第130話 中継
再来する水を打った更衣室
誰もが緘口(かんこう)し衝撃的内容の連続に言葉を失っていた。
早苗がキャッチャーマスクを外し、ふとグランドへ目を向けると
校庭をさまよう感染者達が突如として門から外へと飛び出していた。
早苗「外見て 感染者達が何処かへ行くよ」
勢い良く走って門から出て行く集団
宗一郎「どうしたんだ?」
響子「きっと獲物を見つけたんだよ」
その数秒後に
きゃゃああああああー
女性の悲鳴が聞こえ…
その声が更衣室まで響いて来た。
また何処かで新たな犠牲者が生まれ、由美達9名の不安や恐怖のポイントゲージが加算されていく。
守は「悪夢だ…」
茜「ねえ響子 率直に答えて…これからどうなっちゃうの?」
外を眺めながら間を置いた響子が茜へ振り向き口を開いた。
響子「持田先輩…言いたくは無いですが…もう手遅れだと思います」
秀平「手遅れ?自衛隊とか警察が何とかしてくんないの?」
響子「もっと早く隔離などの措置をするべきだったんです…発見次第すぐに 初動も対応も全てが遅過ぎます…」
茜「もうこれは食い止められないの…?」
響子「えぇ… 残念ですがこうなってしまってはもう街に核でも落とさない限り広がりを食い止めるのは無理だと思います」
茜「そんな…」
守の携帯からlineの着信音が鳴り、画面を開くと
守「まじかよ…」
青ざめた守
宗一郎「どした?」
守「屋上の扉が破られたらしい…奴等が入って来たって…もう終わった…だってよ…」
早苗も携帯を見ながら「新宿、渋谷で大パニックだって 死傷者およそ550名以上 暴徒化した民衆による大暴動発生だってさ」
茫然自失する、淳、秀平、茜、宗一郎、早苗、守の7名
もう…それを聞いて特に驚く者もおらず
まぁ そうなってもおかしくないだろう的な反応を示した。
それを聞いて…もう大袈裟なリアクションをする者は誰もいない…
頭を抱え込む守
肩を落とし床へ座りむ秀平
茜も両手で顔を覆い
茜「お父さん、お母さんは大丈夫かな…?」
絶望が更衣室を包み込んだ
沈黙する皆を目にし、由美と結香がロッカーへと向かった。
2人は自分のロッカーを開き、まず携帯を取り出した。
由美はすぐに実家へと電話をするが…
ツーツーツー
繋がらない…
今度は父親の携帯へと通話を試みるが…
只今回線が混み合ってる為、繋がりません…
女性アナウンスの声が繰り返し流されるだけでやはり繋がらない…
通話不能になっている携帯電話
由美は次に弟へとチャレンジしてみるが…
由美「駄目だ…」
結香「駄目 私のも繋がらないよ…」
由美「大丈夫かな…?」
家族の安否が気になる由美は途方に暮れていると あるlineの着信表示に目を止めた。
それはスタイル姉さんからだ
由美はすぐに既読した。
まじヤバい 人が突然狂って人を襲い出してるみたい…この街もヤバいかも…緊急速報で絶対外には出るなだってさ 由美!気をつけて
こう書かれた内容文を読んだ由美
由美はすかさずスタイルへと通話を試してみるが…
ツーツーツー
やっぱり繋がらなかった
父親、母親、弟は無事なのか…?
姉さんも無事なのか…?
もしかしたら既に…
最悪な想像が頭をよぎり、それが気がかりでイテも立ってもいられない由美の横で着替えを始めた結香
着替えなんかして暢気なもんね…
結香を見ながらそう思った矢先に
結香「ほら 由美もちゃちゃっと早く制服に着替えちゃいなよ いつまでも体操着なんかじゃ恥ずかしいでしょ」
由美「う…うん」
2人はそそくさと制服へ着替え始めた。
由美「親も弟も心配…」
結香「私だって…」
体操服を丸めてロッカーへ放り投げた結香が着替えを終えた。
いつもダラダラと着替えが遅く、待たされる筈の結香がテキパキと着替えを終えた事に由美は驚かされながらロッカーに備え付けられた鏡を見てブラウスに赤いリボンを結んだ
その間に結香は携帯でTV機能を起動させた。
画面には再放送のドラマが映されその上にはテロップで
渋谷、新宿で暴徒化した民衆によって死傷者多数の文字
結香がすぐにチャンネルを変えるや、ニュース番組が放送されていた。
女性キャスター「…からは緊急放送に変更致します 現在新宿、渋谷で暴動が起こってます 報道ヘリによる現場上空から生中継をお送りしたいと思います 中継の森下さぁーん」
髪をなびかせた女性リポーターの画面へと切り替わった。
「リポーターの森下です 私は今渋谷駅付近の上空にいます 街は大変混乱しています 建物から出火が多数見られ、道路にも炎上した車が多数見られます 他にも横転した救急車も見られます 人々が逃げ惑う姿、それを追いかける暴徒化した人々なども多数見えます この様子から非常に危険な状態がうかがえます」
ズームアップされたカメラの映像に突如!車が建物へと突っ込んだ
リポーター「あ 今…車が建物へと衝突しました… 激しい炎があがりました… あ あれを見て下さい 今、停止したタクシーに…人が群がってます… あ 運転手の人が外へ引きずり出されてます… あ きゃあ~ あれ…何して…?」
ズームされたカメラに無数の感染者達がタクシードライバーの肉を貪り食べる光景がリアルに流された。
リポーター「ちょ… ちょっと何なんでしょうかこれ… あ あっちでは2人の警察官が襲われています…」
すると
またしてもバランスを崩した車が何人かの人間を巻き込み豪快に横転して放置車両に激突した。
ニュースキャスター「森下さん 森下さん 機動隊による鎮圧などはどうなってるんでしょうか?」
リポーター「機動隊の姿は何処にも見当たりません…見えるのは逃げる人とそれを追いかける人のみです…もう…街中…至る所で目を背けたくなる様な光景が繰り広げられています…」
ニュースキャスター「分かりました 一旦 コマーシャルに入ります」
唖然とする2人
結香はすぐにチャンネルを変えると
今度は記者会見らしき映像を目にした。
厚生労働大臣と国家公安委員会委員長の2人がいくつものシャッター音や光に照らされ緊急合同記者会見が開かれている映像だ
厚労大臣「…は現在調査中です。また未知の伝染病を視野に入れ速やかに原因究明へあたると共に迅速な対応、処置を検討する所存であります。」
記者「あれは人間なんですか?」
厚労大臣「まだ分かっておりません…反社会的な行動と人格変化が見られ、これらの原因も現在調査中です」
由美と結香が携帯へ釘付けになる中
う…うぅぅうう…
男性のうめき声が聞こえてきた。
由美「結香 今の…声…」
頷く結香
2人は忍び足で声へと近寄った。
う…うう…ううぅううぅう…
恐る恐る近づきロッカーの陰から2人が顔を覗かせると
先程 自殺を図って死んだ筈の教師がゆっくりと起きあがろうとしていた。
首に刃物が突き刺さったままの教師の死体が動いている。
結香「あわ…やばい…」
血の気の引いた表情を浮かべる結香
由美「大変 みんなに知らせなきゃ!行こう」
2人は皆の元へと駆け出した。
ぎこちなく起き上がった教師の死体
首をひしゃげ、生気の欠いた瞳が足音のする方へ向けられた。
そして…ゾンビが動き出す
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