第八章 七悪顕現!! 破れ絶対障壁!! 掴め人類の未来!!

第778話 ど男騎士さんと神の使徒

【前回のあらすじ】


 女エルフ逆転大勝利!!


 ウワキツ勝負にこそ負けた彼女。

 だが、さすがはパートナー男騎士と気持ちを通い合わせることには成功した。

 見事に男騎士との絆を見せつけ、試合無効に持ち込んでの逆転。


 からくり娘から大切な人を取り戻した女エルフは――。


「ん、まぁ、モーラさん。君ならきっと勝ってくれると思っていたよ」


「……当然じゃない!! この世でアンタのことを好きな女なんて、アタシくらいなもんよ!! 感謝しなさいよね!! このモーラさんが一緒にいることを!!」


 なんか久しぶりにデレるのであった。


 さて、いよいよウワキツ勝負という名の茶番も終わり。

 法王ポープたちに男騎士たちも合流しようと、風の精霊王の魔法を解いた矢先――彼らの目に飛び込んできたのは地獄絵図のような光景だった。


 はたして、どうしてこんなことになってしまったのか。


 作者と読者のみぞ知る。七つの呪いセブンカース

 その発動により、突如変容したからくり娘。


 彼女の暴威により、この暴虐は起こったというのか。


 はたして怒涛の新展開。

 男騎士たちの運命やいかに。


◇ ◇ ◇ ◇


「……ほう、魔法結界の中に居たから無傷であったか。当世の神殺しよ。忌々しいかな、流石に一度でも魔神シリコーンに抗っただけはある」


「ですねぇ。虚神うつろのかみでも封じてみせるのはやはり神殺しとしての資質を備えているということでしょう」


 風の精霊王の結界の中から現れた男騎士たち。

 そんな彼らを出迎えたのは、二人の美しき女たちであった。しかしながら、その姿は人間のそれに非ず。また、亜人種のどれにも該当しない。


 異様。

 いや、むしろ神々しい、神秘を纏った姿であった。


 女エルフ、男騎士たちが、人間の本質に備わった感情により押し黙る中、声を張り上げたのはもはや人間ではなくなったもの。


「馬鹿なてめぇ!! どうしてお前がこんな所にいやがる!!」


「……お久しぶりですね大英雄スコティ。いえ、今は魔剣エロスでしたか。あのペペロペを滅ぼし、更に、神殺しの秘蹟までを七柱に対して望み、その許しを得た男。貴方がそうしてこの世に意識をとどめる限り、私もまた――貴方への神々のカウンターとして用意された七悪として現世にあるのですよ」


道化いつわるもの!!」


 知っているのかエロスと男騎士が言うより早く黒髪の女が男騎士に肉薄する。ルビーのような絢爛に輝く瞳を近づけて彼女は、瘴気を発するその右腕を男騎士の首根に向かって伸ばした。


 油断。

 尋常の立ち合いであれば、万に一つも自分の間合いにつけ入れさせない男騎士が、しかしながらいとも簡単にその懐に女の腕を侵入させた。


 鞘より愛刀を抜き放つ時間もない。

 どうするという逡巡も惜しい。

 身を引くが、そんなもので、自分の認識の外から攻撃を仕掛けてくる相手を躱せるはずもない。


 やむなしかと、身を縛められるのを覚悟したその時。

 横やりに肌色の美脚が彼と黒髪の女の間に飛び込んできた。


 すわ、大旋風。

 飛び交うのは黒デニールのストッキング。

 不可思議なモノが男騎士の窮地を救った。

 しかし、それは臀部に通されたものではない。


 漆黒の長髪を巻き上げて収めたそれは、砂を詰めたズタ袋のような凶器。

 立派な武器に他ならなかった。

 そして、そんな二房の凶器の間には、どこか懐かしい煌めく瞳がある。


 そう、しいたけのように輝く瞳が。


 しかしなによりも――。


「ニップレス!!」


「前張り!!」


「後ろ張りですってぇっ!?」


 レーティング的に露出してはいけない部分。具体的には、描写するには切符が必要な部分にきっちりと蓋をしている。


 大丈夫、見えていませんよとばかりに、しっかりと蓋をしている。


 逆にそれがエロくて、大丈夫なのかこれという気もしないでもないが、とにかく、彼女の身体のやらしい部分は隠されていた。

 もはや、ボディラインしかやらしい部分はなかった。

 ボディラインだけでも十分やらしいけれど、これならなんとか少年誌にも載せても問題ない状況であった。


 彼女は、華麗に海上を舞うと甲板に着地する。

 ふふと涼し気に微笑んで、それからまた、聞き覚えのある声でそれは叫ぶ。


「局部隠して、顔も隠す!! 愛と正義と健康の使者!! おヘルス仮面!! ここに到着しました!!」


「なにやってるのよ!! シコりん!!」


 隠す気微塵も何にもない。

 シコの字女修道士シスター


 ここに華麗に復活。


 いつもの修道服を脱ぎ捨てて、訳の分からない仮面をつけての再登場である。


 しかも、よりにもよって、なんでこのタイミングで。

 助けに行く道中だというのに、どうして。


 絶望感というか、あっけにとられた感というか。

 なんにしても目の前の訳の分からぬ女たちの登場よりも、はるかに大きなインパクトが男騎士たちを襲う。

 そんな前で、女修道士シスター――のようなおヘルス仮面。


「おヘルス仮面ですよモーラさん!! シコりんとかそんな人、私はまったく関係ありませんから!! あーあー、知りません、そんな人知りません!!」


「嘘おっしゃい!! アンタ、その目はどう見たって、シコりんでしょ!! この世界で、瞳の中に星を入れてるのはアンタくらいよ!!」


「世の中には自分に似た人が三人いるんですよ!! もうっ、参りましたね。人の言葉をそこまで信じることができないだなんて。これだから、どエルフさんは。エロいことなら何も考えずにすぐ信じるピンク脳のくせして、こういう所はうるさいんですから」


「誰がエロいことならすぐ信じるじゃ!! 弄り方からしてシコりんでしょ!!」


「えっ、弄るだなんてそんな。私、まだ、何もしておりませんのに。まさか、私が発する言葉による微細な空気振動で、それを弄られたと誤認したのですか!! 流石ですどエルフさん、さすがです!!」


「やっぱお前やないかーい!!」


 どう考えてもシコの字。

 その胴に入ったセクハラ芸は、男騎士と女修道士シスター――二人の女エルフの友人でしか成し得ない、完璧なものであった。

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