第861話 ど法王さんと魔法少女勝負
【前回のあらすじ】
かつて中央大陸にその名を轟かせた救国の聖女ジャンヌ・ダルク。
その転生者を称する少女との突然の邂逅に
しかしながら、ジャンヌ・ダルクは中央大陸の人間。
東の島国に住まう人間の姿をした彼女とは似ても似つかない。
生まれ変わりにしても、どうして中央大陸ではなく東の島国なのか。
そもそも、海母神を崇める教会では、生まれ変わりを否定している。
彼女はいったい何者なのか、本当にジャンヌの転生者なのか。
そんな中、彼女は胸元から天秤の形をした聖遺物を取り出す。
それこそは神に選ばれし者の証。
聖女の天秤。
それを握りしめるや、眩く光はじめる聖女。
その姿はまさしく――。
「まさか!! これは!!」
「だぞ!! もしかして!!」
「お姉さまと同じ、魔法少女ではないですか!!」
そう、塔と言えば、ウワキツ魔法少女バトル。
まさかまさかの新たな魔法少女登場。
そう、ジャンヌと言えば、もう一つ、世代的に語らずには居られない者がある。FG○よりも、語っておかねばならないものがある。
「いや!! アンタ、別にそんなに読んでなかったでしょ、りぼ○!!」
セラ○ンの次にセイン○テール、セイン○テールの次にジャンヌ。
そう、世代的に、ジャンヌと言えば――。
◇ ◇ ◇ ◇
神風が紅葉を巻き上げて天秤宮に吹きすさぶ。
同時に、大地は鳴動し、神楽台の下から注連縄により四方を囲まれたリングがその姿を現わす。
それこそは、かつてバ○ブの塔にてワンコ教授が見たモノと同じ。
女エルフが魔法少女となり、激闘を繰り広げた戦いの舞台。
そう――。
「魔法少女バトルのリングなんだぞ!! ということは間違いない!!」
「そう!! この聖なるコンタツ――聖女の天秤により私はジャンヌ・ダルクへと変身する!! 神風を操り、宙を舞うルチャドール!! 東の島国の宗教戦争、シマバーラの乱にて現れた神の子、神風怪人ジャンヌとはこの私のことよ!!」
「シマバーラの乱!! なるほど、そういうことなんかだぞ!!」
「知っているんですかケティさん!!」
通常運転。
いつもの劇画顔になるワンコ教授。
どうやら、今まで不明だった点がワンコ教授の中でも繋がったようだ。
同時に、法王もまた、合点がいったという顔をした。
その前に変身バンクを完了した聖女が舞い降りる。
緋袴はショートスカートに。
足袋はニーソックス。
白小袖は半袖になり、その胸元はざっくりと開いている。
髪の毛は漆黒から金色に、日に焼けていた肌の色は純白に変わっている。
神々しさすら感じるその姿。
東の島国の住人ではない。
中央大陸の住人、それも美人に類する姿に変わった彼女は、ふふんと鼻を鳴らす。
そのため息と共に、彼女の胸元についている二つのたわわが小気味よく揺れた。
これが、東の島国に現れたジャンヌ・ダルク――。
「だぞ、シマバーラの乱は、当時東の島国に布教したばかりの教会と、現地の宗教が激突した宗教戦争!! シマバーラと言われる地に集った、教会の信者達が手に鍬を取り闘ったと言い伝えられているんだぞ!!」
「当時、戦乱が続いて疲弊していた東の島国において、人民の命は守られなくてはならなかったもの。教会への忠誠を棄てさせることで、この乱に参加した者達の多くはその罪を許された――けれども、それでもなお、忠烈に教会の教えに殉じ戦い続けた者達が居た」
「それなら聞いたことがあります。東の果ての殉教者――アマクサ一族!!」
はっと、法王たちが何かに気がつく。
そういえば、聖女は自分のことをこう名乗った。
ジャンヌ・A・ダルクと。
まさかそのAとは――。
「その通り!! ジャンヌ・A・ダルクのAは、AMAKUSAのA!!」
「やはり!!」
「アマクサ一族に生まれた聖女にして、東の島国のジャンヌ・ダルクと言われたのがこの私よ!! さぁ、聖女の天秤の加護を受けて、変身した私に挑むのは誰かしら!! 魔法少女勝負!! よもや、受けぬとは言わさないわよ!!」
聖女の正体みたり。
彼女はやはり転生者ではなかった。
アマクサ一族については、殉教者として教会も扱っているが、その行いにはどうにも利己的な部分が多く、列聖については見送られている。
彼女はそんな、胡乱な一族の者であり、どうやら法王達が抱いたとおり、ジャンヌ・ダルクの僭主者に違いなかった。
しかしながら、手にした力は紛れも無く本物。
魔法少女。
摩訶不思議なる乙女のみが使うことを許されたパワー。
今、再び旗の先を法王達に向けて、さぁ、誰が私の相手だと誰何するジャンヌ・A・ダルクこと偽聖女。彼女を前に、魔法少女勝負はもはや不可避であった。
誰が応じる。
ここに女エルフが居たならば、歴戦の魔法少女にして、数々の名勝負の勝利者である彼女にその権利が譲られることだろう。
しかし、いかんせん、ここに女エルフはいない。
彼女の妹分にして、一度魔法少女勝負に挑んだ新女王が適任か。
しかし、女エルフが一緒ならばともかく、彼女一人で魔法少女勝負が務まるか。
不安要素は大きい。
となれば、見た目的に一番少女に近いワンコ教授か。
しかしながら彼女は完全に後衛職。
どころか、後衛で戦闘することも珍しい、パーティ内の知恵袋である。
「だぞ、どうすればいいんだぞ」
「お姉様以外に、魔法少女勝負の適任者がいない。これは、お姉様が到着するまで、待つしか無いのでは?」
諦めがパーティ内に満ちたその時である。
「がっで~~む……」
静かな怒りを声に込めて呟いた者があった。
それは、そう、聖女ジャンヌ・ダルクを誰よりも崇めているもの。
そして、その名を語り横暴を働いた、アマクサ一族に対してよき感情を持っていないもの。
なにより――。
「そのような胸をした聖女がいるか!! 聖女というのはな、もっとこう慎ましやかで、おしとやかで、フルフラットで――とにかく!! そのけしからんおっぱいで、聖女を語るのはやめていただこう!! ジャンヌ・ダルク!! いえ、偽ジャンヌ!!」
「な、なんですって!!」
「教会の長として、貴方の狼藉とおっぱいは見過ごせません!! いいでしょう、この魔法少女勝負、うちのウワキツモーラさんが不在につき、この法王リーケットが引き受けた!! 東西、聖女勝負といざまいらん!!」
富んだ乳を憎む者。
おもいがけず貧乳であることが最近暴露され、気にしていることがあきらかになった法王。彼女が、叩きつけられた挑戦状を拾うことと相成った。
はたして。
再び、魔法少女勝負の火蓋が、役者を変えてここに切られようとしていた。
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