せっかく逆転したのに。
逆転仕返された。
体中が痛い。
敵が圧倒的に強すぎる。
今は影司と稜が持ち堪えているがどれまで持つか――
『私の生徒に手を出すなぁああああああああああああ!!』
そこへ嵐山 蘭子先生、グレース・ナディア、森口 沙耶、姫路 凜も来た。
激しい戦いが拮抗し、その余波で動力炉が彼方此方破壊されていく。
しかしこの状況も時間の問題のように思えた。
(どうすればいい? どうすれば――)
禁断の銀色のレヴァイザーになったところで倒せるとは思えない。
――まだ君は人の力も創星石の力を半分も引き出せていない。
「ッ!? 誰!?」
優しい男の声がした。
――私はマスタージャスティス。今の状態でも力を引き出すキッカケを与えることは出来る。
そうして――猛の体に変化が訪れた。
爆発的なパワーアップ。
先程まで自分に流れていた力の奔流も凄まじかったが――その勢いが更に強まった。
本当に「ただキッカケを与えた」だけなのだろう。
先程のパワーアップも凄かったがこのパワーアップも段違いだ。
今ならパワーアップしたギャラクスを倒せる。
そんな希望を持てた。
――それに君達だけが戦っているのではない。
「え?」
様々な風景が映し出される。
日本の各地で抗う人々。
宇宙で戦っている人々。
そして天照学園で戦う人々。
それ達が映し出される。
そこにはクラスメイトの姿や知り合いの姿もあった。
「猛さん、これは!?」
「うん――皆頑張ってるんだよ」
春歌も同じ光景を見ているのか尋ねてくる。
「私も何だかいけそうな気がします!!」
そして春歌は変化した。
初めてブレンジャーと戦った時と同じ姿。
カラーリングが白基調になり、ヘルメットには角飾り。
ア戦国武将が身に付ける陣羽織を連想させる意匠。
背中に桃色の蝶の羽を連想させる桃色の光の羽が追加される。
桜色の粒子の刀がブレスレットから抜剣される。
猛も合わせて剣を取り出す。
「いきましょう!!」
「分かった!!」
そして猛と春歌はギャラクスに向かって飛んでいき――斬りかかる。
ギャラクスは突然の横槍に驚きながらも二人の斬撃を受け止める。
『バカな!? なんだこの想定外の強さは!?』
そのまま二人は勢いよく攻めたてる。
周囲の被害などお構いなしにただ早く、力強く破壊の嵐を巻き起こす。
先程まで戦っていた人間達は一旦退く。
状況は――どんどん二人が押していく。
そして――
☆
ギャラクスは円盤の外へと叩き出された。
その後を追うようにヒーロー達が――猛と春歌が戦闘に追ってくる。
「フェアリングスマッシュ!!」
『クソ!?』
舞の必殺技、フェアリングスマッシュを両手で防ぐ。
続いて複数のヒーロー達の光線技がギャラクスを襲う。
その閃光はギャラクスを包み込み、更に上へ上へと押し上げられた。
『うおおおおおおおおおおおおお!!』
そこに森口 沙耶の手で上空に運搬された嵐山 蘭子が斬りかかる。
「ターゲットロック。排除するわ」
続いて森口 沙耶の緑色の閃光が放たれる。
「このチャンス、逃せないね!!」
そこへグレースがもう一撃。
極大の光の剣がギャラクスを切り裂く。
だがギャラクスは――
『もう遊びは終わりだ!! この星もろとも消し去ってくれる!!』
激高し、上空に素早く上がっていき――そして巨大なエネルギーボールを作り出した。
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