第43話  形式主義

  次の稽古日、中川さんが寄ってきて

「益田さん、試験頑張りまいよ。1級はのう

 絶対通るき、心配しなよ。

 えい面打ちよる。心配ないわ」

「・・・・・・」


 両方の形が、混乱している・・・。

もっと稽古をしなければ・・。


 石丸先生も、痛む膝をかばいながら

必死に教えてくださるが

どうもうまく動けない。

気持ちに余裕がなくなっている。


 実際の立会い二人というのは

全く不安がなかった。

いつも通り打ち込むだけである。

面打ち1本 それだけである。

無駄打ちせぬよう、初太刀を大事にして

腕と肩の力を抜く。リラックス!

残心をきちんと!


 問題は、形、形である。

当然であるが、動きが決められているため

いわば、マニュアル通り動けないと

失敗につながる。

本能で動いてはいけないのだ。


 広志の最も苦手とする領域である・・・。





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