第727話 ど男騎士さんと誤チェストでごわす

【前回のあらすじ】


 人間の脳というのは、各器官を通じて取得される情報を適切に処理する基幹である。どのような情報も、全て、一度は脳を通して処理される。

 そのため――。


 知力が低いと、どんなにセンシティブな器官を持っていても、そこでいろいろなことが適切に処理されないのである。そう。


「チン〇だなんて!! 深夜だからって大声で叫んでいいことではない!!」


 チェストと聞いてチン〇と認識する。

 男騎士、やはりこの物語の根幹に坐するキーキャラクターだけはある。

 彼は持ち前の、聞き間違えスキルを発揮して、明恥政府の英雄大性郷に向かってもセクハラ勘違いを発揮してみせるのだった。


 うむ。


「ほらみろ、私がどエルフなんじゃなくて、ティトがアホなだけじゃないのよ。これで私の身の潔白が証明されたわね、ふっふーん」


 それにしたってモーラさんは、迂闊に勘違い発言を発生過ぎだと思うの。

 そして、誤チン〇は仕方ないと思うの。


 という所で、新年一発目からチン〇ネタ。(これが公開される頃には春)

 今年も春から幸先がいい、トップスピード下ネタスタートでございます。

 タイトルからお察しの通り――。


 これからもっとひどくなるでよ。


◇ ◇ ◇ ◇


 チェストである。

 それはG幻流における、特徴的な掛け声にして、そこまで卑猥ということでもない、更に言えばその掛け声事態になんの意味もないものである。自然に、口から息と気合を抜くのに適した叫びがこれだっただけ。


 なんの他意もない、なんの意図もない。

 そんな言葉に――。


「いやいやいや、チン〇って叫んでいたではないか、性郷どん!!」


「叫んでおりもうさん!! 聞き間違いでござる!! 誤チェストにごわす!!」


「誤チン〇にごわす!?」


「ちがうでごわす!!」


 男騎士、痛恨の聞き間違い。

 どエルフさんを失った悲しみからか、それとも素からか、彼はチェストをチン〇と聞き間違えて顔を赤面させたのだった。


 今更、数々のセクハラ奥義を披露しておいてのこれである。これには男騎士と共に戦って来た魔剣エロスも、その戦いとセクハラぶりを船倉から見守って来た大性郷も、気まずく沈黙することしかできなかった。


 男騎士、かわいそうな子。


 こと、戦闘や冒険においては抜群に頭の切れる彼だが、根はポンコツである。普段であれば修行のこの場でも聞き間違えることはなかったのだろう。愛しいパートナーを失ったショックが、ついに戦闘の場にまで影を落としているともとれた。


 ならばこそ、早急に彼の心の傷を癒さなければいけない。

 誤チン〇は置いておくとして大性郷、彼は手にしていた櫂の木剣を、男騎士に向かって差し出したのだった。


「まぁ、叫び声はなんでもようござる。よいかティト殿。大切なのは技の練りこみでごわす。捨て身の斬り込みを万度続けて、この初太刀斬りは完成する」


「性郷どん」


「幸い、ティト殿にはバイスラッシュという下地があり申す。あとはどれだけ必死にその太刀筋を研ぎ澄ませるかにつき申す。さぁ、この木剣をとるがよか。G幻流免許皆伝であるこの性郷、とことん貴殿に付き合いもうす」


「……ありがとう、性郷どん」


 ずしりと重いその櫂の剣を受け取って、男騎士が両手で握る。流石に歴戦の戦士である、そしてバイスラッシュという下地を持った男である。

 性郷が評した通り、重い櫂の木剣を手にしながらも、なかなか初めてとは思えない見事な構えで、彼はそれを上段に担いでみせた。


 全身全霊を持ってして繰り出す捨て身の一撃。

 男騎士はどちらかというと、戦いにおいては冷徹に有効な技を繰り出す、技巧タイプの戦士である。もちろん、捨て身の一撃それ自体を放たない訳ではない。だが、そこにはそうしなければならないという冷徹な計算があった。


 馬鹿ではあるが、そこには戦士としての理がちゃんと備わっていた。


 しかし今、彼はその理を捨てて、死と紙一重に踊る一撃を学ぼうとしている。握りしめる櫂の木剣に汗が伝う。魔剣を腰に佩いて構えた男騎士、その背中から裂帛の気迫が昇ると、夜闇の中に微かに峻烈な闘気が匂い立った。


 うむ、と、大性郷が頷く。


「……ところで性郷どん」


「なんでござるかティト殿」


「……聞きたかったのだが、この技を学ぶにあたって、いや、この流派を学ぶにあたって聞いておきたいことが一つある」


「ふむ、拙者で答えられることであれば、返答いたそう」


 ひと呼吸、置いて男騎士が剣を繰り出す。

 櫂の木剣は大性郷の振るったそれより微かにぶれる。流石に初の一刀でそれを十全に扱うことは、歴戦の男騎士とて難しいか。乱雑に水面を割った木剣を、静かに眺めながら男騎士は静かに呟いた――。


「もしやG幻流のGは、〇慰のGということでは?」


「誤チェストにござる!!」


 またしても、またしても聞き間違いである。

 男騎士、やはり女エルフを失ったダメージが大きいようだ。いや、この場合は、女エルフがいないことにより、リカバリが効かないというべきだろうか。


 とにもかくにもえらい勘違いを男騎士は平然とのたまったのだった。


「いや、けど、GのGは、オナ〇ーと〇慰なんていう名言が東の島国にはあると」


「誤チェストにござる!! そんな名言はありもうさん!!」


「Gで幻を見る流と書いて、G幻流ではござらんのか、性郷どん」


「ござらん!!」


「夢〇竿流れではござらんのか、性郷どん」


「ござらん!! G幻流への誤チェストにござる!!」


「チン〇ー!!」


「誤チェストにござる!!」


 クソみたいな問答を繰り広げながらも、着々と太刀筋が安定していく男騎士。こいつ、くだらないこと言いながら、ちゃんとできるとは天才かと魔剣が腰で戦慄する中、このトンチキ問答はしばし続くことになったのだ。


 そう、男騎士の修行はまだはじまったばかりだ。


「キョセエエエエエエイ!!!!」


「叫び声がさっきからいちいち含みがあるでごわす!! ティトどん、チェスト、きばれ!!」


「きばる!! そんな――アーッ、スカー〇ロン!!」


「あ、懐かしい前章のネタ」


「だから、いちいち含みをもたさないでほしいでごわす!! しっかりせよ、ティトどん!!」


「シッポリィイイ!!!!」


「ティトどーん!!」


 修行ははじまったばかりである!!(白目)

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