第1178話 どエルフさんと娼婦軍団

【前回のあらすじ】


 女エルフ達から視点変わって彼女達が戦うイーグル市の敵組織。

 イーグル市怪人局悪の組織部。

 なんと、イーグル市は悪の組織をごっそり市政のシステムに取り込んでいた。

 さらにヒーロー戦隊も。


 繰り広げられる正義と悪のマッチポンプ。市政の中でガッツリ強力。はたして市民の目を政治から背けるのが目的か、それとも、何か伝統的な経緯があるのか。


 なんにしても一番の巨悪は市役所――。


「市役所になにか恨みでもあるんかい……」


 まぁ、地元帰ってきた人が、一度は市役所勤めは考えますよね。

 そういうことです。(社会人枠試験を落とされた人)


「そんな恨みをこんな所で晴らさなくても」


 あとは普通にサン○ッドとか好きなので、それがにじみ出てしまいました。

 くぼた○こと先生は偉大。


 そんなこんなで、女エルフ達を待ち受けるのは巨悪イーグル市。

 市を運営する巨大な組織ぐるみでふるわれる、数々の攻撃にはたして彼女達は耐えられるのか。なんか思ってたのと違う感じになってきたけれども、いよいよイーグル市との戦いの火蓋が切って落とされます――。


「とか言って、またトンチキネタなんでしょ? タイトル的に?」


 よく分かっていらっしゃる。


◇ ◇ ◇ ◇


「よし、みんな揃ってるね。それじゃ、今からセクサロイドの生産拠点に侵入するから。くれぐれも警備の労働者ELFに見つからないように」


「「「「「はーい!!」」」」」


 明けて翌日。


 女エルフ達はセクサロイドの生産拠点へとやって来ていた。

 ごうんごうんと轟音を立てて稼働するELFの生産工場。そういえば、これまで幾つも彼らは見てきたが、それが生産されている所を見るのは初めてだったなと、女エルフ達がちょっと興味深そうに辺りを見回す。


 とはいえ、今日は工場見学にやって来た訳ではない――。


「気になるかもしれないけれど、今日は工場の方には入らないよ。完成した出荷品の保管されている倉庫に行くだけだから」


「なんだ、ちょっと気になっていたのに」


「ダイナモ市で色々見てきたんじゃないの? ELFの生産は、どっちかっていうとダイナモ市の管轄なんだけれども……」


 案内の娼婦ELFに促されて、女エルフ達はきびきびと進む。

 あっという間に生産拠点の中でも静かな倉庫前。トタンの屋根に壁。隙間風がどこからともなく入り込む、暗く冷たく人の気配の感じない場所へと到着した。

 ここが本当に出荷品の保管倉庫なのだろうか。


 というか、そもそも保管倉庫とはどういうことなのだろう――。


「ねぇ、そもそもELFってこんなモノみたいな扱われ方するものなの? 貴方たちの仲間なのよね?」


「あー、それ、聞いちゃいますかマスター?」


 こういう話をしやすい相手が仲間に加わってくれて助かった。

 倉庫の鍵が開くのを待つ間に、そっと女エルフはELF娘に問いかけた。ワンコ教授や新女王に聞こえないように気をつけながら。


 明るくちょっと空気が読めない所のあるELF娘も、まぁ、ここは当然のように声のトーンを下げる。口元をちょいと手で隠すと彼女は女エルフに耳打ちした。


「実はELFには厳密な階級が存在するんですよ」


「あー、そういえば、この地下都市にも三つの階級があるって言ってたわね」


「そうそう。まぁ、それとほぼほぼ同じで。多くのELFを統括するリーダー型。そいつらの司令を受けて忠実に動くワーカー型。リーダー型、ワーカー型のメンテナンスを行うメンテナンス型。おおよそこの三つのELFがあるんです」


「ふーん、なるほどね。社会構造がそのままELFの型になってるのか」


 そういうことですと頷くELF娘。

 それで言わんとすることは女エルフに伝わったのだろう。


 人を指導するリーダーが最も社会的な地位が高く、その下で実務につく者達が数の多さで幅を利かし、最後にそれらの世話をする階級の者達が仕事の性質で割を食う。

 あまり認めたくはないが、どこにでも見られるよくある社会構造だった。


 けど、だからってこんなことが許されるのだろうか。

 ちょっと不思議になって女エルフが首をかしげる。


「ELFに階級があるのは分かったわ。けど、だからってこんなあからさまに対立を煽るような扱い、していいのかしら?」


「まぁそうですね。そういう社会的な分断というのはソフトに隠すのが定石ですから。もちろん、表層部でもこの地下街でも、そういう序列は口に出さないし、触れないのが一般的です」


「……だったら、これ、まずいんじゃないの?」


「まずくないですよ。娼婦型ELFというのは、その三つのELFの外にあるELFですから。つまり、彼女たちはELFの基本的な社会から疎外された存在なんです」


 そちらの世界で言うところの奴隷って所ですね――と、サラッと言うELF娘。

 咄嗟に女エルフは彼女の口を押さえると、無言でその顔を睨みつけた。もしかして何かやりましたかと、きょとんとするが悪気があっても言っていいことではない。


 なるほどねと女エルフが頭を抱える。

 あまり考えたくはないし、認めたくはないが、どうにもこの地下の生産拠点は業の深い場所のようだった。


「娼婦型ELFはそもそもELFによって作られたELFなんです。彼らが、自らの意思により作り出した存在。なので、同じ権利を保障してないんですね」


「そんなことって。アンタも一応、その娼婦型なんでしょう?」


「いえいえ、私はそのフリをしているだけですから。リーダー型のさらにひとつ上にあるスーパーバイザー型ですね。まぁ、それを認識しているELFはほとんど居ませんけれども」


「なんか頭が痛くなってきたわ」


「人の営みと同じで、ELFの営みにもいろいろあるんですよ。そもそも、生殖機能を持たないELFがどうしてこのような愛玩の相手を」


「やめて。それ以上考えると、ちょっと自分を抑えられそうにないから」


「……まぁ、そういう娘達が生きて行けるようにするというのも、この街の存在意義のひとつですから。どこにも居場所のなくなった彼女達が、自分の生まれた場所に希望を求めて帰って来る。この地下街の成り立ちは、そんな悲しい想いから来るものなんですよ」


 そう言うと、ELF娘はどこか寂しげな顔で瞼を閉じた。

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