第1177話 どエルフさんとイーグル市怪人局悪の組織部

【前回のあらすじ】


 破壊神の使徒。イーグル市の地下で眠っていたELF娘を仲間に加えた女エルフたち一行。男騎士が外れたことで薄くなった打撃力をこれで補える&さらに破壊神陣営の詳細な情報まで手に入れることができると、まさかまさかのトントン拍子に話が進むキーマンの登場に、ちょっと物語が動き出す。


 目指すはイーグル市にあるという【MM砲】とその奪取。ELF娘の情報によれば、「市内にはないが、管理しているだけあってそこに移動するための手段があるだろう」とのこと。その移動するための手段を調べるために、当面彼女達はイーグル市のサーバールームを探すことにしたのだった。


 という感じで、女エルフたちの行動指針が定まったあたりで、ちょっとひと休憩。

 本日は、これから彼女達が戦うことになるイーグル市の敵のお話。


 ダイナモ市が仮面のライダーなら、イーグル市は秘密の戦隊がモチーフ。この市にはびこる破壊神の手先はいったいどんな奴らか。そして、女エルフ達にどのように攻撃をしかけてくるのか――。


「ていうか、秘密の戦隊って、そもそもどんな敵と戦ってるんだっけ?」


 ……さぁ? なにと戦っているんだろ? 社会の理不尽?

 そんな感じで、パロディの元ネタについて十分な知識の無い筆者による、ちょっと危ない感じの展開が火を噴きます。


◇ ◇ ◇ ◇


 イーグル市。市町村役場。3階。怪人局悪の組織部。部内会議室。

 ここにイーグル市の怪人行政を司る幹部怪人達が一堂に会していた。イーグル市に侵入しようとしている女エルフ達の動きを察知し、その対策を行う為――。


「えー、では。今年度のイーグル市わくわく市民フェスティバルのプログラム内容についての会議をはじめたいと思います」


「「「「ぱちぱちぱちぱち!」」」」


 ではない!


 平常運転! 日常業務! 今日も定時だしっかりお仕事!

 怪人局悪の組織部は、近々行われる市町村の催し物の会議をしていた。

 なぜか――。


 イーグル市の悪の組織が公務だからである!

 悪の組織はイーグル市が認めた、市政により執り行われる活動だったからだ!


 市政と悪の組織の癒着――なんという巨悪!

 許せぬ! という所ではあるが、ここは少し冷静になろう。彼らが日頃どのような行いをしているか確認しないことには、それを糾弾することもできない。


 ロの形に組まれた部内の椅子。その一辺――ホワイトボードの前に立ったのは紫の服を着た怪人幹部。鉄の仮面を被ったそいつは、きゅっぽんとサインペンの蓋を抜くと、つらつらとホワイトボードに達筆な字を書いた。


「例年ですと地元農協組合と商工会がステージイベントをやって貰うのですが、今年は流行病の影響もあり、見合わせ出来ないかという打診がきています」


「鉄ヘルメット将軍!! すみません、もうちょっと字を大きく書いていただけませんか!! 私、最近ちょっと老眼がきつくって!!」


「あ、すみません……」


 書きかけの字をすぐに服の袖で拭った紫の服を着た怪人――もとい鉄ヘルメット将軍。もう一度、さっきの1.5倍くらいの大きさで文字を書くと、「これでよろしいですか?」と、先ほど声を上げた怪人に尋ねた。


 まるでピラミッドの最奥に眠っていそうな、黄金のマスクを被った男は、大丈夫ですと答える。すると、その隣のホッケーマスクの怪人が肘で彼を突いた。


「老眼って、お前ってばミイラキャラの設定を擦りすぎだろ」


「うっせえな!! 仕方ねえだろ、俺もかれこれ千年は怪人やってんだから!!」


「こらー、君たち、私語は慎みなさい。ツータン仮面にホッケー仮面。市民の皆が楽しみにしている祭の催し物なんだよ。真面目にやらないと」


「「はーい!!」」


「はいはーい!! それじゃ代わりに、僕たちゆるキャラ軍団が、ステージで演劇やるってのはどうかな、鉄ヘルメット将軍!!」


 黙った二人の怪人に変わって、ぴょんぴょんと飛び跳ねるのは巨大な天狗のお面をした謎の生命体。


 もこもことしたキルトっぽい身体。巨大な着ぐるみのようだが、デザインがちょっと判断が早すぎる感じ。どうして天狗のお面を着ぐるみにしようとしたのか――いやそもそも自分でどうにかできるものなのだろうか。


「天狗仮面くん。君たちだって流行病には感染するんだから、そんな無茶言っちゃダメだよ。自分の身体は大事にしないと」


「……はーい。ごめんなさい」


「いや、怒ってるわけじゃないからね。君の気持ちは私も嬉しく思っているよ。という訳でね、今年のステージは寂しいけれども全部別撮りにして、ステージにプロジェクターで映そうってことになったんだけれど、いいかなみんな?」


「なんか味気ねえな」


「まあーけど、他に方法ないからしょうがないべ」


「それだったら、皆で劇をした映像を――あぁ、けど、皆で集まるのもよくないのか。ほんと、なんでこんな病気が流行っちゃったんだろう」


 ガイガイとのんきに市の催し物について意見を述べる怪人達。

 とても悪の組織とは思えないまったりぶり。国に飼われるとここまで怪人達は大人しくなるのか。反体制側だとあんなに猛々しいのに、体制側に回るとこんな借りてきた猫みたいなことになるのか。


 とかまぁ、そんなことはさておき。


 どう考えてもこいつらとぼけた悪の組織。ヒーロー戦隊ものでも、なかなか出てこないタイプの奴。ギャグ漫画とかパロディドラマとか特別番組とか、ヒーロー戦隊をテーマにしたまた別のモノで出て来そうな奴らだった。


 こんな奴らがはたして本当に悪の組織なのか――。


 するとその時、悪の組織部の扉が乱暴に開く!!


「おう!! 聞いたか鉄ヘルメット将軍!! 今度のイーグル市わくわく市民フェスティバル、予算大削減だって!! 俺らその金でスーパーカー新調しようと思ってたのに、なんてこった!! けちくせえなイーグル市!!」


「ちょっとレッドさん、こっちは悪の組織の会議中なんですから、ヒーロー戦隊が入ってきちゃだめじゃないですか!!」


「いいじゃねえかよ、俺ら今は普通に公務員仲間なんだし。固いこと言うなよ」


 入ってきたのはヒーロー!!


 なんとヒーロー戦隊も市政に取り込まれていた。

 まさにマッチポンプ。正義と悪が一緒の組織で、八百長を繰り広げる。激しいバトルを繰り広げたかと思えば、帰って一緒に飲みに行くような同僚という悲しい真実。


 いったいどうしてこんなことになってしまったか。

 市民の目を欺くためか、つたない市政から目を背けさせるためか。

 なんにしても一番の巨悪は――。


「いやしかし、この市もおわってんね。悪の組織を自分達で運用して、そこに自分達の息のかかった正義のヒーローを戦隊をぶつけるんだから」


「うまく考えましたよね。まぁ、私たちは生活できれば御の字ですけど」


「だなぁ。これでもうちょっと、組織が緩いとやりやすいんだが」


「横領はだめですよレッドさん」


 どうやら市行政。市長あるいは市町村役場のようだった。

 イーグル市の闇は深い。

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