番外編 漆畑 紅の華麗なる登場人物設定集

番外編 第六局 設定 苫米地由紀~その1

 ぱんぱかぱーん。

 …………

 ぱんぱかぱーん。


「うるさいわねー‼ 」

 奥の戸から、ボサボサ頭の紅が姿を現した。


「すみません。お嬢様。終わりました。第三章。終わりました。これからは、いつものやつです。いつもの番外編です」


「はーーー⁉

  一体どんだけ待たせてんのよ?

 てか、前回の番外編がカクヨムに載ったのっていつよ⁉ 」


 高月は、ぶるるんっと顎の肉を揺らして、乗っても無い眼鏡を直す様な仕草をした。

「丁度、一年前くらいですね」

 その言葉に、紅は奥歯が丸見えになるくらい大きな口を開く。


「はー⁉ はー⁉ 一年っ⁉ 一年⁉ てゆうか、2017年中にアマチュア棋士編である第一部を完結させるって、作者、書いてませんでした⁉ 」

 紅が狂った様に叫ぶ様子を、高月は怖くて怖くて震えながら見守る。


「お嬢様、落ち着いて下さい。一年間も登場しなかった事によって、キャラクターが崩壊しております。まぁ、無理もありません。この第三章は、以前にも作者から書かれていた様に、将棋を題材にした小説なのに、対局シーンが幕間話である感想戦以外には、書かれない。というとんでもない構成を用いられ、挙句に、予定より半年も遅く投稿されたのですから……

 と、言う訳で、今回の番外編『漆畑紅の可憐な将棋講座』も、いつもとはちょっと違った番外編として……」


「番外編の、番外編? 意味が解らないわ‼ 竜太郎‼ 」

 ビシィっと紅愛用の、桃色の扇が高月の鼻っ柱に突き刺さった。


「は、はへぇ。こ、今回はですね? 将棋の事。というより、この『盤上の戦乙女【ワルキューレ】の事を色々と掘り下げていこう。と、言う事らしいんです……」


 紅が、扇をバシィっと広げた。

「メタ極まりないわね‼ 」


「お嬢様、そう言った発言は、本編に再登場した時に、読者に色々な感情を持たれますので、どうかお控えください‼ 」


「うっさい‼ 」顔に蹴りが飛ぶ。

「あふんっ‼ いい‼ 」高月が喜びの咆哮を挙げた。


「さー、では、この番外編もいよいよ第6回という訳で‼

 何と、今回のスペシャルゲストはーーー‼

 盤上の戦乙女【ワルキューレ】の生みの親‼ ジョセフ武園氏でーす‼ 」


 まさかの事態である。未曾有の事態。作者が作品に登場する。というのは、漫画作品などでは珍しくなく、少年漫画等では作品に自らツッコんできてみたり、人気投票で10位とかに入る事すらあった。作者は、ああいう漫画家を見て子どもながらに「だせぇ」と思っていたものだが、まさか自分が商用でもない作品でこの書法を用いようとは。思いもしなんだ。


「と、言う訳で、ジョセフさん。お願いしまーす」


 しかし、高月が広げた手の先には誰も居ない。

「あん? 」紅が、それに訝し気に表情を歪めた時だった。


「はーい。宜しくお願いしまーす」

 と、部屋に声が響いた。まるで、バラエティ漫画などである『天の声』の感じだ。


「あれ? ジョセフさん。こちらにお越しじゃないんですか? 」

 高月の言葉に、天の声は返す。

「こっちは、三次元だからねー。それに、おいらね? おじさんなのよ。君らと並んだら、違和感半端ないよ。場違い感半端ないよ」


「おだまり‼ 」


「ひぃっ‼ 」


 紅の、竹を割ったような一喝に、天の声は情けない声を挙げた。


「姿も見せない様な、無礼者には、話す事など御座いません‼

 わたくしは失礼いたします‼ 」

 そう言うと、紅は立ち上がり、部屋を後にした。


「ちょっ、ちょっ‼ 嘘でしょぉお⁉ お嬢様‼ お嬢様ぁ⁉ 」

 紅の後を追うが、部屋に鍵を掛けられたらしい。ガチャンガチャンと扉が激しく音を鳴らす。


「……はぁ~……」

 高月は大きな溜息を吐くと、天を仰いだ。


「どうします? ジョセフさん」高月は戸惑った様な声を出した。


「……ん~。まぁ、今回は登場人物の設定とかの話だからねぇ~。二人でも出来ない事は無いし……それに、女の子の設定だと、同じ性別の漆畑さんは、逆に居ない方が、話しやすいかもね~」


 高月は、首をくりん。と回すと「じゃあ、始めましょうか」と、すごいイケメンな目になっていた。


「じゃあ、登場人物設定で、第一回は……そうだなぁ。じゃあ、やっぱり由紀ちゃんにしようか」

 高月も頷く「無難ですね」と。ニヒルな笑みを浮かべて。



「苫米地由紀さんは、まず名前の由来なんですが。これは、一部の例外を除いて、実はこの盤ワルの登場人物に共通する。名字『広島東洋カープの選手』+名前『実在するプロ棋士、女流棋士』となっていて。

 彼女には、おいらが好きな『苫米地鉄人とまべちてつと元投手』と『室谷由紀むろやゆき女流棋士』のお二人の名前を合わせて名付けました。

 外見、並びに性格のイメージは、漫画『咲―saki』の宮永咲と、アニメ『まどか☆マギカ』の主人公鹿目まどかをイメージして書いてますね」


「では、他の詳細を」


「え⁈ えーーっと。そ、そうですね。これを機に色々と残しておくのがいいかもしれませんね。ただ、誕生日とかは小訳タイトルの由紀の年齢と、矛盾が出て来そうで怖いんですよね」


 それに、鋭い眼光を以て高月は言い放った。

「既に、竜王タイトルが出現している年数の矛盾がありますけどね‼ 」


「うぐぉ⁉ 」

 天の声は激しく動揺した。


「そ、そうなんだよね……古葉は、由紀が大会で桃子と指した時に既に、40~50代と表現(美しい中年)されているから。彼が16歳の時は、竜王は史実の1988年から。だと、間違いになるのよ……でもね⁉ でも、それ言いだしたら‼ 盤ワルの世界はフィクションだから‼ 実際の地名用いて、実際の災害とかも物語の主軸に絡むけど、フィクションだからぁあぁああ‼ 」


 高月は、掻き分けるほど長くも無い髪を掻き上げた。

「よろしい。では、そういう事にしましょう」

 天の声は、若干苛立ちを息遣いから読み取れたが、そのまま続けることにしたようだ。


「そうだなぁ。じゃあ、誕生日は由紀のイメージから11月1日。犬の日にしましょうかね。信じた相手には心から信頼する所とか、普段おどおどしてるのに、やるとなったら、徹底的にやる。そんな所を持っている彼女ですからね」


「その他の身体的特徴は? 」


「基本的に、章毎に成長しているし、これから、予定されているプロ棋士編でも、彼女は成長期年齢なので、恐らく変化する筈でしょう。

 とりあえず、10歳の時は、133cm、29kg。平均より、少し少な目。と言った感じでしょうかね。物語上でも、運動が苦手な読書女子。と書かれている様に、あまり体力は無い子です」


「その分、学力が高い感じですか? 」


「そうですね。授業を真面目に聞いて、宿題もすぐにやっちゃう子なので、小学四年生程度の問題なら、基本全部「大変よく出来る」が通信簿に付いてる子です。あ、体育以外」


「なるほど、だから将棋にも早く対応できたのですね」


「んー、それなんですけどね? 実は、おいらは由紀ちゃんは『先天性の天才』ではなく『後天性の努力により、才能を開花させた者』として、考えているんですよ」


 それに対し、高月は頬を膨らませた。

「えー、いきなり、実力者の達川愛子を追い込んでるじゃないですか」


「はは、あれは、6枚落ちですからね。更に、どうしても物語上、由紀に特殊能力を持たしておく必要が有ったんですよ。第一章は、云わば盤ワルの最初の物語だから、由紀に強敵と戦い、勝利する展開はどうしても必要でした。だから、スポーツ界でよく言われる究極の集中状態『ゾーン』を彼女に与えました」


「ゾーンと言えば、対戦相手の音桃子ちゃんも、駆使していましたが、苫米地さんは、彼女に勝利しましたよね? その差は何だったんでしょうか? 」


「んー……この作品を読んでくれたその世界の方は勝因は『由紀の優しさ』と書かれていたんですよ。うん。それも間違いではないです。桃子は、余りにも直線的過ぎた。

 おいらは、あの勝負は、由紀に勝因があったのではなく、桃子に敗因があったのかな。と思います。実力では圧倒していた怪物の桃子が、格下の由紀に何故負けたのか? そこに二人の決定的な違いがあったのかなと。そして、桃子の敗因とは言いましたが。多分由紀以外では彼女を止める事は出来なかったでしょうね」


「なんか、色々と歯に物の挟まったような言い方ですね」


「だって、ここも後の伏線なんですもん」


「では、質問なんですが……いいですか? いきなり確信を突きますよ? 」


「う……なんか、嫌な感じですね」


「由紀ちゃんは、将棋の世界に戻ってきますか? 」


「あ~……そうですよね。そうですよね。第三章は、余りにもライトでもないし。将棋でもない、ただのノベルだったですもんね。気になりますよね。そりゃ。

 安心して下さい。彼女は、第四章で、もう一度、将棋を指します。そして、この第四章のラストで彼女の人生の分岐点が、大きく動く事になるでしょう」


「く、詳しく‼ 」


「それは、大変なネタバレになりますので、ご勘弁を‼ 」


「なるほど……確かに、その都度やればいいけど、主人公というのは、あまり情報を出しておかない方がいいですもんね。では、今回はこの辺にしときますか。次回は、誰の紹介にしましょう? 」


「そうですね。では、第四章でも鍵を握る、あの人物にしましょうか? 」


「女の子ですか⁉ 」


「さぁ、どうでしょうね。では、次回をお楽しみに」

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