第四十八話「諦めないで」



 地球連邦軍宇宙艦隊は現在新たに現れた増援部隊と激戦を繰り広げていた。

 ブレンは既に月やコロニーにも魔の手を伸ばし、侵略の手はより激しさを増していた。


 必死に宇宙戦艦、宇宙戦闘機、小型艦艇。 

 さらに宇宙用のパワード―スーツ、ラウンド・ウォーリアーや機動兵器アサルトライドで迎撃する。

 

 こう言う場面では一方的に地球側の軍隊が倒される場面は多いが、どうにか善戦して五分五分に持ち込んでいた。


 そんな激戦の混乱の最中――


『此方世界管理局、援護する!』


『此方銀河連邦、手続きを省略して遅ればせながら戦いに参加する!』


『助太刀するグモ! 地球のピンチグモ!』


 謎の第三、第四、第五戦力が立て続けに武力介入していた。


 まるで特撮物に出て来そうなヒロイックな戦闘機隊が円盤を撃墜。

 地球連邦の宇宙戦闘機よりも高い超高性能差で円盤を圧倒していく。


 メタリックなコンバットスーツを身に纏い、宇宙で敵の怪人や円盤を叩き落としながら遠隔操作で戦艦を人型巨大ロボットに変形させて敵の円盤を一斉に火の玉に変えて行くメタルヒーロー。

 他にも宇宙服を着ないで、生身部分を露出した美少女戦隊が銀河を駆け抜けて、手に持った武器で白兵戦を行ったりしている。


 そして上半分が黄色いウサギのような可愛らしいデザインの、古典的なデザインのUFO(ウサ耳がついて、下に四つほど丸い電球みたいなパーツがついている)。光線や変態的機動で敵の円盤を翻弄し、着実に敵の数を減らす。

 またウサギを模した機動兵器の姿も確認できた。全高五メートル前後で機動力も優れているが火力も高い。

 さらにには一等身の黄色い宇宙服を着たウサ耳の何かがブレン軍を叩き潰していく。手に持った古くさいデザインのSF銃や素手で殴ったり、ハリセンや日本刀、金属バットなどで叩き潰していく。

 最後は絶対なんかおかしい。


『ドーモ、ブレンド軍サン。ハジメマシテ。チキュウニンジャデス』


さりげなく忍者も混じってるのも気のせいだ。しかも生身で宇宙空間の中、戦闘機の様に飛び回ってるのも気のせいだ。



『一体何が起きてるんだ・・・・・・』


『さ、さあ?』


 地球連邦軍は混乱しながらも取り合えず今は放置して自分達の職務を全うする事にした。




side 谷川 亮太郎&川島 愛奈


 谷川 亮太朗はずっと戦いぱなしだった。

 川島 愛菜もそうだ。


 天照学園に避難する学園街の住民も爆発的に多くなってきていた。


 他の場所に避難しようにも敵は自衛隊や地球連邦の防衛戦を容易く突破するために、下手に動き回ると逆に危ないと言う状況だ。


 だが動かないと死ぬ。

 なので宇宙人と戦えるヒーローが多くいて、ブレン軍とある程度戦える軍事力を保有する天照学園に命駆けでここに逃げ込んでくる住民は後を絶たなかった。


 そこに自衛隊や地球連邦達なども来て、協力して避難民の避難支援を行う。

天照学園に住まう民間の大人達や、教職員、そしてヒーローもその輪に混じり、助け合いながら生きていた。


 そんな中に谷川 亮太郎と川島 愛奈の二人がいた。

 避難場所として解放されている学園の一つ。

 人が寄り付かない場所でテキトーに座る場所を作って休憩している。

 一応谷川 亮太朗もヒーローなので人の視線を気にするタイプだ。

 特に川島 愛菜などは生身一つで頑張ってるので身バレしている。

 なるべく人と関わらず休憩したかった。  


「兄ちゃん、兄ちゃん、宇宙が大変ぽい」


 スマフォを見ながら川島 愛菜が呼びかける。


「らしいな・・・・・・確か反攻作戦の準備中だったけどそれを中断してまで増援と戦ってる感じらしいな」


「それ何処のソース?」


「ヒーローだけが見れるネット掲示板みたいな場所で――」


「ヒーローって凄いね」


 全くだと亮太朗は思う。

 より厳密に言えばあの霧の玩具屋に通えるヒーロー達しか見れないサイトだ。

 

「この地球、どうなるんだろうね。兄ちゃん」


「大丈夫。この学園の、本物のヒーロー達が動いてくれているから」


 そう言って空に目をやる。

 ブラックスカルの親玉とやり合う事になった一件以来顔を合わしていないが――それでもまだ中学生の少年少女達だ。

 

 それが一番危険な場所にいる。

 そう思うと自分も負けていられないと言う気持ちになる。


「・・・・・・とにかく出来る事からやっていこう」


「おー兄ちゃん前向き――」


 決意を新たに谷村 亮太朗は立ち上がった。



side 柊 友香&橘 葵


 柊 友香と橘 葵。

 城咲 春歌のクラスメイトであり、友人でもある二人。

 体育館で家族ぐるみで身を寄せ合いながらも、春歌の無事を祈っていた。

 その傍らで暇さえあれば情報収集をしている。


 だがどこもかしこも絶望的な戦いの情報報告ばかり。


 宇宙の地球連邦軍の艦隊は優勢だが、楽観できない状況であるらしい。


 地上では情報が錯綜していて正確な状況は把握できないが、とにかく軍隊は苦戦しているらしいのと避難民は首都から離れるか、この天照学園に集まって来ているとの事だ。


 そしてヒーロー達は何やら敵の地上の本拠地に向かっているそうだ。


「大丈夫なのかなぁ?」


 学校の屋上でピンク髪のショートヘアの少女、柊 友香は不安を口にする。

 運動場では避難民や炊き出しの手伝いをしている大人などが入り混じり、その傍ら敵のロボットや円盤の残骸の片づけをしていて嫌が上でも今の現状を再認識させられた。

 

「だけど今は二人を信じるしかないわ」


 メガネを掛けた長い青髪の少女、橘 葵が辛そうな表情をしてそう告げる。

 葵の言う通り、自分達に出来るのはそれぐらいしかない。

 「そうだよね」と返し――遠い空を見詰めながら友香は言った。


「・・・・・・きっと大丈夫だよね?」


「うん――」


 二人はクラスメイトの無事を祈る。

 その想いはきっと届かないかもしれない。

 けれども――思わずにはいられなかった。


 ふと、屋上のドアが開かれる。


「すいません、ヒーローウィークリーの増田 美子です。ちょっと取材させて貰ってよろしいでしょうか」

 

 そんな矢先にメガネを掛けて青い上着を羽織ったポニーテールの有名な記者がやって来た。

 ヒーローウィークリー。

 テレビ業界が不振の中で人気番組として視聴率を集めている番組の司会者であり、記者でもある。

  

 そんな有名人が自分達二人に何の用だろうかと顔を見合わせる。



 Side of レイ・シュナイダー


 レイ・シュナイダーは日之上 綾と学校の屋上にいた。

 遂さっきまで、ブレン軍の襲撃の影響で目覚めたらしいデザイアメダルの怪人の掃討をし終えたところだ。  


「んじゃあちょっと行ってくるわ。アイツらの事が気になるからな」


「うん、気をつけてね」


 アイツらとは勿論、天野 猛達の事だ。

 正直とても気になる。


「おう――ずっと封印してたあの力も使う時が来たと思うしな・・・・・・」


 そう言って剣のペンダント。

 一種の変身アイテム。

 名をシャインブレードを見詰める。

 

 ずっとずっと封印して来た力。


 だが時代は変わり、シャインブレードもパワードスーツの一種でしか無くなってしまった。


 そして今は世界の危機だ。


 学ラン仮面よりもこっちを引っ張り出すべきだろう。  


「綾」


「なに?」


「ありがとな。俺を人間にしてくれて」


「?」


 そしてレイは剣のペンダントの力を解放した。



 Side of JOKER影浦


 乱レ桜。

 

 元々天照学園内でも道外れにある隠れたお店だ。

 こんな事態でもヒッソリと店を開け続けていた。

 

「まさかお前が来るとはね」


「ああ――こんな時だからこそな」


 JOKER影浦がカウンター席で紅官女と向き合う様に席に座っていた。

  

「相手は勝負に出たみたいだな・・・・・・だからこっちも勝負に出なけりゃならねえ」


「みたいだね・・・・・・」

 

 宇宙の状況を考えた場合、今この難局をどうするかで運命が決まる。

 戦とはそう言う物だ。

 幾ら常勝を重ねようとも、敗北しようとも、たった一度の勝敗で戦はガラリと変わってしまう。

 

 今が踏ん張り所だ。


「だけどいいのかい? 下手すりゃ地球の守りは――それどころか真実知った支配者気取った馬鹿どもが何をしでかすか・・・・・・」


「その時はその時だ」


「子を茨の道を歩ませるのも大人の務めかい・・・・・・碌な死に方しないよアンタ」


「だな・・・・・・」


「テンショウの嬢ちゃんも今のアンタ見たらどう思うかね・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」


 仮面を取って、グイッとグラスの酒を飲み込んだ。

 そして勘定を置いて立ち上がる。


「じゃあ行ってくるわ・・・・・・」

 

「万が一の場合は私が学園長の業務を代行させて貰うよ・・・・・・未来のためとはいえ、何もかも若者に押し付けるのは酷な話だ」


「おう、任せた」


 そしてJOKER影浦は立ち去る。


 

 JOKER影浦が向かったのは天照学園北部にある軍事エリア。

 そこにある格納庫にJOKER影浦の専用機があった。

 第二次大戦時の日本帝国軍の傑作戦闘機、零戦に似た形状をしている。

 前部のプロペラが無い所を見ればまんまソレだ。

 隣には貧弱さで有名なチハ戦車が置いてある。

 二つとも共通して尖った白いコーン型の、緑色の粒子を撒き散らす何かのエネルギー炉を搭載していた。


 零戦似の戦闘機の場合はプロペラ部分にだ。

 それに乗り込み、エンジンを始動。

 光りのプロペラが形成され、リニアカタパルトで空高く打ち出される。

 現行の戦闘機から考えられないUFO染みた幾何学的な変態機動でマッハ十以上の速度を叩き出しながら空を舞う。 


 

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