第12話 疾風の如く



「取り乱してすまなかった。悪い。申し訳ない。大人気なかった。許してくれ」


 矢作さんは一通り叫び狂ったあと、泣き出してしまい、後からやってきたハルカのマネージャー・ユキ姐さんに後ろから思いっきり蹴られて、ようやく正気を取り戻した。


 もう、苦笑いするしかない。


「ここに俺が来たのは、みちる、お前の荷物を持ってきたんだ」



 あの大きなスーツケースには見覚えがなかったのだけど、中を開けたら、着替えや私が愛用している枕が出てきた。



「日比野社長の命令で、今日からお前の家はここだ」


「は?」


「だから、今日からここに住むんだよ、ハルカさんと二人で」


「はい??」



(何それ……聞いてない)



 意味がわからない。

 ここで、ハルカと私が一緒に?

 なんで?



「ごめんね、みちるちゃん。うちの社長はせっかちな人でね、思い立ったらすぐに行動しちゃうのよ」


 思考が停止し始めていた私に、ユキ姐さんは申し訳なさそうな顔で、だけど、とんでもないことを言い出した。




「ルームシェアだと思って。ハルカの事は、女の子だと思ったままでいいから、社長のOKが出るまでは、あっちの部屋を使ってね。右隣の部屋はハルカの部屋だから、中から必ず鍵をかける事は忘れずにね」




 鍵をかける事を忘れずにって……




「あなたが絶対にハルカの正体を公表しないと判断されるまでの間だけだから」



 そういう問題じゃないと思うんだけど……


「ないとは思うけど、ハルカに何かされたら、すぐに連絡してね」




 私はたった一度の過ちで、つい数時間前まで、憎んでいた相手と、同居することになりました————




 展開が早すぎて、ついていけないんだけど……



「だから、ユキ姐、オレは何もしないって言ってるでしょ!しつこいよ!」








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