百日紅

重そうに枝を撓らせて桃色のぼんぼりが揺れる


何も好き好んで窮屈に寄らなくても良さそうなものなのに、その小さな花は疎らに咲くことを選ばなかった

枝の一番先を競っているのか

独りで居ることが心許ないのか

大勢で寄り集まってしなやかに風に揺れる


それは約束の花

あの日降る花の下で

私をその腕に抱いて

必ず帰るとあなたは誓った



けれど、


功に囚われたか

都の人波に魅入られたか

約束は果たされない



たわわに咲いたひとひらが風に舞い

私の肩に落ちかかる



ねえ、あなた

あの日見上げた花を憶えている?

芳しい香りは忘れてしまった?


年毎に咲く花は少しも変わらないのに

どうしてかしら



吹く風に花びらが舞う

美しい桃色

約束の花


けれど

何をよすがに待てばよかったのか

いつまで待てばよかったのか



はらはらと桃色が落ちる

小さな花が地を飾る


あなたも落ちてくればいい

私のところへ


どうか──




桃色のぼんぼりが風に揺れる

吹かれて落ちてゆく


それは裏切りの花

落ちた花弁は



もう戻らない

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