第1025話 どエルフさんとメカセクシーエルフ

【前回のあらすじ】


 女エルフのどエルフムーブに耐性のない仲間達。

 刺客の繰り出す弄りに為す術もなく絡め取られた女エルフはただひたすら弄られ続け、そしてその光景に彼女の仲間達は笑いの坩堝に突き落とされるのだった。


 まさにどエルフ無限地獄。


 ハメ技が決まったように脱出不能の笑いのループ。

 元ネタでも、同じネタで延々と笑い続けるシーンにはよく遭遇するが、初手からそんなものに引っかかってしまった女エルフたち。はたして彼女達は、この刺客を倒して次のステージに進むことができるのか。


 耐えろ女エルフ。

 耐えろ女修道士シスターたち。


 どんなにおいしい状況でも笑わなければいいのだ。

 腹筋を強く持てばいいのだ。


「マイネームイズモーラさん!! アイムビューティフルエルフ!!」


「「「「「ブフーッ!!」」」」」


 しかし、マ○ングリッシュはダメだった。ちょっとセンシティブな奴と組み合わせちゃいけない奴だった。そして相変わらずのパロディだった。


 いよいよVまでネタとして引っ張り出したら、この小説も終わりではないのか。

 作者はいったい何を考えているのか。


 ――KADOKAWAさん、ホロ○イブ案件ください。(白目)


「別に作品を買われただけで、物書きとしての腕は買われていないんだから、そこは勘違いしちゃダメよ」


 レッツゴー陰○師!!(こんなひどいのしか書けませんがお仕事ください)


◆ ◆ ◆ ◆


【言語 マ○ングリッシュ: とてもゲボい言語。聞いているだけで脳味噌が蕩けて笑いがこみあげてくる不可思議発音。けっこうみんな無茶苦茶言ってるけれど、ビジネスシーンで使ってない人はあんなもんじゃないですか。それはそれとして船長かわいい。結婚してくれ。ホロメンの中でトークに一番キレがある。センシティブ助かる。みんなのお姉さんしてる時もいいけど、陽気な女してる時も最高。理想の女過ぎる。これからも応援してるから頑張って】


 これだけ言っておけばきっと大丈夫だろう。

 モーラさんというキワモノヒロインをメインヒロインに、ここ数年書き続けている筆者である。どう考えても船長みたいな女がモロに好みであった。


「いいから!! お前の女の好みとかいいから!! いい加減にしてくれ!!」


 しばきあげられる女修道士シスターたち。

 女エルフの健闘むなしく、あわれ彼女達はまたしても笑ってしまった。

 どうやったらこの笑いのループを終焉に向かわせることができるのか。絶望に打ちひしがれながら、彼らは尻をしばきあげられた。


 女エルフももはや何も言えなかった。申し訳なさ過ぎて、お前達が笑うのがダメなんだろうなんて言い訳も口にすることができなかった。


 あれだけ笑ったというのに心はおつや。


 女オルフ達はこの理不尽な展開を前に、まだまだ潜入ミッションははじまったばかりだというのに、げっそりと気落ちしてしまうのだった。


「……これ、いい加減次のネタに入りたいんですけれど?」


「……ほんと、どうやったらどエルフネタじゃななくなるんですか? まさかここまでツッコみ所が多いとは、私たちも想像していませんでしたよ?」


「どうもすみませんどエルフで」


 さらには敵にまで同情される始末。

 どうしようもなかった。


 けれども女エルフとてこんなことを好きでやっている訳ではない。彼女も彼女なりにいっぱいいっぱい。自分なりに考えてのことなのだ。

 考えに考えて、出て来たのがあの台詞となるとそれはそれで悲しくなるが。


「というか、もうこのネタ勘弁していただけませんか? 私、もう一回、さっきの台詞言うので、スルーしてください。お願いします」


「いや、何言ってるんですかモーラさん!! あんなネタ重ねられたら、それこそまた腹筋大崩壊ですよ!!」


「そうですよお姉さま!! 今も思いだし笑いしそうになるところを、必死にお腹に力を入れて堪えているんですからね!!」


「だぞ……だぞ……ビューティフルエルフ、くっ、くくっ!!」


「ケティさんいけません!! 笑ってしまっては!! 懲罰部隊が来ますよ!!」


「ちょっと変なこと言っただけなのになんでそんなにツボるのよ!!」


 笑いにおいて大切なのはわかりやすさ。

 アップルとパイナップルとペンで笑えるのと同じ理屈。

 そう、誰もがその滑稽さを理解できることが大切なのだ。


 女エルフの変な発言――というかマ○ングリッシュは中学生でも分かる英単語と、英文法のおかしさ故にあれほど面白かった。そういうことだと思う。


 なんにしたって大惨事。

 序盤で笑わされるのもさることながら、笑いの天丼から抜け出せない。

 これはもう自力で救助することは不可能だ。よもやここまでか。このまま懲罰部隊に尻が腫れ上がるまですぱんすぱんと叩かれて、リタイアしてしまうのか。


 女エルフ達が諦めかけたその時――。


「みんな!! まだ諦めるには早いぞ!!」


「……だぞ!!」


「その声はまさか!!」


「あぁ、見てくださいお義姉さま!! 上空から人影が!!」


「いやなよかんしかしない」


 蒼天に白い雲の筋を作って飛んでくる人影。

 黄金の髪をたなびかせて飛ぶ、ふんどし一丁のキッカイな奴。

 足の裏から煙とともに炎をまき散らすその女エルフの知人によく似たELFは、ピンチに陥っている彼らの前にさっそうと降り立った。


 派手な音を立ててバスの天井が破れる。煙をまとって現われるのは、半分が機械、半分がELFの筋骨隆々タフガイ。


「チェーンジ!! セクシーエルフ!!」


「「「「え、エルフキング!!」」」」


「NO! I AM BEAUTIFUL ELF!」


 満を持して登場女エルフの兄エルフ。

 エルフの中のエルフこと、キングエルフ――を模したELF。


 キッカイマンであった。


 そして、彼がその台詞を言うと極めて自然。女エルフがいっちゃうと、なんだかいろいろと切迫した女のやばさみたいなものが滲み出てくるのだが、彼女の兄エルフが言う分には、そんなに違和感はなかった。


 プリッとプリめくいいお尻。

 鍛えられた僧帽筋。

 そして、たなびくふんどし。


 頼りがいのある背中を女エルフたちに向けて、キッカイマンが刺客の前に立つ。


「交代だフェラリア!! この私が、理想的なエルフの切り返しというのを一つお見せしようじゃないか!! お前はそこで見ていなさい!!」


「あ、はい、分かりました」


 そう言って、すごすごとキッカイマンから離れる女エルフ。

 あとは任せたと、割とあっさり兄を模したELFにその場を譲った。それはもう、もう少し暴れなくていいのかというくらいにあっさりと。


「いやに簡単に引き下がりましたねモーラさん?」


「だぞ、もっとごねるかと思ったんだぞ」


「どうしたんです? 何かあるんですか?」


「いやもう、この地獄から解放されるなら別になんでもいいかなって……」


 女エルフ。いつもなら、なんで男のアンタがヒロインやるのよとか、そういうことを言うところだが、そんな言葉も出ないくらいに疲れ切っていた。

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