第186話 詰寄

中央自動車道



ブラックホークから投下された4発のC3爆弾



高架橋を行進する奴等の群れの中へと落下した。



「ザザ こちらUHマルフタ コンポジション3投下完了 起爆スタンバイオーケーです ザザ」



「ザァ  ブラックホーク03 こちらもC3投下成功 これより本機一時離れます ザザ」



「ジィーザザ こちらUH01 こちらも無事投下完了 コマンドポストへ起爆指示願います ザザ」



「ザザ こちらUHマルヨン 4発全て各ポイントへの投下完了 ザァア」



「ザザ コマンドポストよりUH各機へ 20秒後に起爆 各機 離脱せよ ザザ」



「ザァア UHマルヨン了解 ザザ」



「ザザ UH01了解 ザァ」



「ザァザ ブラックホーク03了解 ザ」



「ジジィ UHマルフタ了解 離脱する ザァ」



橋の上空でホバリングする4機のブラックホークが高架橋を離れ安全空域へと移動を開始した。



「ザァ 起爆10秒前……8、7、6、5、4…」



「ザザ 防壁の隊員各位へ…念の為…衝撃波に備えろ…ザザ」



「…3…2…1 C3点火はじめ ザザ」



起爆スイッチが押され、4発のC3爆弾が爆発を起こした。



爆発音が響き



4つの爆心からドーム状に爆炎と衝撃波を振りまき、行進するゾンビ諸共橋が破壊された。



衝撃波で揺れるブラックホーク



機内が激しく揺さぶられ、しがみつく乗組員



「ザザ 爆破成功…橋…崩れ落ちます…ザァ」



そして橋は崩れ落ち、瓦礫と煙りと奴等が奈落へと降り注いでいった。



「ザザ こちらUHマルフタよりコマンドポストへ 橋の破壊成功… ルートの分断成功、奴等 後続の侵攻阻止成功しました ザザ」



「ザザ コマンドポスト了解 ブラックホーク各機へ これより3つの部隊が地上へ降下する 速やかに地上班の航空援護、後方からの掃討作戦へと移行しろ ザザ」



「ザァ 了解 ブラックホーク各機 これより援護と掃討に移ります ザザ」



「ザザ コマンドポストより地上ユニットへ 各タスクフォース作戦開始 ザザ 」



ーーーーーーーーーーーーーーーー



粉塵舞う高速道



混濁した煙りが波の様に押し寄せ、瞬く間に防壁を覆い尽くした。



不十分な視界の中



出動の合図と同時に地上部隊が動き始めた。



林「ゴーゴーゴーゴーゴー 急げ急げ」



腕を回し、せきたてる林分隊長



隊員等が次々ロープを伝い降下して行く



立川「もたもたするな…どんどん行けぇ」



悪化した視界に鉄帽に掛けられたゴーグルを装着する立川分隊長



3本のロープから続々と懸垂降下する隊員達を目にしながら山口が小銃を身構えている。



目を凝らし、粉塵に紛れる微かな人の影を捉えるや



タン タタタタタタタ



山口が発砲した。



バシュ~~



ドドドドドドド パパパパパ  タタタ



行進を分断したとはいえ地上にはまだ、うんざりする程の奴等の集団がいる



降下のタイミングを襲って来る奴等を迎撃する山口と上で待機する隊員達が一斉に射撃へと転じていた。



タタタタタタタ ドドドドドドド 



「中MAT 11発目 しゃ~」



「中MAT次弾装填 13発目 よーい はっしゃ~」



バシュ~ タタタタ バシュ~ ドドドド



小銃、軽機関銃、タンクバスター、01式グレネード弾、手榴弾で応戦する。



ドカァー  ドカァー タタタタタ



複数の爆発音が鳴り響き



ドドドドドドド バシュー



更なる爆発で更に濃霧化した地上



タタタタタタタ ドカァー



硝煙と粉塵の世界が隊員達を完全に包み込んだ



ドドドドドド



山口へと近寄る林から



林分隊長「全員降下完了しました。」



山口「よし 俺等も行くぞ」



山口は頷きゴーグルを装着するや



右手を挙げながら



山口「撃ち方 止めぇ 一旦止めさせろ」



「撃ち方止めぇ~ 撃ち方止めろぉ~」



撃ち方中止の伝令にまわる隊員



発砲が急速に鳴り止んで行った。



そして、最後に残った分隊長3人がロープを使い降下を始めた。



既に陣形を組んで待機する隊員等



降下した山口が自班をアサルトライフルを構えながらゆっくり先頭へと歩み始めた。



降下した林、立川も同じ歩調で先頭へと歩む



多量の粉塵に覆い尽くされた道を、瞬く間に静寂するこの不気味なまでの静けさを3人の分隊長達が各班の先頭まで移動した。



片膝を付き、前方へ小銃を構える先頭前へ到着した隊長等



聞き耳をたて、前方へと目を凝らした。



遠くからブラックホークのプロペラ音が聞こえる。



緊張感と恐怖ゲージが鰻登りに上昇し、誰しも言葉を発する者はいなかった。



肉眼で5~6メートル先しか見えない不鮮明な視界



35名 全ての隊員達が無言で前方へと警戒した。



徐々にではあるが次第に薄まって行く粉塵



この悪化した視界を…前進するのは得策では無い…



同士撃ちの誤射を避けるべく…



言わずとも誰しもが待機し、全員がこの粉塵が晴れるのを待った。



その間、小銃のスコープを覗き調整する隊員



マガジンを抜き、弾薬を確認する隊員



山口はゴーグルに付着した粉塵を手で拭き、林へと目を配った。



粉塵にまみれた現状、林も同様にゴーグルを払拭している。



数十メートル先で飛行するブラックホークの羽音が聞こえる程、静まり返る中



羽音と共に、山口の耳にうめき声が聞こえて来た。



近付いて来た声…



1人、2人じゃない…



合唱するかの様な多数の声音だ



音吐朗々とはかけ離れた、醜く濁った低い声音が山口の耳へと入って来た。



まだ十分に視界が確保されぬまま



こっちの都合などお構いなしに奴等が接近して来る。



そしてそれを耳にした山口が一声を発した。



山口「来たぞ まだ視界が安定してない 各個 接近戦での同士撃ちには気を付けろ 自由射撃撃ち方よーい」



35名全てが小銃を身構え



霧状の煙りの先から聞こえて来る奴等へと照準を定めた。



「おで…む…せ…せがれが来年受験で…学資保険の給付金…」



「うぅうううう…」



「今ドき…ポケベ…ル持ってで…な にが ワルいノヨ…」



「うちの…がわいい…ビティーぢゃん…この子が いでば オトコイラナイ…」



「あぁあああああ」



支離滅裂な喚き声が近づき



声のみが粉塵の先から近付いて来る。



マックスまで達した緊張感に隊員等が息を呑んだ。



山口もスコープを覗き、林、立川も身構え、引き金に指を添えた。



「オダこんなむらぁ~やだぁ~ オラこんな村ぁ~やだぁ~ 東京へぇ~出るだぁ~」



すぐそこまで聞こえて来る歌声



狙いを定める山口の脳裏に



幾三って……古ぅ…



そうよぎった時



粉塵の中から一体が姿を現し、飛び出して来た。



そいつはブレザー姿の高校生らしき感染者



「はぁ~あ~ テレビもねぇ~」



タン



山口が引き金を引き、高校生感染者の額が撃ち抜かれた。



そして連なり、次々粉塵から奴等の群れが現れた。



そして山口の銃撃を皮切りに一斉射撃が行われた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る