第21話
その翌日の北上校内で美佳は、最近行動をともにしているクラスメイトの清水美咲と吉沢亜紀、加奈とは距離を置いている訳ではなく、この2人が他のクラスメイトから距離を置かれている・・そんな理由である。
加奈もこのクラスでは浮きそうな子のフォローをしている。美佳や加奈が何でこんな事をしているのかは、追々に・・だから話題不足ではないけど、活発な美佳が自分の話題に比重が多くなるのもそれは仕方がないだろう。
やはり学生の身であるから、事件はそんなに置きたりはしない。だから2人には昨晩にあった、不思議な写メの話に・・。
美佳「この写メの内容は理解したのよ、でもこれって・・もう少し何とかならなかったのかと思うのよね。」
そこにある携帯の写メは、美佳の言う通り確かに真っ黒だ。本文に書かれている内容もそれは簡単に理解出来るモノなのだが、浅い理解でいいのか?もっと掘り下げた意味ではないだろうか?深いと絶対に・・多分間違いなくヤバいっしょ?そう思うのは他の2人であった。
その本文は「この時期には珍しく、星空が見えるよ。「 添付アリ」 おまえが一緒に外の空を眺めてくれたら寂しくはないな。」
美佳「寒かったわよ ! 写メとほとんど変わらない真っ暗な空の何処に星があったのよ?あともう少しで今年も終わりって時期なのに、真っ暗な夜空を眺めて何が得られるの?」
ついついと愚痴っぽい言いぐさや、そんな態度になってしまうのはあいつのせい?そんな美佳だが。
昨晩のメールは殆どリアルタイムで確認していたので、星空観賞の最中ではどこかの誰かさんも今頃は・・何寂しがっているのよ。今すぐそばに駆けつけてあげれる訳じゃないけど、電話で話す位は出来るじゃないの?
美佳「確かに後数年もすれば、社会に出ていく訳だけど・・それはそれで寂しいとか言ってられない状況になると思いますよ・・」
ねぇ坂上先輩 ! そんな呼びかけを心の中で呟きながら、そして自分が大人になる・・考えてる暇もなく勝手に・・そういう成長の過程でも男女の差があるのだろうと、美佳は改めて納得している。
有馬美佳が坂上祐介という高校生に出会って3か月程になるが、自分の中に有る物が変わって来ているのは、多分間違いではないだろう。そしてその変化を気にかけずに少しずつ馴染んで行っているのは、自分の努力でなく彼の気づかいらしいと言う事も。互いの相性が良過ぎるのではないのか?そんな自分勝手な事を思ってしまえる程の距離感になっていそうだ。
自分を客観的に見れているのならさして大きな問題には巻き込まれないと思っていたのだが、そんな自分の思慮が浅かったと知るのにそれ程の日は掛らなかった。
パラレルタイム*11月の頃はまだ、そうでは無かったような?・・2*
蛍名 「川崎さ~ん」声をかけられたほうに顔を上げると、そこに居たのはそんなには親しくない・・待て待て待て。こいつには最近でも2回ほどの接点がある。それ以外には殆ど・・まったく無いけどバカ祐介がいるし。
だからこのクラスでは、バカ祐介との遣り取りしか思い浮かばない。ええっーと 、なんと申しましょうか私ってもとより明瞭な身振る舞いをしているので、今更の愚行なんだけど・・犯人はおまえか !
ここで当て付けに視線を祐介に送ってみれば、こっちをアホづらして見ている視線とあってしまった。
あいつは又私を見ながら癒し清めているんだな・・ 納得、そんな場合でもねえ 。
「ん、な~に?」余計な事は忘れ、ここは冷静な対応よ。そこへ訝しげな雰囲気を漂わせて、寄ってくるのを気づかない振りをする。そして殆ど関わりあわないクラスメイトの女子達数人と、京子はこの場で相対する事になった。
この女子達もこのクラスの中ではかなり関わりを遠慮している川崎に、何故か話かけてしまっている自分をちょっと不思議に思っているのだが、今は懐いてお得のオ ーラを感じているのだ。それにクラス男子のほぼ全員が注目の彼女だ、そこにも便乗出来る気がしたからだが。しかし以前はもっと近寄りがたかったような・・彼女も最近は変わった気がする。
胡桃 「えへへ。先日スクープされたスキャンダルが、とっても気になっちゃって・・もはや本人に、突撃インタビューしかないって思って聞きに来ました。」
スクープ?スキャンダル?おおよその見当はつくけど・・何の事ですか?ここで根も葉もない噂に踊らされるのは、とっても迷惑です。なんて以前なら早々にお引き取りを願っていたのだが、思い当たる事がありありなうえに、その話題にちょっとふにゃっとしている自分にも多少より多くに困ってもいる。その当事者に目線を送った京子は「それってあいつに関わる話しってことですよね?」一応は違うかもってかなり期待薄の返答をしてみたのだが、そこで自分の視線の先にいる人物を確認した京子に、クラスメイトが間違いありませんと頷いて口を開いた。
蛍名 「お昼休みの食堂で2人仲良く食事をしながら、はいア~ンとかを数回以上繰り返していたり、飲み物も交互に飲みあっていたり周囲からの注目をまったく気にせずに・・嫉妬とやっかみで拡大解釈を差し引いても、2人り仲は宜しかったのではと」
京子 「そ、そんな事は、や 、や・・あ~ほぼ間違いなくやってますね、アハハハ。でもその程度は不純交遊には成りませんよね?あいつからのえっちぃ行為は、まったく無いですから」
胡桃 「 いえいえ、その行為について咎めようとか何らかの行動に出る積りで聞いているとかじゃなくて、女子も羨む川崎さんが今まで浮いた噂も無かった訳を危惧していたり・・でもあいつってばつい最近に他校の彼女を大っぴらに紹介とかしちゃってるし・・見ているこっちがちょっともやもやが溜まった感じだから、聞いてみちゃおうかなーってとこです。」
そっかそっかと何となく・・はっ ! 私の動揺をまったく気にせずに、あのアホがまたアホ面してこっちを見てる。コンヤローって気持ちであっかんべーを祐介に叩きつけてから京子は口を開いた。
京子 「私だっていきなり突然に彼氏を作ってしまうなんてそんな能力は持っていないし、ましてまとな友人でさえ居たのか?って理解もないの。そうね・・惰性や成り行きでのナアナアな付き合いとかでなく、お互いに確かめ合ったBFの存在です。あいつは前にも私を庇って・・GW開けに私の所に変なのが来た時があったのよ。一年の時のクラスメイトだから変なの扱いはどうかと思うけど、勝手な勘違いで1人盛り上がりな奴からあいつは私を庇ってくれたわ。その後も恩を着せて迫ったりもしなかったし・・その時に言い寄られなくて自分が自信を失いそうに成ったのは極秘よ。それにあの2人の付き合い方を見ていると、憧れるとこも多くあいつは・・見てるとなんかムカつく。」
そんな事を聞かされたクラスメイトはその当事者たる祐介に目を遣ると、頭に手を当て肘を机に置くような体制でこちら側を見ているようであったが、その顔が急に手から離れ机に落ちたのだ。
蛍名 「今のは寝落ち?」
クラスメイトが祐介の寝落ち姿で呆気に取られている脇を、京子は素早くすり抜けて祐介の所に行き着いた。傍から見れば何をしていたのか?聞きづらい感じの事をしてから戻ってきたので、ここでは疑問を問うのか迷うとこだ。
京子 「まったく・・美佳ちゃんの言ってる事が、少しだけ解った気がするわ。」
その呟きのような呪詛のような、そんな京子の言葉の中に登場した美佳とは誰なのだろう?それが何の話なのかのその詮索も追加するのだった。
京子 「今あいつが寝落ちしたでしよ?あれでよだれとか出ていたら・・怪しげな部分は処置したけ・・美佳ちゃんってのは、学祭の時にお手伝いに来ていた北上校の子。あの子が言ってたんだけど「坂上先輩はだらしなく軽薄な部分を、他人にさらっと見せる時がムカつく」って。そんなの在るのかな~って不思議に思っていたけど、それが今おもっきり合ったわ。普段からほぼギリギリのダメンズなんだから、その先を踏み越えるなって話よね。」
蛍名 「そのギリギリダメンズ君がBFとしてアリなのはなんとなくですが解りましけど・・はい、ア~ンの行為までには至らないような気がするんですけど?」
京子 「ああ・・あなた食べ物に嫌いな物は?全く無いって事はないわよね?」
蛍名 「えっ?ええ、それはけっこうありますね。」
京子「うちの学校の食堂使用率はそんなに高くは無いので、その日の麺とその日の2種の定食に限定されているの。私もこの間初めて知って初めて利用したんだけど、その定食の中身に数点嫌いな物が混じっていて、それを自分で食べずに処分するのには・・それを捨てるか隣の優しいあいつに食べさせるか・・すぐに感づかれて、バレバレで食べてくれたわ。だから私は嫌いな食材に優しく微笑んでゴミ箱・・彼の口に運んだのよ。」
胡桃「今完全にゴミ箱扱いしてましたよ・・あまりにすんなりと。」
京子「それは誤解です。彼の口がゴミ箱に見えた訳でなくいつも嫌いな物は行き先がゴミ箱って、脳に焼き付いてるだけだから。そ・・それと彼が食べさせてくれた物が飲み物ととても良く合っていて、ちょっと変わった飲み味もそれを食べて飲めば大丈夫だったかりとか。」
その内容を聞いたクラスメイトの目が、胡散臭そうな半眼になって来ていた・・。
京子「そこで寄り添っているように見えた状況もその時は座る場所決めからの問題で、学食は座席数が少なく4人掛けしかないのよ。そこで1人で場所取りを・・ちなみにあいつは、食べ物を運ぶのにも私の手を煩わせたりはしないのね。そんな両親の躾が幼い頃から身に着いていて、何にしてもお任せがしやすいのよ。とにかくそこで席を取り待っていたら、女子2人に相席をお願いされあの状況になった訳です。えーとそれで・・ああ飲み物ね。飲み物を持って歩いていたりすると、それを持ってくれようとあいつがするから、加奈ちゃんも美佳ちゃんも私もあまり気にしない性質なので、1本のペットボトルをみんなで飲むのが最近はそんな感じかな。さらに財前副会長も、最近はそれに混ざってるわね。」
ここで京子は目を泳がせながら相手を見て、言い訳が足りたか足りないかを確認している。
京子「そ・・それとね。あいつの言い訳っていうか取り繕いな訳じゃないんだけど、故意にみんなに回し飲みをさせてる訳じゃないの。あいはいつもスポドを持って来ているんだけど、それをみんなで奪っていたら当然足らなくなって、追加で買うはめになるのね。でもせっかく買った物が飲み切れなくなって、その余ったものを捨ててしまうのなら、補充が利くスポドを後回しにして飲んでいるだけだから。」
何とか言い訳がましい事を言って終わったが、聞いてたクラスメイト達の顔を見回すとそこで自分を見てる目がちょっと暖かい・・そんな事を感じている頃には、午後の授業が開始される5分前になっていた。
ならば準備をしなければならないということでクラスメイトは個々の机に戻って行き、アホづらしているあいつの様子を伺うのに目を遣れば、正気を取り戻してちょっといい感じの横顔がそこにあった。
あいつと私の席の位置関係って、絶対に私が不利だ。こっちから目だけ動かしても、チラっと横顔が見えちゃうてどうよ?そんな事を学校のマドンナが考えるのもどうかと思うが。
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