第133話 決断

淳がキーホルダーからぶら下がるスマートキーを横へ揺らしながら皆に示した。



茜「学校を出る?」



淳「あぁ」



茜「それで車を使って移動するの?」



淳は担任のタバコをクスね、私物のZippoライターで火を点けるや紫煙をくゆらせる。



淳「あぁ そうゆう事」



秀平も自分の煙草に百円ライターで火を点け煙りを吐き出した。



茜「秀平って免許持ってたっけ?」



秀平「ねぇーよ」



茜「淳もまだ仮免だよね?」



淳「あぁ そうだよ」



茜「じゃあ無免許じゃない 誰が車運転すんのよ?私だってまだ通い始めたばっかで第1段階…」



淳「こんな時にお巡りが取り締まりなんかするかよ 俺が運転する」



学校を出る…?



淳の言葉に



由美と結香は顔を見合わせた。



淳「富田の車はなんだったっけ?」



秀平「え~と 確かトヨタの…アルファード いや!ちげぇーな ノア!? 違う…あれ?ヴォクシー…か…?ヴェルファイヤだったかな…ちゃうな…あ~忘れたわ」



淳「まぁ何だっていい とりあえずそいつを使う 先公用の駐車場は学校から2本奥の離れにある 遠くじゃないが今の状況からして…近くもない」



淳は小窓へと近づき外を眺めながら煙草の灰を捨てた。



淳「丁度このグランドを真っ直ぐに突っ切って…あの正面に見える民家の裏っ側辺りになるな」



煙りを吸い込み、煙草の口火が真っ赤に燃える。



フゥー 淳が煙りを外に吐き出すや



皆も小窓へと集まり外を眺めた。



淳「見てみろ グランドにはあんなにいた奴等も…今じゃ1… 2、3…4体しかいない 行くなら今がチャンスだ」



由美「このグランドを突っ切るんですか?」



秀平「これが最短ルートでしょ 正門からじゃグルっと大回りしないと行けねぇし」



茜「でも… まだ4体はいるんですけど」



淳「あぁ あれをダッシュで突っ走るしかないな」



結香「距離はどれくらいですかね?」



淳「分からねぇが700~1000って所じゃねぇ」



結香「そうですか… 割とありますよね」



淳「奴等は何処へ行ったか知らねぇが 今が手薄な絶好の時だろ 行動するならこの手薄な今しかない 俺と秀平はここを出るが脱出に乗る奴いるか?」



淳、秀平から学校脱出計画が持ちかけられた。



早苗、響子、守、宗一郎は互いに顔を見合わせ、由美と結香も目を合わせる。



淳は吸い殻を外へと投げ捨てた。



淳「奴等がまた校庭に戻って来るとも限らない すぐにでも出発してぇーからソッコーで決めろ」



校庭中心部に1体… 離れた場所に2体… 小さい門の入口付近に1体……か…



秀平は外を眺めながら奴等を観察した。



淳「茜はもち俺等と来るだろ?」



茜「え?…あ……う…うん」



淳「他に来る奴は?」



由美と結香は目を合わせ小さく頷くや2人同時に手を挙げた。



由美「行きます」



結香「私達も連れてって下さい」



淳は頷き「1年組はどうする?来るか?」



早苗「私…足遅いしあんなに走れないよ…」



守「どうする?」



宗一郎は響子と早苗に目を向け



宗一郎「おまえ等どうする?」



響子「う~~ん…」



躊躇いが生じ、決めかねている4人



宗一郎「内藤先輩 もうちょっと様子見てからって訳にはいかないすか?」



淳「駄目だ 戻って来られたら厄介だ すぐに行く 早く決めろ」



その時だ



ピロローン ピロローン



メール着信音が鳴り



由美の携帯に一通のメールが届いた。



由美はすぐに確認するや大きく目を見開いた。



メールの相手は…由美の弟からだ



すぐにメールを開いた。



姉ちゃん無事? すぐに返信して



俺は無事 今実家で母ちゃんと一緒にいる



父ちゃんも無事 今クルマでこっちへ向かってるとの事



由美はメールを読み、家族の無事にひとまずホッとさせた。



結香「どしたの?」



由美「弟からメールが来て 皆無事だって 結香はまだ…?」



結香「うん…まだ来ない…」



悲しげな結香の横顔を目にする由美



淳が洋包丁の血を拭いながら



淳「どうすんだ?置いてくぞ」



響子「あの 私達はここに残ります」



頷く早苗



茜「なんで?」



響子「ここは今 安全が確保されてますので 動かないのが賢明かと思いまして だから私と早苗たんはここに残ろうと思います」



茜「でも… 直に囲まれる危険性だってあるよ…外に出れなくなるかもよ」



響子「今出ても危険な可能性だってあります」



茜「いや でも今なら…」



淳「茜 もういい 自己判断だ おまえらは?」



考え中の守と宗一郎も決断を下した。



守「先輩 あの… 俺等も響子達と残ります」



茜「え?なんで?」



宗一郎「こいつら2人だけ残しておけないんで」



茜「嘘でしょ…」



すると 外を観察する秀平が慌てて駆け寄って来た。



秀平「やべぇー 1体増えやがった もう増える前に早く行くべ」



淳は立てかけられたマイクスタンドを掴み、秀平へと投げ渡した。



それをキャッチする秀平



淳「よし すぐに行くぞ」



由美は振り返り、残る1年生組を目にした。



茜「あなた達…気をつけてね…」



響子「先輩達こそ…気をつけて下さい」



会釈する守、宗一郎、早苗




3年C組 内藤 淳



3年C組 加賀見 秀平



3年C組 持田 茜 



2年A組 冴木 由美



2年A組 松浦 結香



淳を筆頭に由美等の脱出が始まる。

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