第二十四話「ブラックスカルと言うチーム


 巳堂 白夜は少年院で真面目に過ごしながらブラックスカルについて思う。


 世間ではデザイアメダルと言う危険物を政府にケンカを売って大立ち回りしたやばいカラーギャングと言うのが認識だ。


 だが正直最後辺りはリーダーのムクロ、いや・・・・・・ムクロと言う人間を乗っ取っていたドクロの黒いメダルによる独裁政権であまりの強行で離れて行くメンバーが多かった。


 正直少年院に送りになった連中も最初は不安だったが今ではホッとしていると言う人間も多い。


 最後まで付いていったのはブラックスカルの恐怖に負けた人間か、洗脳された哀れな人間か、余程のイカレ野郎かのどちらかだ。


 そうしてブラックスカルは自衛隊基地を襲撃して大量殺人を行い、しまいには理想国家の建国と言う目標の為に学園の支配、そして国家転覆劇を目論んだ。


 その野望は巳堂 白夜やアーカディアの面々により阻止された。


 ブラックスカルの深い位置にいた白夜ですらも、何故学園島に固執したのか分からなかったがその御陰で勝てた。


 もしかして自分でも知らないような大きな秘密が学園にまだ沢山あってそれが関係しているかも知れないがそれも今となってはどうでもよかった。

 

 重要なのはこれからの先の事だ。


 どうにか社会貢献して少しでもイメージアップしてブラックスカルの連中の面倒を見たい――なにしろ身内が犯罪を起こせばその身内も犯罪者扱いになるのがこの国の暗黙の了解だ。


 今どんな生活しているのか想像するに難くない。


 そうまでするのはブラックスカルに恩があるからだ。


 白夜は知っている。


 最初の頃の。


 ムクロがまだメダルに乗っ取られていない頃のブラックスカルの事を。



 ブラックスカルは元々天照学園や、その周辺地域に住んでいた学生などのはみ出し者連中が結成したメンバーだ。


 理由は様々だ。


 学園のカリキュラムに付いていけなくなった者。


 ある事がキッカケでそう言う生活をせざるおえない程、人生の歯車が捻れた者。


 他にも幼い頃に学園へ捨てられてそのまま荒んだ生活を送ってギャングの道に進んだ者と言うのもある。


 学園島はその巨大さに比例して学生寮などの学生向けの施設も充実している。


 それを利用し、金だけ払って何処かへ逃げていく人間は数多くいて学園側もそのまま見捨てるのも体裁が悪いのでそのまま面倒を見ると言う悪循環が生じている。


 学園都市の闇の部分と言う奴だろう。


 そして味巳堂 白夜もブラックスカルに入る土壌は出来ていた。


 白夜は理事会の役員を父親に持つ。


 国家に例えるならば政治家の息子みたいなポジションだ。


 しかし母は離婚し、家庭内は冷たい状態だった。


 そして周りも冷たかった。

 ただ理事会の役員の息子と言うだけで。


 だから力尽くで、そして理事会の権力者すら使って自分の居場所を作ったがそれでも虚しく感じた。


 そうして荒れた生活を歩んで行くウチに、ブラックスカルに自分の居所を見つけた。   


 正式なメンバーでは無いが、何故か親しくブラックスカルの元を出入りしていた。


 キッカケはムクロとタイマン張ってケンカしたのがキッカケだ。


 そっから色々とあって意気投合するようになり、今に至った。


 デザイアメダルとかそう言うのとは関わらず、馬鹿やって楽しく過ごしていた。


 その頃のムクロはカラーギャングにも関わらず、かなり頭がキレていたし腕っ節も強かった。それに女にモテていた。


 何度か会話もした事がある。



 夜のブラックスカルのアジト。


 廃棄された海沿い近くの倉庫を不法占拠していた。


 海を眺めながらお互い顔を見合わせず、対岸で光り輝く学園島を眺める。


「・・・・・・呼び出してなんだ?」


 と、ムクロは当然の事を尋ねる。


「前々から気になってたんですよ。俺の事――知ってて入れたんですか?」


「・・・・・・チームに言われるまで知らなかった。それで信じるかどうかはお前の自由だ」


「そうですか・・・・・・」


 それだけで不思議と信じる事は出来た。


 白夜にとってムクロとはそう言う男だった。


「それだけか?」


「いや、どうしてブラックスカルを作ったのかなと気になった次第でして」


「ああその事か・・・・・・」


 そう言って視線を夜空に眺めた。

 都会の明るさで星が全く見えない夜空。月と雲だけしか見えない。


「俺の親は政治家だった」


「だった?」


 正直耳を疑った。

 このムクロが政治家の息子?

 控えめに言って今のイメージとは全然想像も付かない。 


「だが屑の部類の政治家だ。それで色々と恨みを買っていたらしくてな。俺は昔恨みを買って刺された事がある」


「・・・・・・」

 

 白夜は共通する過去を持っていた事を初めて知った。

 だけどなんて言えば良いのか分からなかった。

 ただ苦悶の表情を浮かべた。


「そして色々と親父の事を知っていく内に吐き気がして家を飛び出した。そっから俺は色々と考えたんだ。日本は民主主義国家で俺より頭の良い奴は沢山いるのにどうしてあんな奴が政治家になんかなるのか・・・・・・どうして正しく生きている奴よりもあんな奴が偉いのかとか・・・・・・なら好き勝手に生きるしかないだろってな」


「それでブラックスカルを?」


「俺は――意外と根は善人だったかも知れない。俺達みたいな奴の楽園、居場所が欲しかったんだ」


 白夜は違うと思った。

 少なくともワケも分からず念仏のように「正しく真面目に生きなさい」と言う大人よりかはちゃんと考えてると思っていた。

 

「・・・・・・ところで聞きますけど、ブラックスカルってどう言うなんですか?」


「昔ヒーロー漫画に憧れてな。ライダーの元祖に当たるヒーローにドクロをモチーフにしたヒーローがいるんだ。そんでだ。ブラックスカルを今はただのカラーギャングだが、何時かは俺達みたいなアウトローの受け皿みたいな組織にしたい」

 

 嘘はないのだろう。

 世の中には自分達のようには真面目に生きられない人間は多数いる。

 それでも社会と向き合って生きて行かなければならないのが世の中の辛いところだ。


 カラーギャングと言う枠組みにしたのも好き好んでではないのだろう。


「それで俺はどうすれば良いんですか? 親の権力使います?」


「いや、これは自分達の力で成し遂げないとダメじゃねえか。そうしないと夢がない。とにかく何だって良い。ここに居る間に熱中出来る何かを、夢を見つけて、それで真っ当な道を進んで生きて欲しい。それが創設の理由だ」


 それがムクロの本心。


 そしてブラックスカルの創設理由だった。


 巳堂 白夜もそれに協力する決意を固めた。



 だがデザイアメダルと関わってから何かがおかしくなった。


 最初は末端からおかしくなっていき、そして何時の間にか、デザイアメダルの販売斡旋所みたいな感じになっていた。


 ムクロの決断は素早かった。


 チームの危機を知り、出来る限りメンバー達を離脱させていった。


 そして何かしらの裏工作が成されたのだろう。


 ムクロは苦渋の決断でデザイアメダルのばらまくのに協力した。


 巳堂 白夜は父親直々に変身アイテムを渡されてブラックスカルの手伝いをやらされたのはこの頃ぐらいだ。


 今にして思えばブラックスカルの監視役をやれと言う意味だったのだ。


 特に黒いメダルが出始めてからブラックスカルは――それを使用するように言われたムクロは加速度的におかしくなった。


 段々と人格が変わっていき、デザイアメダルで得た力をバックに組織の勢力を拡大し、人格が豹変していった。


 そして巳堂 白夜はブラックスカルに従順して協力する傍ら、どうブラックスカルを利用した連中に復讐するかを考えた。


 真相その物は実の父親から全て聞いている。(*第十一話参照)


 ただその時はまだ恐くて上手く決断を下せなかった。


 この決断の遅さを少年院に入った今でもとても後悔している。


 ムクロの異常な変化の真相を知ったのは、出会った時は様々な呼び方をしていたが――黒いレヴァイザーの御陰だ。


 デザイアメダルの副作用の事など色々と知った。


 そしてムクロの異常な変化についてはムクロを乗っ取ったメダル自身が語った。


 最初は何を言ってるのか分からなかったが、黒のレヴァイザーの説明を聞いているウチに合点が行った。


 そしてどうするか悩み、悩んで悩み抜いた。


 結局ブラックスカルも父親も何もかも全てを潰す決意を持ったのは精神を乗っ取られたムクロの計画を知って、そしてあの夜にクラスメイトをデザイアメダルの魔の手から救って色々会話した時だ。


 つまりメダル風情の学園の乗っ取り計画を逆に利用し、復讐するつもりだった。


 ブラックスカルを利用した政府も、父親の件も何もかもネットで悪事を暴露したので想像以上に上手くカタが付いた。


 そしてムクロの意識を乗っ取った黒いメダルもアーカディアの連中の力を借りる形となったが此方も上手く行った。


 そして少年院で真面目に過ごしながら、これからどうするか考えた。


 恐らく少年院にずっと居た方がマシに思える程の苦難が自分に襲い掛かるんじゃないかと白夜は思っている。


 罪を犯すと言うのはそう言う事なのだから。


 ムクロはもういない。


 だが自分達だけは、昔から居たメンバーだけは知っている。


 ムクロの――本当のブラックスカルの素顔を――

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