どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第720話 ど男騎士さんと第三レース決着
第720話 ど男騎士さんと第三レース決着
【前回のあらすじ】
女エルフを失って失意の淵に落ちた男騎士。
茫然自失。
完全に前後不覚となった彼に、からくり娘たちの凶手が無慈悲にも降り注ぐ。
しかしながら、その剣先は、たった一振りの魔性の剣閃により振り払われた。
「残念だったなおい。精神的な揺さぶりに弱いこいつだがよう、気を失ってくれればそれはそれよ。俺様が即座に精神を乗っ取って、好き勝手やれる訳だからな」
魔剣エロス!!
持つ者の精神を乗っ取り、自在に操るその魔剣は、茫然自失となった男騎士の精神を乗っ取ってその窮地を好機へと変換させた。
はたしてエロス。
悪鬼羅刹か鬼か魔か、から恐ろしいまでの剣戟で向かい来るからくり娘たちを斬り伏せると、がははと笑って自らを敵の首魁へと向ける。
大半のからくり娘たちを破壊された幸運者――ユキカゼは、その光景を前にすぐに戦略的撤退を決めたのだった。
かくして、第三レースの動乱は、魔剣の活躍により幕を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇
「さぁ、第三レース、なんとなんと予想外なことになりました。まさか、一位で出発したはずのパイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコム。大きく順位を落としての四位。着順は大きく入れ替わって、ご覧の通りとなりました」
観覧船の上に掲示された着順。
そこに書かれている順位は、つい一日前のリザルトと大きく異なるものだった。
一位 モッリ水軍(12時間33分)
二位
三位 小野コマシスターズ(13時間12分)
四位 パイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコム(13時間54分)
五位 威臨社(13時間59分)
六位 謎の大陸商人コードX(18時間2分)
以下 省略
「まさかまさかの大躍進。この第三レースで、大きく動いてみせたのはモッリ水軍と
そう。
男騎士たちが海上で戦いを繰り広げるのをしり目に、戦闘や妨害行動の一切を放棄して、レースに集中したモッリ水軍と
解説が言った通り、レース中盤での逆転を、彼らは虎視眈々と狙っていたと見て問題ないだろう。
実際、小野コマシスターズはもとより、男騎士たちパイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコムは戦闘により疲弊している。そこを突いて、攻撃をしかけて潰してしまうこともできただろうに、彼らはレースの方を優先した。
完全に虚を突かれたという奴である。
男騎士、そして、
すまないと謝ったのは、前後不覚、完全に取り乱して戦略を見誤ってしまった、パイオーツ・マルミエヤン・ドットコムのリーダー、男騎士であった。
彼は首を垂れて仲間たちに許しを請う。
だが、その行動に対して、返事ができる者は誰もいなかった。
なぜならば――。
「なお、パイ〇ーツ・マルミエヤン・ドットコムの船員、女エルフのモーラ氏については、その安否が分かっておりません。後続の艦隊もその姿を確認しておらず、これは行方不明が濃厚かと思われます」
女エルフを救出することができなかったからだ。
男騎士のうつむいた表情、そこには、かつてない絶望がこびりついていた。
愛する者を失う悲しみに、今まさに暮れている彼に、いったいどんな言葉をかけることができるだろうか。それを殺して、自分の至らなさを詫びる律儀な男に、いったいこれ以上どんな言葉をかけて慰めればいいだろうか。
男騎士パーティの一転してのランキング失速の原因はここにあった。
からくり艦隊これくしょんこと小野コマシスターズを撃退して、いくらでも巻き返す余地はあったにも関わらず、彼らがずるずると四位という順位に後退したのは、その精神的支柱である男騎士と、それを支える女エルフの喪失だ。
彼の判断の鈍りがそのまま、船を失速するに至らしめた。
けれどもやはり、何も言えない。
男騎士も悲しいが、同じくらいに仲間たちは、女エルフの喪失を悲しんでいた。
「……だぞぉ、だぞぉ。コーネリアに続いて、モーラまでいなくなっちゃったんだぞぉ」
「モーラさん。どうして、あんなあっけなく。貴方らしくないですよ」
「お、お姉さま。どうしてですか。あんなに、レース開始の時には元気にしていらっしゃったのに。あんな、あんな一瞬の出来事で」
あっけなさすぎる女エルフの死。
いや、死んだかどうかは、彼女の死体が上がっていないのだ、まだ分からない。
だが、四方を見渡しても、漂着するような島など見当たらない大海原。
こんな場所で、海に落ちれば、たちまち波濤の中に命は消える。
そんなことは、わざわざ考えるまでもないことだった。
よもや、出発前に店主が渡した【セイレーンの泪】。その加護などまるでなかった。いっそフラグと言ってもいいだろう。
女エルフは死んだ。
もう、いないのだ。
セイレーンの泪の代わりに、甲板に男騎士の泪が落ちる。
夕闇に朱色を帯びたその冷たい滾りは、しとどに彼の足元を濡らした。
「……おい、ティト、泣くんじゃねぇ!! 死んだと決まった訳じゃねえ!!」
「……けど、エロス!! 俺は、俺はまた、大切な人を守れなくて!!」
「……くっ、この馬鹿野郎!!」
こんな時に、男騎士を励ますのが魔剣エロスである。
しかしながら同じように、かつて愛しき相手を失った男には、痛いほどに持ち主の心が分かった。手に取るように、その喪失の痛みが感じられた。
埋めることができない心の虚。
もはや、男騎士たちに、できることは何もなかった。
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