第793話 ど男騎士さんと復活のバ〇ブ
【前回のあらすじ】
GTRの事後処理を勝たちに任せて、潜水艦呂09へと乗り込んだ男騎士たち。
鋼鉄の船に乗りこんだ彼らを待ち受けていたのは船酔いと軍神ミッテルの洗礼。
彼の神の使徒である店主が懐かしいと呟く中――。
『皆さん、ここまでの旅路おつかれさまです。これより本艦呂09は、冥府島ラ・バウルの水底にある海底都市オ〇ンポスに向かって出向します』
船内に響いたアナウンスに男騎士たちが驚く。
いや、正確には、男騎士とワンコ教授が驚く。
果たして彼らは何に驚いたのか――。
という所で。
「いよいよ、七部も終わりか。けど、八部も長くなりそうよね」
どエルフさん第七部。
最終話にして第八部へのプロローグはじまります。
◇ ◇ ◇ ◇
潜水艦、呂09デッキ。
暗い水底に向かって強烈な光を照射して進む神の鋼鉄船。
その開けたデッキには、一本の太い柱が通っていた。
いや、それは正確には管。
呂09の中を循環して、コントロールあるいは自己修復する溶液が通っているもの。強化ガラスでできたその中を流れる緑色の液体。
その向こうには、ほの暗い人の影が見える。
その影の形はまさしく少年のそれ。
そして、やさしいまなざしが緑の液体の中に揺れていた。
笑顔に、面影に、そしてその体に、男騎士もワンコ教授も見覚えがある。
かつて南の島に飛ばされた際、共に戦った少年の面影が。
一族の呪いによって、ただ一つ――鉄の巨人を倒すという――宿願を胸にこの世界をさまよい歩いていた美少年。
そう、彼こそは――。
『お変わりないようでほっとしましたよ、ティトさん、ケティさん』
「そんな、まさか!!」
「だぞ生きていたんだぞ!!」
『生きていたという表現はちょっと違う気がしますね。より正確に言うと、彼と同期したというのが正しいかもしれません。けれども、そう、間違いなく、私はあの時、貴方たちと旅したことを覚えている』
魔性少年。
大剣使いを引き連れてバビブの塔に挑んでいた超能力使い。
「「コウイチ!!」」
懐かしい仲間に間違いなかった。
たまらず飛びつこうとする男騎士とワンコ教授。しかしながら、その体が強化ガラスにはじかれる。
アイタタタと鼻頭を抑える男騎士に向かって、魔性少年は苦笑いを向ける。
その表情からは、かつて塔の攻略の際に見せた刺々しいものではなく、どこか険しさの取れた穏やかなものになっていた。
その表情に、ほっとなんだか男騎士とワンコ教授が息を漏らす。
「だぞ、それはそれとして、いったいどういうことなんだぞ!! ちゃんと説明してほしいんだぞ!!」
「そうだ、コウイチ。君は確か、鉄の巨人を倒して回る――そういう宿命の一族に生まれたと聞いていた。それがどうして、こんなところに」
『そうです。僕たち一族は、鉄の巨人を操る力と、それに伴う超能力を持って生まれた呪われた一族。そして、この世に産み落とされた鉄の巨人全てを、破壊することを目的として生きてきました』
それがどうして、こんな所に、と、言いかけた男騎士たちの前に映し出されたのは緑色のイメージ映像。
この巨大潜水艦のシルエットが描かれたそれには、妙な特徴が見て取れた。
二本の腕。
不必要に膨らんだ船首。
そして、そこから光を発する二つの窓。
ちょうど、そう、今自分たちがいるデッキのように。
それはまさしく腕を突き出し進む巨人の如し。
そう。
「これは!!」
「まさか!!」
『そうです。最後の鉄の巨人――『
「最初の鉄の巨人!!」
「ここが鉄の巨人の中なんだぞ!?」
『今、そこのデビちゃんたちが呂09と呼んでいるこれこそが、僕たち操者の一族に最初に与えられた鉄の巨人。種の方舟ポ性ドン』
「……頭痛がする名前よね」
頭を抱えて、あらかじめ事情を知っている女エルフが首を振る。
そんな彼女たちの前で、魔性少年は両腕を広げると、いろんなものをあけっぴろげにして、そして、目を見開いて言うのだった。
『そして僕こそ、操者の一族の最初のひとりにして、すべての始まりとなった男。コウイチより先にあった、戦神ミッテルにより造られた人の形をした兵器。すべての操者の一族の完全なるオリジナルにして、コピー元』
鉄人二八――ゴウ。
そう言って、緑色の溶液の中に揺れる魔性少年は瞳を煌めかせるのだった。
それはそう、ミッテル九傑の名に上がった者と同じ。
奇しくも男騎士たちが探し求めている、戦神の使徒であった。
【第七部 パイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコム 完】
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