第1189話 どエルフさんといざ異世界駅前ヨド○シ

【前回のあらすじ】


 光の超特急ノゾミアン。元ネタ的には機関車ロボSDの局地とも言える存在。はたして、そんな存在を超えるデフォルメパロなんてできるのか。


 できる!! できるのだ!!

 いる!! いるのだ!!


 もっとSDで電車なキャラクターが……。


「ヨド○シカメラ!!」


「「また、よく分かんないのが出た!!」」


「ヨド○シカメラは安い!! 電化製品なんでも取りそろえ!! 良い物安い、お客様大満足のヨド○シカメラ!!」


「「やめろ!! そんな線でみたいなこと言うんじゃない!! どこの回しもんだよ!! ここはKAD○KAWAの庭ぞ!!」」


 ヨド○シカメラのマスコットキャラクター!!(エスカレーターの横とかに貼ってあるあの緑の奴……)


 あれ、ヨ○くんって言うんですって……。


「いや、知らんがなそんなトリビア」


 世の中には多くのデフォルメされた列車があるというのに。

 J○東海の息がかかったアニメ以外にも、こんなに列車キャラがいるというのに、どうしてこれが出てくるのか。マイトのガインではいけなかったのか。○ル○ランではだめだったのか。


 電車キャラの闇は深い。


 それはそうと、地図が欲しいなら「なんでも揃うヨ○バシカメラ」に行けばいいじゃない!


「あんまりな解決案だなぁ……」


◇ ◇ ◇ ◇


 その後、一応他の車庫も巡ったが女エルフ達は「緑の」から得た情報以上のものを手に入れることはできなかった。最新のイーグル市の地図を手に入れるならば、西口前の異世界ヨド○シに向かうしかない。そういうことで話は決着した。


 したのだが――。


「西口って!! どこの西口よ!!」


「まず、そこですよね」


「だぞ」


「もーっ、けっきょく何も分かんなかったぁー!! エリィ、もうやですぅー!!」


「まぁまぁ、みんな落ち着いてくださいよ」


 そもそもその異世界ヨド○シがある場所が分からなかった。

 西口とは。いったいどこの西口なのか。今女エルフ達が居る地下駅の西口か。それとも地上にある駅のどれかの西口か。そこの所がぼんやりとしていた。


 いや、流石に駅名くらいは「緑の」から聞いたけれども。


「シンジュクって言われてもなぁ。まず、そこがどこにあるのかよ」


「ですねぇ。そこが分かれば苦労しないっていう」


「だぞ」


「おねーたま!! こうなったら、もうちょっと違う所を探しましょう!!」


 手詰まり。

 卵が先か鶏が先か。

 イーグル市について何も知らない女エルフ達には、どうにも行動のしようがないのだった。そう、女エルフたちには――。


 一通り不満を吐き出した女エルフが視線を向けたのはELF娘。

 どうしようもないと皆が嘆いている中、一人だけ暗い天井を見上げていた彼女は、ふぅむと息を吐く。どうやら彼女なりに何かを考えているようだ。


 唯一の例外として、このイーグル市に住んでいたことがあるELF娘。彼女ならばもしかするとどうにか出来るかもしれない。そんな期待を向けて、女エルフパーティの視線が集まる。

 むず痒そうに身体を震わせた彼女は、「まぁ落ち着いて」とちょっと血走った彼らの視線を落ち着かせた。


「えっと、まず、シンジュクという駅についてですが、それについては私も覚えがあります。どこにあるかはだいたい分かるはずです」


「……それじゃあ!!」


「ただ、私が寝ている間にその建物が移動したということは充分考えられます。過去の知識を元に限りなく近づくことはできると思いますが、それが正しい位置かどうかの保障はしかねます」


 ELF娘の知識を使うにしても博打の側面が強い。

 ここまでは敵からの警戒の視線がないからなんとか来られたが、ダイナモ市のようにいつ懲罰部隊に追い回されるとも分からない。そんな状況で、悠長に市街を歩けるだろうか。実感としては難しいというのが女エルフたちの感想だ。


 けれどもここはその博打に乗るしかない。


「……それで構わないわリリエル」


「マスター」


「案内して頂戴。貴方の昔の知識でその『異世界ヨド○シ』まで。そこに建物が見つからないならその時考えましょう。とにかく今は貴方の知識にかけるしかないわ」


「……分かりました」


 精一杯できることをやってみると約束するELF娘。彼女の先導で、女エルフ達は地下駅から上水道へと入り込んだのだった。


 またしても、延々と続く水路と暗い道。

 壁に埋め込まれた細長いランタンの光を頼りに、女エルフ達はずいずいとイーグル市の地下を進んでいく。もう既にだいぶ表層が近いのだろう。天井からはにわかに街の息づかいが聞こえてきた。


「だぞ。なんだか凄く騒がしいんだぞ」


「活気のある街なんですね。ダイナモ市はもっと静かな感じでしたね」


「地下街までELFが溢れているんだもの、そりゃダイナモ市よりも賑わってるって想像はつくわよね。木を隠すには森の中、もってこいってはなしだわ」


 強がってみせるが女エルフの肩は震えている。

 はたして、ちゃんと破壊神たちの目は誤魔化すことができるのか。彼らの監視の目をかいくぐって、目的を達成できるのか。

 不安から祈るように彼女が目を閉じたその時だった――。


「あれ? 歌が聞こえる?」


 エルフの広い耳が暗い安居の中に響く歌声をキャッチした。

 聞こえてくるのは特徴的なメロディ。ポップでライトで明るい、聞いている人の気持ちを明るくするその歌声に、ついつい釣られて女エルフの脚が動く。


 そんな彼女の前に立ち、通せんぼするELF娘。


 その耳がひくひくと女エルフと同じように動いていた。


「聞こえる。聞こえますよ。これは間違いない、表層部にあるお店が流している、店内ソングです」


「店内ソング?」


「そうです!! そして、この歌が聞こえてくる方向に向かえば、お目当てのお店に辿り着けるということ――つまり!!」


「「「異世界ヨ○バシに辿りつけるっていうこと!?」」」


 地表に近づくにつれて何かしらのヒントは出るだろうと思っていたが、こうもテキメンに効果のあるものが出てくるとは。嬉しいながらも複雑な表情をする女エルフ。

 すぐに追って頂戴と、彼女はELF娘に頼み込んだ。


 それに無言で頷いて答えるELF娘。

 こっちですと、彼女は女エルフパーティを先導して動きはじめた。


「どんどん歌が大きくなってきています!」


「よし、もう少しってことね」


「よかった。これなら無事に人目につかずにことを済ませられますね」


「だぞ、一時はどうなることかと思ったんだぞ」


「ねーむーいーですー!!」


「みんな、もうちょっとの辛抱よ。もう少しで異世界ヨ○バシなんだから」


 仲間を激励してかける女エルフ。しかし、その脚がおもむろに止まった。

 ここだと立ち尽くすELF娘。暗い上水道の中に現れた、小さな小さな扉がそこにはあった。あと、この先に何があるのかを示す看板が。


 そこには、こう記されている――。


「看板には書いてあります、ようこそビッ○カメラへと……」


「「「違う!! カメラ屋!!」」」

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