第67話 丸見え
意識してしまうと、もう駄目だった。
ぶわっと何とも言えない感情が沸き起こった俺は、イヤホンを拓夢の耳から引き抜いた。
「――ぃ!」
勢い良くしてしまったから、耳が痛かったらしい。
申し訳ないとは、思ったけど。
これ以上、このままの距離でいるのは、無理だった。
「……痛い」
「……ごめん」
「どこで照れたんだか…」
はぁ…と溜息を吐かれ、ぎょっとする。
どうしてわかったんだ…?
俺が、恥ずかしくて堪らなくなった事を。
思わず無言でその横顔を見つめてると、ふと目が合う。
拓夢は、少し眉を下げた。
「あー・・・悪い。俺、無意識に人の図星を突くんだよ」
「…え?」
「…気持ち悪いか?」
気持ち悪いかと、聞かれる。
じっと俺は、考え込んだ。
外に出しても無いのに、心情を読み取られる。
確かに、恐怖を感じるかもしれない。
でも、俺は
「……嬉しい」
「え?」
「よく誤解されるから。気持ちを理解してもらえると、助かる…かもしれない」
「………」
多分。助かる、俺は。
考えつつ、そう言葉にした。
「そう言ってくれたのは、お前だけだよ…」
「…俺だけ?」
「ん。大体は気味悪がるし、それか怒りだす」
「………」
「隠したかった事を、俺が丸見えにしちまうんだから、当たり前なんだけどな」
「丸見え…」
「そう。だから、よく周りと喧嘩になったりもする」
「…わかっても、言わなきゃ良いのに」
「俺、馬鹿だから。頭で考える前に、口から出ちまうんだよ」
「…本当に馬鹿だな…」
不器用な奴だ。
勘が良いのか、それとも人を良く見て良く理解しているのか。
…恐らく、どっちもなんだろうけど。
人の考えを読み取っては、理解している事を明かしてしまう。
悪意なんか、全く無いんだろう。
黙っておけば良いのに。
それが出来ない彼が、不器用に思えて仕方が無かった。
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