第三十話「傭兵」


 第三次世界大戦後。

 別名アルテミス王国独立戦争は多くの謎を残したまま、地球側の敗北と言う形で幕を閉じた。

 これにより大規模な変化が起きた。

 例えば中東の治安の悪化、大国の傲慢な外交に対しての反発などなど挙げればキリがない。


 そうした世界情勢だからこそ傭兵と言う職業もまた無くならないのだろう。

 戦争前と戦争後で変わった事と言えばアルテミス王国の兵器に対抗して地球でもパワードスーツ兵器やロボット兵器も導入されつつある事ぐらいだろうか。

 なので傭兵達は単なる軍人としてのスキルだけでなく、そうした戦争の状況に対応する柔軟さも求められるようになった。


 世界各国も次なる戦争に備えて新しい世代の兵器開発を行っている。


 だが極東の島国、日本ではその辺り一テンポ遅れていた。

 ブラックスカルの事件により日本政府は兵器開発をストップせざる終えなかったからだ。

 テロを起こしてまで盗んだ技術で兵器開発をして良い通りなど民衆は認める筈が無い。


 なので日本政府は従来の旧世代の兵器をやり繰りするハメとなった。


 しかしそれでも仕事をしなければならなかった。


 徐々にではあるが学園島外でもデザイアメダルによる犯罪が多発し、ヒーローの力が必要とされていた。


 警察では対抗できず、自衛隊の出動は政治的な問題が絡むのでNO。


 学園から協力して貰うと言うのは政治的な要素が絡んでかなり難しい状況だった。


 なので暫くはヒーローの自主的な活動に任せざる終えないと言うのが現状だった。




「それで学園生活しながら、傭兵活動する事になったアルか」


 と、春龍が言う。

 何時もの場所、ホテル七星のオフィスで春龍は知り合いの傭兵兼クラスメイトと情報交換を行っていた。

 既に時刻は夕方である。


「そう。アウティエルのお嬢ちゃん以前より大分丸くなったけど、稜を守る為にも組織の行方は追うって聞かなくてさ」


 灰色髪で褐色肌で頬に切り傷がある少女が愚痴る。

 体がアスリートの様に鍛え込まれている少女「ティリア・マクシミリアン」が言う。

 元々とある傭兵団に所属していたが、今は宮園財閥から倉崎 稜の『監視』任務も兼ねて天照学園に通っていた。

 ついでに学業を身に付けさせる目的もあったのだろう。


 今現在は倉崎 稜が住まう学生寮に住み込んで任務の真っ最中。

 一応面識があるので顔合わせも住んでいる。

 稜は大層喜んでいた。


 闇乃 影司の存在やらは意外だったが。


「例の組織については私も足取りを追ってるアルが、ブラックスカルの騒ぎのせいで中々判り辛くなっているアル」


「まああんな大事件になったもんな――」


 ブラックスカルの事件は様々な面で日本に大打撃を与えた。

 人の動きや金の流れなども激しく、そのせいで足取りは捉え辛くなっていた。


「もっとも、それ以前もあんまり効果は挙げられなかったしな」


「良くて下っ端連中だったアルね」


「うん――判ってるのが組織名がアシュタルで進んだ科学技術を持っていて改造人間と言う戦力を保有しているのが判っているぐらいかな? それもナノマシンを投入してどうこうって感じで」


「ナノマシンを投入する事で体の細胞を造り替える事でデザイアメダルの怪人よりも強力な怪人を産み出す事が出来る――恐ろしい物ね」


 アシュタルについては今の所本当にそれぐらしか判っていなかった。


「それと倉崎 稜が計画で重要視されてるんだっけ?」


「だけど恵理が言うには稜は恵理が誘拐された時に倒されてるんだけど、どうしてその時に誘拐しなかったんだって言う話になるよな?」


「そうね・・・・・・」


 ティリアの疑問は最もだ。

 そうでなければおかしいのだ。


「何か理由があったと考えるのが自然よね」


「まあそうだな」


 幾ら考えても春龍の言う事以上の答えは出ないだろう。

 ティリアもそれに納得する。


「この話はここまでにして、他の団員さんはどうしてるアルか?」


「守秘義務があるからな何しているかは言えないが――ともかく死んだって事は無いだろう」


「そうアルな。んでこれからも恵理とコンビを組んで組織を探るアルか?」


「詳しい事は言えないが大体そんな感じになるな」


 ティリアは明かさないが受けた依頼の中には恵理の護衛や監視も含まれている。

 そして恵理はアシュタルを探るために学園外での活動には積極的だ。

 その流れでコンビを組んで探っていく形になるだろう。


「それはそうと武器はどうするアルか?」


「稜の奴が色々と伝手があるらしくてな。そっから用意した」


「そうアルか」


「ああ稜がな・・・・・・」


「うん? どうしたアルか?」  


 何故かティリアはゲンナリしていた。


「稜な・・・・・・」


「うん?」


「アイツ、恵理とキスしたらしい」


「え、それ、マジ!?」


「だってさ、恵理メチャクチャ機嫌いいもん!? 稜の事尋ねたら反応が凄い分かり易いもん! 顔真っ赤にして涎垂らしながら目線逸らして「そそそ、そんな事無いわよ!! ただキスしただけだし!!」とか言ってるし!」


「恵理ってゲドマガとかの変身ヒロインその物だけど、それでもまだキスだけなの!? どんなに自制心あるの!? てかまだキス止まりな時点で私凄い驚いてるんだけど!? 絶対一線越えてるでしょ!?」


 その事に春龍は驚いたと同時に内心では「絶対に一線越えてる説」をプッシュする。


「まあ冷静に考えればそうなんだけどよぉ・・・・・・絶対一線越えてるよなぁ・・・・・・まあ相手が恵理だから分かるんだけどよぉ・・・・・・」


「お前は稜の事になると本当にキャラ変わるアルな・・・・・・」


「いや、そうじゃ無いんだけど・・・・・・アイツ、メチャクチャ可愛い上に頼りになるし、ティリアお姉ちゃんとか呼ばれたら私もう、もう――」


 と、顔がヘブン状態になってティリアは自らの性癖を披露する。


「ダメだこの傭兵。早く何とかしないと――」


 ティリアも何だかんだで腕利きの傭兵だ。

 だが倉崎 稜が絡むとこうもポンコツになるとは。

 恋愛とは恐ろしいなと春龍は思いつつ、場の空気を変えるため一つ提案した。


「あ~取り合えず、カラオケにでも行く?」


「・・・・・・行く」


 そうして二人はカラオケへと向かう事になった。

 取りあえず二人だけだと寂しいので揚羽 舞とかも呼ぶ事にした。

 

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