第150話 前夜

空のビール瓶やリキュール瓶、空いた焼酎のペットボトルがシンクに置かれ、蛇口から水滴がポタポタと垂れ落ちている。



snack bar stylish 2日目



午前 8時44分



点けっぱなしの液晶テレビ



「…続いての速報です 政府の緊急災害特別対策本部から続報が入りました 現在…未知の病原体は東京、大阪、博多、函館などの都市部から地方へと爆発的に拡散、全国へ波及されたとの情報です。付近で感染した方を発見しましたら至急こちら対策本部までお電話下さい、お電話番号は03ー0000ー0000です。発見次第すぐにこちらまでお電話頂けるよう皆様ご協力下さい、また国民の皆様は外出控えの徹底、外部の人間との接触を止めるよう徹底のご協力をお願い致します。また対策措置として自衛官、警察官の呼びかけに応じない場合、感染者と見なされ射殺される恐れがありますので呼び掛けには迅速かつ十分な返答をする様心掛けて下さい


続きまして関連のニュースです。現在、新宿、渋谷に各2万人動員された陸上自衛隊、警察による激しい銃撃戦が行われております。また、名古屋市、鹿児島市、水戸市、さいたま市、横浜市、福井市、仙台市などの主要都市でも陸上自衛隊、航空自衛隊による激しい戦闘が行われております。くれぐれもご注意いただき、冷静な対処と冷静な行動をお願い致します。続いては…キャャヤァー…わぁああ、なんだぁおまえは~今放送中だぞ…誰かこいつを…ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」



突然のキャスターの悲鳴と共に正面1カメが倒れ、床に落ち横になるカメラが逃げ惑うスタッフの叫び声や逃げ惑う足元を映し出し、放送された。



「キャアワアアア」



「グゥワ イテテテ 噛むなぁ崎守」



「おい 佐志葉と何人かのAD呼んで来い 村田のPさんにも至急連絡入れとけ つ~か すぐに放送を切れ 流れてんぞ」



「ぎぁああぁあああ~」



その数秒後に



10チャンネルも放送が途絶え画面がブラックへと変化した。



静まり返える店内



店のソファーで寝ているスタイルの目が覚め、ムクッと身体を起き上がらせた。



髪を掻き上げ、気だるそうにトイレへと向かうスタイル



カウンターに置かれた携帯を手にとり、開くや1通のlineが入ってる事に気が付いた。



相手は風間からだ



スタイルは立ち小便で済ませながらlineを既読する。



大田区平和島の物流センターにある食品保管庫をこれから奪取しに行ってきます(^o^)



ここ確保すれば当面は食糧に困らなくて済みますから…風間



へぇー そう言った表情を浮かべスタイルが便器の水を流した。



そして何気なく格子に覆われた小窓を開き、網戸へとスライドさせようとした時だ



突如 顔がぬぅーっと現れ腕が飛び込んできた。



スタイル「きゃああ」



吃驚して慌てて後退するスタイル



格子の間から焼け爛れた気味の悪い腕が伸びてきた。



スタイルの目にはハンチングの帽子が映る



そう…すぐ外にいるのは



あのハンチングだ



ハンチングと目を合わせたスタイル



プレデター(捕食者)の標的をロックオンした時の目、生気を欠いた死人の様な目



それらが絶妙に融合された何とも言えない不気味な目をするハンチング



伸ばされた腕がもがいている。



スタイル「ひ…ひぃぃ」



スタイルはすぐにトイレを飛び出し勢い良く扉を閉めた。



スタイル「ハァハァ」



心臓が速く、不規則に脈打った。



何よあいつ… 一晩中外をウロウロしてた訳…



一晩中諦めずに…



スタイルの不安が掻き立てられた。



3日目



日に日に悪化する状況



10時50分 12チャンネル、1チャンネル、有料チャンネルも放送が途絶え、ラジオも2~3局のみとなった。



12時15分 新宿、渋谷、横浜、名古屋などの都市部から完全に銃声が鳴り止んだ



静寂する街



むろん制圧に成功した訳では無い…



同時刻 日本中の研究施設が次々と音信不通に陥った。



14時26分 アメリカ軍の大半の兵士が逃げるように自国への帰還を開始



事実上アメリカ軍の日本国撤退が成される。



逃げ遅れ、自らの意志、そのわずかなアメリカ人兵士を残し、アメリカは撤退した。



15時21分 政治の中枢も奴等に襲われ、首相官邸も奴等がさまよっている…



首相の生死がつかない…



多くの大臣も消息不明に…



4日目



02時05分 陸海空の自衛隊指揮系統が消失



基地や駐屯地が次々と奴等に襲われ占領されて行く…



猛威を前に尽く呑み込まれ、手も足も出ない自衛隊は壊滅的打撃を被った。



03時12分 警察組織も空中分解を起こし



交番、警察署も次々と奴等に襲われた。



加速する滅亡



5日目



5日目にして全国で推定6000万の死者、行方不明者が出た。



あらゆる街の道路、公共施設には見渡す限り奴等の姿が…



奴等は駅のプラットホームを悠然と闊歩しデパートを堂々とさまよい続けている。



まさに死者の世界



残された生者の真のサバイバルが始まった。



6日目



無法地帯と化した国



狂った者や凶暴な暴徒などが現れ、台頭し始める。



醜い食糧の奪い合い、略奪、殺しなどが横行



弱肉強食なリアル北斗の拳の世界がこの平和な国日本に訪れた。



そして6日目の夜



lineに目を通す2人



暴徒化した連中に襲われ15人もの人が死にました…もうこの世は地獄そのものです(T-T)…風間



由美「暴徒?これって奴等の事かな…?」



暴徒や奴等の襲撃に備え頑丈なバリケード建設完了 これで安全な場所と食糧は確保されました…風間



スタイル「暴徒って人間の事みたいだよ」



由美「本当だ」



明日の朝8時に仲間と共に迎えに行きます



ママ 待ってて下さい…風間



由美「8時ね やっとここから出れるのね」



スタイル「あら…ここがお気に召さないのかしら?」



由美「そんな事ないけど いつまでもじゃ息がつまっちゃうもの」



笑みを浮かべるスタイル



スタイル「フッ それもそうね よし由美 じゃあ明日は神谷町へと出発よ」

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