第49話 罰なのだろうか






「や、やだ…っ。他の場所が…」


「んー?何?」


「なんか、ここが嫌だとよ」


「ラブホ行く?」


「男だけでラブホとか、初めて!」


「ばっか。金ねーよ」



嫌だ。嫌だ。

ここだけは、嫌だ。


この公園では、嫌だ。



拓夢がいた場所。

もしかしたら、また来るかもしれない。


そう思うと、ここでするなんて考えられなかった。



「離せ…っ!」


「――いっ!」



無我夢中で腕を振り払い、走り出す。



「だから、大人しくしろって」



けれどもそれは直ぐに終わり、がくんと頭が揺れる。

後ろから頭を強く殴られ、俺は地面に倒れ込んだ。



「うわ、ひでー」


「痛かったー?大丈夫ー?」


「さっさと起きろよ」



俺を心配する言葉を述べながらも、ニヤニヤと笑う男達。


1人の男に髪を掴まれ、無理矢理立たされる。



痛い。痛い。痛い。


後頭部がじんじんするし、倒れた時に頬を擦りむいたし、掴まれた髪の毛の根本が抜けそうだ。



酷い仕打ちだな。

これは、弘樹を振った罰なのだろうか。





自分を愛してくれる人を嫌い、突き放した贅沢な俺への罰なのだろうか。





「早くヤろうぜ」



ボタンとベルトに伸びていく手。

視界が歪んで、よく見えなくなる。


少しずつ衣類が取られていくのを俺は、ぼんやりと見つめた。


ガタガタと震えて鳥肌が立つのは、寒さのせいだけではないのは確かだった。



ぼろりと熱い水滴が頬を伝っては、すぐに風に晒され冷えていく。


また1つ、ぼろぼろと落ちていった。







「あの、箸持ってないですか」





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