第40話 まるで天気の話






「…っあぁ――・・・」



もぞもぞと潜りつつ、思わず声を洩らす俺。

隣でテレビを見ていた弘樹が笑う。



「ほんとお前は炬燵が好きだな」


「…炬燵愛しい」



今日は、金曜日。

明日は何もないからと、弘樹の家に泊まりに来た。


リビングに入ると炬燵が出されており、俺は思わず入った。

12月になったから、そろそろ出そうと思ってたらしい。



あったけー・・・。

天国だ。天国だよ、これ。

俺ん家も炬燵が欲しい。



「お前ってほんと猫みたいだよな」


「そう?」



笑いながら弘樹は俺の背中を、つーっと撫で上げた。

ビクッと体が揺れる。


かろうじて声は、出さなかった。

そのまま指は上がっていき、首も撫でる。



「骨すげー出てる」


「んっ…。もう止めろって…」


「ちゃんと食ってる?」


「そこそこ食ってるってば…っ」


「相変わらず肌白いし。もやしかお前は」


「あんた…しつこい!」



首の後ろの骨を撫で回され、俺は身を捩った。

なんかゾクゾクするから止めてほしい。

けれども弘樹は止めようとはしないから、手を叩く。



いってー、と言いながら手を引っ込める弘樹。

やっぱり猫みたいだな、って呟く言葉も無視だ。無視。


あー・・・。鳥肌超立ってる。



「なんか食う?それとも寝るか?」


「あ、その前に話があるんだけど」


「あ?なに」



次に会ったら言おうと思ってたこと。

今日言ってしまおう。



俺は、まるで天気の話をするかのように軽々とその話題を口にした。





「俺ら別れよう」






「…は?」



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