第116話 発破

常磐自動車道



行進の先頭部付近にスペクター、ブラックホークが1機、中央部にハーキュリーズ、ブラックホークが1機、後部にブラックホーク2機と別れて配置され、グルグルと旋回しながら地上の目標へ撃ち込む、すり鉢戦法が行われていた。



チェーンガン、ガトリングガン、機関銃の弾が容赦無くゾンビの群れへ撃ち込まれ、面白い程バタバタと獲麟するゾンビ達



そして、銃音が止み、スペクターとハーキュリーズが動き始めた。



倒れた死体に躓きよろけながら動く死体や、上体のみで歩伏するゾンビ、また、まるで航空ショーや花火を見る観客の様に軍用機を見上げながら歩む感染者達



こちらも他の高速道同様に、空撃や空爆を物ともせず恐怖の行進は続いていた。



上昇するスペクターとハーキュリーズの2機



スペクター赤外線監視官「I confirm the laser irradition from beacon(ビーコンからのレーザー照射確認)」



爆発に巻き込まれぬよう4機のブラックホークが散開し離れていく



スペクターパイロット「Altitude 3500 feet(高度3500フィート)」



ビーコンから照射され空へと延びた赤い線



爆弾にはハイテクなコンピューターが内蔵され、赤い線には何処から撃ち込んでも指定されたポイントへ着弾するよう信号が組み込まれている。



ハーキュリーズ電子戦術管制官「Automatic guidance controls start(自動誘導装置 起動)」



スペクターが上昇しながらその赤い線へ機体を重ねた。



スペクター電子戦術管制官「Signal capture(信号捕捉)」



十分な距離をとり旋回するブラックホークの機内から見守る2人の自衛官



吉田「いよいよ投下されますね」



榊原「あぁ…」



ハーキュリーズパイロット「An altitude of 4000feet arrival(高度4000フィート到達)」



吉田「爆弾なんて初めて見ますよ こうゆうの大量破壊兵器って言うんですよね…?間近でしかも生で見れるなんてなんか凄いっすね」



榊原「一瞬にしてこの群れが排除されるだろうな…きっと圧巻だぞ…ちゃんと眼に焼きつけとけよ」



吉田「はい…」



スペクター、ハーキュリーズ両機の開口部が開かれサーモバリック爆弾が現れた。



スペクター火気管制官「Code…385505」



ハーキュリーズ火気管制官「Input completion.」



スペクター火気管制官「Trajectory  fixtion.(弾道固定)」



ハーキュリーズ火気管制官「This is completed too.(こちらも完了)」



ハーキュリーズ火気管制官「Throwing down 10 seconds ago… (投下10秒前…)」



スペクター火気管制官「9…8…7…6…」



何も知らない阿呆面した化け物共がうめき声をあげながら上空を見上げている。



数十体ものゾンビ、感染者はその場で立ち止まり、機体をじっと眺望していた。



何を思い…瞳に何を映しているのだろうか…?



スペクター火気管制官「Drop.(投下)」



ハーキュリーズ火気管制官「Drop.(投下)」



弾道ポッドが外され、スペクター、ハーキュリーズの2機からサーモバリック爆弾、爆弾コード名ホーリネスブレスが投下された。



スペクター電子戦術管制官「It is 15seconds an impacted bomb.(着弾まで15秒)」



ハーキュリーズ電子戦術管制官「15

、14、13、12、11、10…」



降下する2つの爆弾は誘導装置が作動して、自動で目標へ向け軌道修正している。



スペクター電子戦術管制官「8、7、6、5…」



そして滑空する2個の爆弾が群れへと突っ込み…



ハーキュリーズ電子戦術管制官「4、3、2、1、Impacted.」



行進のど真ん中に直下



サーモバリック爆弾2基が着弾された。



そして、起爆寸前、周囲のゾンビ、感染者等が急激に爆弾へと吸い寄せられるかの様に引き込まれたと同時に大爆発を起こした。



ドカアアアアアアアアアアアアアア



津波の様に、3000℃の爆炎が縦状に広がり、却火が亡者共の行進圧尾まで一瞬にして呑み込んだ。



ブラックホークからその光景を見詰める吉田と榊原



凄過ぎる威力と光景に…



言葉を発する事が出来ない…



爆炎で奴等の身体は一瞬にして焼却され高速道は一瞬にして炎の洗浄が行われた。



東名高速道



こちらでも2機のホーネットから特殊焼夷爆弾テルミット コード名 サイサロスが既に投下されていた。



サーモバリックと同じ様に縦状へ火炎が広がり



壊却する高速道



炎の波に呑まれた集団はあっという間に、黒こげとなり、灼熱の火炎で一瞬にして消え敢ふた。



6000℃の火炎地獄



それは、骨までも消滅させ…



見事なまでの瞬間的灰燼、滅却、消毒が施された。



着弾ポイントの道が突如崩れ始め、埃と灰、煙りが空へと勢い良く舞い上がった。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



京都府 舞鶴市 海上自衛隊航空基地 通信司令室



常磐道、東北道に設置されていたビーコンからの映像が爆発の影響で途絶え、両道を映していたモニター画面が急に砂嵐へと変わった。



通信兵2「東北道、常磐道共に着弾成功 ガンシップ隊、ホーネット隊からの連絡では生体熱源センサー、動体物感知器 共に反応無し 目標体…無し 成功です 全ての目標体洗浄完了しました 両隊作戦成功 作戦成功です」



モニター前に佇む、宮本、小西、もがみの3名



小西「よし 流石は米軍 とりあえず2つの道路は食い止められたようだな」



もがみ「ですね… でも…安心は出来ません 残す3つ…この3つが本番って所でしょう」



小西「あぁ まぁ そうだな」



小西が一息して、胸を撫で下ろしながら横に置かれたコーヒーマシーンに紙コップでブレンドコーヒーを注いだ。



成功に安堵の表情を浮かべる小西、もがみとは別に…



腕を組み、宮本が不穏な空気を察しながら、先程から列を成す通信兵等に目を向けていた。



険しい表情で通信兵等と何やら話しをしている志水



「ジィ 本部 こちら第1小隊坂本班 こちらも既に全員ライフルの弾は竭尽しております… 9mmハンドガンも残弾少ないです ザァ」



通信兵11「犠牲者は?」



「ザァーー 多数です…今生存者は私入れて8名しか残ってません ザァ」



「ザザァ こちら第7分隊斑鳩 河西本隊長 応答して下さい ザァー」



「ザザ こちら4分河西だ どうしたぁ?ザザザ」



「ザ いま何処ですか?三枝と雨木が感染化し味方が襲われまして… 今大通りへ逃げたんですが…ど…ザザ」



「ザァー 斑鳩ぁ すぐにどっか建物に入れ 外は危険過ぎる ザザ」



「ザザァ いか…わぁぁぁ…ぐわぁ…ザザザザザザザァァァ」



「ザザァ いかるがぁぁぁぁ 応答しろぉ ザザ」



しっかりと聞き耳を立てた宮本が険しい表情で志水へと近寄った。



5本の高速道に気を取られていたが…



騒然とする通信室に小西ともがみも気づき、宮本の後を追った。



宮本「どうしたんだ?志水…」



「コブラ隊 掃討はまだ終わらないのか?」



「ザザァ まだです…奴等車両にがっちり貼りついてて中々剥がせません…味方に当てる訳にはいかないので難航してます ザザ」



志水「京都市内へ入った殲滅隊が…今…危険な状況に陥ってます」



そして、志水は部隊一覧表を宮本へ手渡した。



「ザザァ 本部 こちら第5小隊星野班 合流した8班、15班と共に他の班の救出へ向かわせて下さい ザザァ」



通信兵5「気持ちは分かるが駄目だ 速やかに街からの離脱に専念しろ」



「ザザァ 本部 仲間が今2人…奴等に食われてます… もう…こてんぱんにやられてます… チキショー クソゾンビ共がぁぁ~ ザザァ」



志気は完全に低下し、生存の可能性が失われて行く隊員達



このままでは…100%…



全滅する…



宮本が乗り出し、無線のマイクを手に取った。



宮本「これは全隊員に繋がってるか?」



通信兵7「はい 繋がっております」



そして、宮本は頷くや素早くマイクを手にした。



宮本「京都殲滅に参加する全隊員…聞こえるか?宮本だ まずは生存する隊員達 よく聞け ザクトはおまえ等同志を決して見殺しにはしない 必ずおまえ等を全員助け出してやる だから…何としてでも今を生き延びろ 決して希望を捨てずに、この厳しい状況から生きて帰ってくるんだ 絶対諦めるんじゃない これから全面的に私が指揮を取る 今から助けにいく ザクトの意地を見せてみろ」



宮本が直々に隊員等へ発破を掛けた。



宮本「それから救出部隊全隊に告ぐ 今を生きる生存者を誰1人置いて来るなよ 必ず全員を救出し連れて帰ってくるんだ 必ずだぞ」



総司令官自らの口から叱咤激励の言葉が無線機を通し綴られた。



言絶ゆなカリスマ性、人望、人徳を兼ね備える宮本の存在感



その言葉に影響を受けた隊員等が反応を示し始めた。



「ザザァ 第11分隊相原班 絶対生きて帰ります ザザザ」



「ザァー 第4分隊河西班 司令官 御言葉ありがとうございます 我が部隊もこの窮地から必ず脱出し、帰還します ザ」



次々と無線を通して志気の向上が成され、活力を取り戻した隊からの返答が続々と来た。



この絶望的状況で…



宮本の言葉で混乱が静まり…志気が回復される…



凄い…



志水は驚きを隠せずにいた。



宮本「志水 名古屋のコマンドポストへすぐに通達しろ これから本隊をこっちへ呼び寄せるんだ」



志水「あ… はい 了解しました」



宮本「空母ジョージワシントンのコニングへガンシップ隊とホーネット隊を中央、関越、東名に各隊回させるように伝えろ」



通信兵6「了解しました すぐに伝えます」



宮本「それと、3つの高速道で上空を飛行するシーホークに機銃くらいは積んでるだろう 全機に武装 航空支援にあたらせるんだ」



通信兵1「了解しました」



通信兵3「了解しました」



戦争は高速道だけでは無い…



大なり小なり全国各地で戦闘は行われている。



そして、四面楚歌な地獄の京都市でこれから救出戦が行われる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る