第110話 集合
3階 建設業オフィス
梏桎(こくしつ)された江藤が暴れる中
スタイル「中村さん、高林さん そこちゃんと押さえてて」
高林「く…」
中村「暴れるな…よし いいですよ」
高林、中村が2人がかりで江藤の足を抑えつけた。
そしてスタイルが矢が串刺される江藤の太腿を…
その矢の中心をノコギリを使い、切り落とし始めた。
動きを封じる為… ロックされた弓矢がスタイルによってノコギリで切断されていく。
スタイル「よっし 切れたわ」
そしてスタイルは、右足、左足と突き刺さるその矢を引き抜いた。
矢が引き抜かれた傷口から流血
スタイル「思ったよりは出血しないわね…」
そして、スタイルはその傷口へ消毒液を振りかけ、周囲の血液を綺麗に拭き取ると、何やら傷口へ塗り始めた。
それを目にした2人が驚きを見せながら
中村「え…ちょっと…スタイルさん… それって…え? えー?」
高林「それ…アロンアルファー?」
スタイル「そうよ」
スタイルは何食わぬ顔で当然の様に両脚の傷口箇所へ接着剤を塗っていた。
中村「何故アロンアルファー?傷口にそんなの塗ったらマズいですよ」
スタイル「エレナちゃんが感染者になると自己治癒力が無くなるんじゃないかって言ってたから…血って凝固されるのかしら…?まあどっちにしても傷口は塞いどかないと駄目だから」
中村「いやいや そうじゃなくて塞ぐにしてもアロンアルファーってのはヤバいんじゃないですか?」
スタイル「なんで?アロンアルファーは基本人体に無害よ…」
高林「そうなんですか…?」
スタイル「そうよ 知らなかったの?これは本来緊急措置で縫合の代わりに塞ぐ為、開発されたんだから」
高林「傷口の縫合の代わりですか!?」
スタイル「そう…ここに傷口縫える人なんている?私、傷口なんて縫えないし、かといって放っておけばこの傷、化膿しちゃうでしょ…だから接着剤で固めちゃうのが手っ取り早いのよ」
するとスタイルは今度サランラップを手にとり、それを傷口へ巻き始めた。
高林「次はラップすか?」
スタイル「うん ガムテでもいいんだけど…これで行こう それより高林さんってZACTの方よね?」
高林「えぇ…まあ…一応そうです…」
スタイル「今… 病院ってどうなってるのかしら?確かザクトっていろんな施設を奴等から取り戻してるって聞いた事あるんだけど 治療する所ってちゃんと確保されてるの?」
高林「えぇ 治療する場はちゃんとあります 何カ所か医療施設はしっかりとザクトが抑えてます。安全は確保されてます。…ですけど問題が…」
スタイル、中村が高林の顔を伺った。
高林「今…負傷して搬送されてくる患者に対し圧倒的に医師の数が足りてないんです…どの医療施設も医師、看護師共に不足してて色々と混乱状態が続いてますね」
スタイル「そうなの…」
高林「えぇ…ただでさえ人手不足な上…感染した人を迂闊に中へは入れられ無いですから…事前の簡易検査やらなんやらで識別の判断なんかで色々と大変らしいです…もしかしたらこの方を病院へ運んだ所で治療どころか速攻で門前払いかもしれないです…」
下腿の矢も摘出され、処置が施されて行く
高林「それに加えて… 今… 外では…この関東全域に渡ってもっと大変な事になってまして…それが混乱の拍車をかけてます…今、負傷者が出る事を想定され多数の医者が駆り出されてるんですよ」
スタイル「大変な事…?」
高林「そうです… 今関東で…」
同フロアー 出版社オフィス
純や、矢口が室内に入ってきた。
そしてハサウェイへ付き添うエレナへ
純や「ハサウェイさんは?」
エレナ「うん 大丈夫 今また眠ったよ」
純や「そうですか…良かった」
そして純やがふと鉄格子の嵌められた窓際へ近寄り、外を眺めた時
驚きの表情を浮かべた。
純や「なんだ…これ…?」
このビルを取り囲む、おぞましき群衆の数
合同で正面玄関のシャッターにへばりつき、唸り声をあげながら掌でバンバン叩いている
まるで甘い物へ群がるアリの様に…
集会の如く、このビルへ群がり、いろいろな方面からゾンビ共が集合していた。
遠くからも続々とこちらへ向かって歩む多数の奴等が見える。
純やの驚きに、エレナ、矢口も窓際へ近寄り、外を眺めた。
エレナ「え?何これ?いつの間にか、ビルが取り囲まれてる…なんで…?」
純や「さぁ…中にいる俺達のにおいでも嗅ぎつけて群がってきたのかな?これ…相当な数だよ」
エレナ「臭いを嗅ぎつけるなんて犬じゃあるまいし まさか…え?…でも…どうなんだろ あれ見て あの遠くにいるのも…みんなここへ向かって来てるよ… ほら これ…みんなここを目指して来てる やっぱここにみんな集まって来てるんだよ」
純や「なんでこのビルに?これじゃあビルから出れても移動出来なくないっすか?」
矢口「俺達が屋上から潜入する時は、こんなにいなかったけどな…」
エレナ「って事は急激に集まってきたって事ね…」
矢口「そう言えば…今、関東中の奴等が高速自動車道を通って東京へ向かってるって聞きました?」
純や「関東中のゾンビ等がですか?高速自動車道を使って?」
矢口「えぇ…関東全域の奴等が突然、東名、中央、関越、常磐、東北の五本の自動車道を通ってこちらへ侵攻し始めたって言ってました」
エレナ「侵攻?」
矢口は頷きながら「うん万…うん十万って数が同時に移動を始めて…それをこれからZACTが阻止しようとしてるらしいです」
純や「まじ… 関東全域の奴等が同時に移動か‥外ではそんな大ごとになってるのかよ…」
エレナ「矢口さん 奴等の向かってる場所が東京ってのは確かなんですか?」
矢口「多分…これは聞いた話しなので」
エレナ「ねぇ…突然群がり出すっておかしいよね…もし東京だとして!まさかとは思うんだけど…このビルに集まってきてるんじゃないかな…その高速自動車道の侵攻って… ここを目指してるとか」
純や「まさか… それは関係ないでしょ」
エレナ「だよね… 流石に勘違いか」
エレナが純やへ振り向き、窓際から離れた
その時だ
突如 大きな音と激震が3人を襲った。
壁や柱、オフィスに置かれたデスクや椅子が激しく揺さぶられる。
純や「なんだ?」
天井が揺れ、細かなチリが砂の様に落ちてきて
エレナは眠るハサウェイへ慌てて被さり、揺れからハサウェイの身を守った。
エレナ「何よこれ…」
純や「爆発?」
窓ガラスや鉄格子も激しく揺れ動き、ハサウェイの横たわるロビーベンチも震動する。
矢口「いや 火災の影響でビルの何処かが崩落したんじゃないかな…」
それから数秒後に音と揺れはおさまり、エレナと純やが天井を見上げるとそこには小さな亀裂が幾つも生じていた。
純や「そろそろヤバいね… これ」
エレナ「そうね…」
そして更に…その直後…
今度は純やのケツポケに入れられたトランシーバーが作動
ある女の声が突如受信されてきた。
「ザァ あーあー聞っこえるかなぁー? あーあーキャハ ふふふふ~あーあー聞こえますかぁー? ザザザ」
いきなり飛び込んできたその声に…
エレナ、純やの顔色が変わった。
この声は…
理沙…
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