第44話 「えいよう。友達やんか」

 そんな時であった。

高校の同期の大久保より急な電話があった。

「大阪の現場で、人が足りなくなってしもうて・・。

 補充が出来へんで困ってるんや。

 助けてくれへんか」

大久保は、現在、大阪でリフォーム会社の社長をしている。

高校時代、広志と2人で、アンテナ工事のアルバイトを

していた。

高所での作業で、2人は苦労した。

暑い日も、寒い日も共に苦労した仲間であった。


 大阪市内のビル屋上の防水工事である。

「1日だけでええんや。頼むわあ。この通りや」

電話の向こうで大久保が、頭を下げているのが見えた。


 彼は、広志が仕事をしていることも

剣道に励んでいることも知らない。

もう3年くらい電話もご無沙汰していた。


 一瞬断れ!言う声が聞こえたが

言ってしまった・・・。

「えいよう。・・ほんでそれ、いつやねん」

広志は、大阪市の福島区生まれであった。

小学5年生の秋まで大阪で暮らした。

つい、大阪弁が出た。

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