第12話 

ここで祐介が先に概要を伝えていたので、ここは慌てずに下調べしてから叩き台を作って、そこから骨格への肉付け進行にする。次回への持ち越しはその位だな。

目標としているイベント開催日は12月25日、今年のカレンダーでは日曜日になっている。さすがに、クリスマスの予定はそこそこ立っているらしいが、クリスマスイブが土曜の24日なので、安くならないケーキを買い家族会になっているメンバー達である。


☆彡翌日の放課後      


祐介「おぅ、行くか?」と問えば京子は「うん。」そこは躊躇いもなく答える。何なんでしょうこの二人?そんな雰囲気になっちゃっていますが、現在は翌日の放課後!不定期出勤の京子は、今日も暇つぶしに課外クに遊びに行くことにした。そんな部活に・・


財前副会長「おまえ達は何をしている?」


この問いかけは間違っている、はっきり言ってこの部活は何もしてはいない。


*財前慧奈プロフィール (都立成敬中央高等高校の2年生 身長150センチ

体重は余り無い Bは皿型? Wは頑張れ  H はどの辺? 生徒会副会長である。そこは勿論の成績優秀であるからの副会長職だが。背丈のバランスからロングに見える髪型が、ゴスロリイメージにどんピシャだ。その普段の態度が尊大なのは、隠しきれないコンプレックスからなのだろう)


やっと大まかなメンバーが集合して終わったばかりで、これから何をするかの提案に至る所だったが、いつもながらわいわいきゃあきゃあが繰り返されていたので・・祐介は何?って感じだ。


祐介「何を?って、いきなり言われても今のこれからがスタートの体制だったのさ。それはもちろん先に生徒会に出した事案の、大まかな叩き台を作るための立案だな・・そんなとこかな。」


財前副会長の開口一番が不機嫌いっぱいなのは、祐介が生徒会に提出した課外クの今年最後の事案で、その場でひと悶着を起こした結果が今に招いたものだ。

財前は課外クのメンバーをそれなりに把握しているので、その場に見慣れない3人の女子へ目を配る。


祐介「あーそうそう。そちらの3人さんがボイン・・ボランティア部の人達だ。」

財前副会長「ボイ・・・」

京子「またか。ボイン部なんて存在しないって、何度言ったら解るの?まして財前副会長の機嫌を損なう話しだけ・・」

財前副会長「なっ・・」

祐介「待て!待つんだ京子。謝る、ほんと謝るからボインで気分を逆なでするのはちょっと待ってくれ。」

財前副会長「っ!だ・・誰の気分だ坂上!おまえは私にさらなる侮辱を強いる気か?」

祐介「してません!まったくそんな気なんか無いって。たまにはあるでしょ?ボタンの架け違えがそのまま気がついたら最後に脱いでるみたいな、誤解の集大成って奴が。」

財前副会長「ボボっ・・ボインを間違えて最後に脱がされるのか?」

祐介「ねえーよそんな間違え。オレのボインはどっち?とか言ったら死亡フラグが立つだろうが。ってか、無いボインの話しを引っ張り過ぎだよ。その反応も過剰だし動揺もひどい・・なんか滅多に見れないお前の感じが可愛いじゃん。そんなとこもあるんだね。」

京子「おおっと、財前副会長!ここは気をつけて。祐介が可愛いって言ったりする時は裏があるから十分に注意してね。」

財前副会長「う・・裏?そうなのか?うむ、十分に注意しよう。」

祐介「あれ?ないからね裏なんて。そこでの表も良くわかってないのに。とにかく今度のクリスマスイベントは、みんながそれぞれの思いがあって成し遂げたい物だから、生徒会は見守ってくれるだけでいいよ。もううちで遣ると決めた事だから、外れた路線を突っ走る覚悟はしたつもりだ。それにオレの遣りたい事だから、そこに口出しはさせねえ。」


さすがの強い口調に、ボランティア部の女子が普段と違う祐介に驚いていた。言われた財前副会長も、そこで歯噛みし硬直したままである。


京子「祐介の言ってるように、遣るのは間違いないわよ。でも、そのかけ違いだって祐介が自分で言ってたのに・・それを治す用事で来たのよ財前副会長さんは」


まーたやっちゃったかこれ。京子の言う通りに、課外クから出された事案の根源になった、そこでのボランティア部の動向と、顧問である三皮晴海先生から生徒会に、その懇願を推移させた結果が、現状では目標達成に掛る大きな影響の予算を、ここで補填しに来てくれた訳だ。

それは福来たる!そんな訳で誤解も何とか解けまして、予算の計算はそちらの方々がちゃちゃっとやってるので、ここでの暇人な財前副会長と祐介は無駄話しを始めた。


財前副会長「・・会長がな・・そう仰ってだ。だから私が予算の打ち合わせに来たのだ。」

祐介「そりゃあ嘘だな。」

財前副会長「なっ!?」

祐介「まーなんだ、ほらうちの生徒会ってのはけっこう優秀で、会長の独断なんてのは無いだろ?議題の根底をしっかり見分し、生徒会のみんなが良かれと思った結果が、貰える予算になった訳だから・・ありがとう財前副会長。ほかのみんなにも課外クが礼を言っていたと伝えてくれ。今回のクリスマスイベントは、オレの思惑が多分に占めているんでな」

財前副会長「ああ解った。それで思惑?それってどんな・・」

祐介「ああ・・みんなにはまだ話していないが、このイベントは4世代・・老人ホームの人達に、ひ孫みたいな園児達がショーを見せる。それをオレたち孫世代が構成するが、それが実は先生達子供世代の脚色って事になれば、老人達が受ける印象もまったく違うだろ?ひ孫や孫世代からの関わりはそれ程にはなかったはずだが、子供世代となら親子の因果は特別なんじゃないかな。ここでの目論見は親孝行にしたかった訳だ。良くある話しのクリスマス絡みをパクっているけど、定番は定石を踏んでこそ意味をなすからな」

財前副会長「・・親孝行・・」

祐介「ひ孫そして孫のリレーを見ていた子供世代に、そこで親孝行の気持ちと遭遇すれば、その感動もひと潮だろ。オレも親父が生きていたら・・バリバリ元気な親父を死んだ事にするとこだったぜ。ハハ」

京子「財前副会長、危なかったですねー。うっかりお涙にさせられそうでしたでしょ?そこは危険な裏があるって、言ったじゃないですか。」

財前副会長「はっ!嘘か、今のはみんな嘘だったのか?」

京子「みんなじゃないですけど・・お父さんが元気なのは間違いないですよ。それより・・今回の大まかの予算が出ましたよ。」

加奈「テレやな祐くんは最後に、どうしても笑いに落としたがるんですよね。いい話しそのままでいいじゃないですか?」


祐介「そんないい話しって訳じゃないさ。これから遣ろうとしている事は、こっちの勝手な思い込みの押し付だ。頼まれてもいないのに・・園児達の演舞で喜んでくれるのを期待し、オレ達はそれを成功させる事で自己満足をする。先生方は園児達の演舞に癒されひ弱な生徒のオレ達の成長に微笑み、そして老人達の喜ぶ顔に安堵する。それだけで十分だと思っていたんだがな・・」

京子「それで十分だと思うけど?」

財前副会長「・・何が不満なんだ。」

祐介「別に不満なん・・やはり不満なんだろうな。みんなが遣ってくれる事が真摯な気持ちとしてじんわりと伝わるとは思うけど、そこでのインパクトがちょっと薄いかなーって思ってさ。子から親に向ける親孝行ってのは、言葉にしなくても強力無比な自己満足が残るだろ?どうせなら子供世代にも思い出して貰って、その先も忘れないでほしいと、オレのエゴを押し付けるか。」

京子「そんなエゴでも何でもいいんじゃないの?それに変わるのは、祐介の満足度の大きさだけなんだから。これに付ける点数は、私たちの努力次第って事でいいんだよね?」

祐介「・・いつもスマン。」

京子「じゃあそんなとこで、みんなも宜しくね。財前副会長さんも、25日はお願いします。」

財前副会長「うむ。・・ン・・ん?えっ?何をお願いされたんだ私は?」

加奈「はい。25日はご一緒に汗を流しましょう。・・サイズは美佳さんと同程度と確認しましたです。」

財前副会長「・・一緒って・・サイズって・・なんのサイズだ?」

祐介「あーはいはい、さすがは財前副会長だな。タイトなスケジュールの中を調整して、顔を出してくれるとは有り難い。当日のエスコート用に着るミニスカサンタの衣装は、ちゃんとこちらで用意して置きます。レンタル出来ないホワイトソックスとか、ちょっとした備品は後でお知らせしますね。ミニスカ用の下着も用意するのが難しいようでしたら、サイズを言ってくれればオレが準備しますよ。」

財前副会長「おまえの準備なんて信じられるか!想像するだけでも怖いわ。・・って言うか、ほんとにそんなの着なきゃいけないの?」

祐介「当然だな。もはや来るの前提で着る物の心配をしてる訳だから、それならみんなが着る衣装に揃えるのが基本だからな。」


そこで特別な衣装を着る・・そんな状況に動揺し来れるか来れないかの心配を、すっかり忘れてしまった。そんな自分を反省している財前副会長であった。

そこで記憶をたどれば、終業式の23日以降に特別な予定はない。もし突然の予定が増えても、24日の家族クリスマス程度だろうと思考を整理した。そー言えば・・いつもほんとに静かな部長に目をやる。


祐介「取りあえず、出席人数の把握だな。イベントの飲食費は、最初に予算取りしときたいからな。参加者は課外クに、非常勤要員の・・」

財前副会長「あーそー言えば、一つ聞きたい事があったな。課外クの部員として川崎京子さんを登録したさいに、登録日がかなり遡っていたのは何故なんだ。提出日前後で良かったのではないのか?」

祐介「・・ほほぅ。割と細かいチェックをしていらしゃるね。」

財前副会長「・・細かいと言うより、そこは重大な部分だぞ。他にあった事で部の備品が紛失したさいに、部に出入りしていた人員の把握がいい加減になっていたせいで、起きなくても良い事が発生して事件となったりしたからな。」

祐介「あーそんな事が・・うちの事情としては、以前の活動の実績かな。オレも中途だけどそれ以降にした活動に、京子は多大な貢献があったからな。他校性の有馬美佳に関しては非常勤要員としているが、そこでの最大の理由は常勤出来ない事。最大じゃない理由が出動願うと、毎回申請書を書くのは手間なので手続きが省けるだ。」

財前副会長「・・ふむ。なら川崎京子さんは、今は常勤なんだな。」

祐介「常勤と言うか課外クの活動が毎日って訳じゃないので、出勤頻度はみんな自由なんだけどね。京こ、川崎さんにも承諾を得たんだが、学校や部外者から評価されない課外クの活動実績だが、オレ・・そうオレ個人の気持ちで貢献度に感謝しているし、一緒に築いて来た何かの証みたいなもんかな?本人に得る物は少ないけどな。」

京子「ちゃんと身になってる・・よ。損得だけじゃ測れない物もみんなとの共有も、それなりにしてるから・・入部の日付の件は祐介に任したの。非常勤じゃないのは自分の学校の部活に、非常勤とかその設定はやばいでしょ?」

財前副会長「・・まあ、それはそうだな。自高の部活に非常勤は、生徒会としても困るな。貢献度か・・それに実績云々も解らないでもないし、存在が仮入部扱いで収まらなかったと言うのなら、それも仕方の無い事だな。」

祐介「あー仮入部って手もあったのね」

財前副会長「・・気づかなかったのか」

祐介「とにかく入部の日付は、メンバーみんなから了解を得て出したものだ。・・ん?オレのって書いた記憶も、出した記憶も無いんだけど・・」

加奈「はい。祐くんを絶対に逃がさないって決めていたので、即行で私が出しました。必要なとこは偽造して・・がんじがらめです。私の入部も部長の偽装工作無くして、実現は無理でしたから。」


すごいなここ、ヤバい人の巣窟だな。みんなは思うのだった。


祐介「ほんとびっくりた。どうする財ちゃん!」

財前副会長「誰が財ちゃんか!せ、せめて慧奈さんだろ。」

祐介「いや、そんな難しい字は書けないし」

財前副会長「か、書けないって書く状況も無いじゃないか?なんの偽造をする気だ。」

祐介「あーそうだよね。催事の受理書の押印とかの業務を、財前副会長が処理していても明記名は会長だもんな。オレが書く必要性とがあるのは?財ちゃんへのラブレターくらいか。」

財前副会長「っ!、ふん、そんなの読む前に燃やすわ。もしくは見せしめの為にその手紙の複写を、校内掲示板で晒しまくって上げる。私に背くこと・・私を貶めること・・弄んだ報いを思い知らして上げる。」

京子「ええっと、財前副会長!キャラがぶれて尊大上から目線女子が、ツンキャラになってますけど?それに原書の行方が気になりますが、まずは気を確かに持って下さいね。」


財前副会長はふぅーふぅーふぅーふぅと、深呼吸をしまくってます。

ここで予算の申請書をお渡ししまして、財前副会長にはここら辺でお引き取り願い祐介の胡散臭さを知って貰たままが一番の得策、これ以上2人が仲良く会話が続いたらいい事ないからと、帰る扉の方に誘導する京子であった。それではと立ち去る寸前に祐介が・・


祐介「ん?・・慧奈!悪いがそれ頼むな。」

財前副会長「・・はい。」


お・ま・え・は!京子は祐介を睨みながら、財前副会長が陥落してそうでびびるのであった。

課外クの部室を後にした財前慧奈は、自分の素を出してしまった事に動揺したり、名前を呼び捨てにされた事に、素直に肯いた理由も解らずふらふらとしながら生徒会室へと向かっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る