ソメイヨシノは嫌い

だってあれは、歪な花だから



そう言ってあなたは花見に来なかった


実を結ばない花を歪だと切り捨てた



きっと私の想いもそうやって捨てられるのだろう

束の間目を留めることさえないのだろう


叶わないと知っているのに

ふとした弾みに花は咲く

愛でられることのない花は

それでも枝を埋めてゆく




賑やかな宴の席で

はらはらと淡い欠片が舞う


私は酔ったふりで桜を見上げた


真っ暗な空を背に咲く花は

昼間のそれより妖しく見えて……


私の口元に笑みが浮かぶ

瞳が潤むのは酒が過ぎた所為

洟を啜るのは御多聞に漏れぬ花粉症


胸が痛むのは、

きっと、気の所為





舞った花びらが盃に落ちたと歓声が上がった

見れば

皆の髪の毛に、肩に、膝に、

可憐なひとひらが落ちかかっている




ああ


あなたが此処に居れば



そうすれば


この想いもあなたの肩にそっと落ちることが出来たのに




はらはらと零れる涙みたいに

薄紅が舞い散る

吹く風に流されてゆく





ひらひらといつまでも



あなたを探している

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