第20話

 パラレルタイム*10月の頃はまだ、そうでは無かったような?*  


美佳「 忙しいんですけど・・」


心の叫び?いいえ、それは声に出ていました。生徒会室の隣の部屋でコピー機の蓋を開け原稿を入れ替えてスイッチオン、自分の手が挟まってる?隙間から回りに漏れた光に気がついたよ「おおっと 」そこで美佳は一気に手を引き抜き、その停止ボタンを素早く押してそのコピー機を止めた。誰も見てない?私ってなんてひどい人なの?そんな自己中全開は、私が強いられているこの状況だから「仕方ないよね~テヘ」でも紙が無駄に・・

成敬北上々峰高等学校1年生の有馬美佳は、今は自高の生徒会を支援中である。今日の作業は?ぎりコンプリートかな、目の前の資料置き場が山積なのを溜め息で隠していた。その背後からたった今入室して来た人物が、美佳に優しい声を掛けて来た。


幹丈会長「ご苦労様。毎年初秋になると必要以上のイベントも増えてくるので、生徒会支援も増員されてはいるけど・・本当に助かってます。」

美佳 「は、はい 。幹丈会長お疲れ様です、私も最近増員に加えさせて頂ました。ですが・・まだまだ不要領の戦力外ですけど、そこは暖かい目で見ていてください」

幹丈会長「大丈夫 。十分な戦力になっていますよ。ですが根を詰め過ぎずに、適度に休憩を取りながら作業に当たってくださいね。」


この有馬美佳が生徒会支援者として名乗りを挙げたのは、クラスメイトである南城加奈の彼氏だと紹介された、坂上祐介と知り合ってからの新境地で・・そんな凄いものでもないが、今よりもっと面白い事?環境?何かに会えそうな気がしたからだ。だがしかし、そんな面白い奴は「坂上祐介」にしか会えていない。それは・・不満足ではなく、多過ぎなんだけど・・何なのこの人って感じだったが。


美佳「はい、ありがとうございます。折角のお言葉を頂いたのに申し訳ありませんが、私の帰宅時間と成りましたので、本日はこれにて失礼させて頂きます。」

幹丈会長「そ、そう・・なんだ。ご自宅は帰宅時間に厳しいお家なのかな?」


ですよねー学校規定の強制下校時刻までには、まだ40分近く余っていて・・さらに我が家の門限が厳しいとかでも・・ない 。だが手伝いなどしたくないからの理由なら、最初から手伝いに立候補をしなければいい。


美佳「あははは・・頑張る気はありなのですが、家の者よりも厳しい小姑みたいな存在が許さなくて・・いやいや、許しを得た時間で手伝ってます。そんな諸事情も生徒会にはお話し済であります。」

幹丈会長「・・そうですか。ふ、複雑なご家庭?という訳ですね。それは気苦労も耐えませんね。」

美佳「いいえ 、ただの友達の彼氏ってだけなのに、無駄に私の心配をする人なだけです。いつもこっちに何かと手伝いだけは強要して来ますが、そんな強引な彼氏を天使のような彼女が支えてます。」

幹丈会長「・・天使なんだ?天使さん何ですか?」

美佳「そうですそうです。幹丈会長も少しはご存知なはず、入学当初に成績優秀な彼女を生徒会へ招いたとお聞きしています。彼女は以前から抱えていたトラウマらしき物を、強引な彼が良い方向に導いて解決の兆しにあります。その問題が簡単に解決出来る事だったのか?でもその要因を見つけ、相手が2度と関われないように処理をしたのは流石かも知れません。・・おおっと、帰宅時間に遅れるとうちの母が、坂上先輩にチクるのでこれで失礼します。」

幹丈会長「・・あ、はい、お疲れ様」


そこで美佳がこの生徒会室を後にしようと出口に向かっていると、とっても怪しげな着メロが美佳の携帯を鳴らした。なんでじゃー?このタイミング「少し失礼します」と出入り口の脇へ移動してから、ひとまず呼吸を整える。


美佳「はい、美佳です。何ですか急に電話って・・はぁ?・・知りません。知りたくないというか、忘れたんですか先日の事を」


その会話が・・聞き苦しい方へどんどん雲行きが悪くなっていく・・


美佳「だから私は、あの時言いましたよね?先輩の、京子姉さまへのセクハラ言を・・祐介先輩のクラスメイトが回りにいる教室という場所で、気にもかけず平然とトークしちゃっていましたけど、坂上先輩を見る蔑んだ視線に私は耐えられなかったと!私のイヤイヤジレンマは大変でした。」


そして美佳は携帯を持ったままその場でクネクネをしていた。これが怒りを表す態度なのか?幹丈会長にとっては理解の外である。


美佳「・・解りません。それは誰にも相手にされなくなった、おっさんになってからにしてください。・・知りません、答えはNOです。その予定が今週末の土曜日なら、私が爽快な気分でご一緒出来るよう、前日までに何らかの奉仕をしてくだい」


ぐぐっと・・最後のは、何となくのガッツポーズなんじゃね?クネクネガッツって何なんだよ。


幹丈会長「・・も、申し訳ないけど話が聞こえてしまって・・喧嘩かな?ちょっと複雑だったけど・・」

美佳「バッチこい!奉仕は確定・・ぎゅとされたいけど、奉仕じゃないよねそれ?」


そんな妄想をしていると幹丈会長に声をかけられ、はっと我に返った美佳だった。


美佳「みっともない所を、お聞きかせしました・・冷静になれない相手でしたから、周りが見えなくなってしまって・・それでも今回は、指導権を握ったので大丈夫です。では失礼します。」


今度こそですよ?もう 帰りの準備は出来ているので、まとめてあった美佳の荷物を咄嗟に掴み本格的に帰路につく。その途中で先ほどの、坂上先輩からの電話を思い出していた。

それは今週末予定の再確認なのは間違いないのだが、約束を違える事などないのに・・何かの不安を抱かせる要因が、私にあったのか?って言うか、マメな人だからなぁ・・何かを思い出しながら、ニマニマ歩きをしてるのがちょっと不気味でもある。

いつもより、ほんの少し遅い程度の時間で帰宅した美佳は、部屋着に身支度を替え夕飯の支度に取り掛っている母親の隣に「手伝います」と声をかけて立った。 

最近はこのパターンである、帰宅部であった時なら夕飯の支度までの時間が、勉強に当てられていたからだ。今は勉強時間を夕食後か、もしくは就寝前に繰り上げた結果と言えよう。

学校においての生徒会支援ボランティアは、勉強を疎かにしないという約束の元で母親から許可が出ている。それでも美佳の学校での成績は、かなりの上位なので事さらには杞憂と言えるのだが、美佳に最近出来た他高の先輩?BF?「彼氏にしちゃえばいいのに・・親友から奪うのはまずいか」からの提案に乗ったものだ。

祐介曰く「支援活動で、学校則既定条項に従っての帰宅時間に準じると、人通りの少なくなった曖昧な時間帯に、同行者の無い単独の下校を強いられるそれを回避する為の措置」その辺の理由から、美佳は少し早めに帰って来ている。


祐介「この支援活動は、母親からの許可を対価交換で得る事で、支援活動と勉学に重責が増す。支援活動で得られる協調性に、優劣の深重も加わった価値観が得られる。」


そこで美佳母の解釈は祐介から見た美佳はまだまだ価値観が希薄だから、学校程度なんだけど人生経験をしなさいって事なのよね。そう簡単には人の厚みは作れないので、ついでに何とかしてくれればいいのに。その自分の娘を、何故か投げやりに扱う母だった。ここで手際よく夕食の段取りをこなしていた美佳母は、そこで手伝ってくれている美佳の事を気にすると、いつもと違う微妙な何か・・最近はこんな感じ?


美佳母「ああっ、そういえば・・」


今となっては当たり前な携帯、もちろん緊急連絡専門の通話とメールだけでOKの、めちゃ安物を持たせているのだが、常時気にかけているメールを待つ態度が最近は無くなった?少なくともお手伝いの時間や、食事の時にその素振りは見られない。

何か合ったのだろうか?つい思わず変な聞き方をした母である。


美佳母「美佳、最近友達が減ったの?」

美佳「ぐおっう!いきなり何?減るってよっぽどの事だからね。それがいじめの標的なら、もうつまはじきで全滅しちゃって孤立無援になってるよ。」

美佳母「な・・なんて言ったらいいのかしら・・ほら、メールとか減ってない?前みたいに携帯を見ているのを、見かけなくなったような気がしたのよ。」

美佳「ああ・・うん。それは無駄に見なくなったかも?大事な用件は電話をするから、直接に話さなきゃ伝わらない事がたくさんあるだろ?なんって言われて、会って話すからって・・せ、坂上先輩がね。それに友達メールで早とちりが合ったりもしたけど、意志の疎通はそこまでは無いからそこは仕方がないでしょ?それならよ~く話して解り合おうなんて、私の子供扱いが腹立たしいのよ。オレと話すのが嫌じゃないって事なら、会って話せばいいだろ・・なんてほんと腹立たしい」

美佳母「あら、会って話すのが嫌なの?」

美佳「い、嫌とかじゃなくて話しがあるからって呼ばれても、肝心な話は本当にほんのちょっとで次の機会でまいっかまであるわ。うっかりそうねって、納得しちゃう自分が悔しい。今週末の事だって」

美佳母「ああ、今週末はC・T・S セミナーの為の、なんとかって言ってたわね」

美佳「そうなの。でもね、こないだあいっ・・坂上先輩が京子姉さまに、セクハラ言を・・内容は全然たいした事じゃないのよ。でも、ちょっとした軽口だって嫉妬や焼き餅から、そこでの内容が拡大解釈されるのは良くあることじゃない?そんな蔑まされた、視線の中に居られても嫌・・かっこ悪い装いが余計に嫌」


この子私の娘なのに、なんか面倒な子・・取りあえず問題は無さそうなので、娘をスルーして夕飯の支度に集中した母であった。

夕食を終えて本業の勉強も一段落させた美佳は、何度か貰った癒されないメールの本日最終らしきものに目をやった。まさかこれで私の気分を爽快にした気になってるの?この写メ真っ黒なんですけど・・

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