第676話 ど新女王さんとど長男さん
【前回のあらすじ】
いつから男の子は男になるのだろう。
自分の身体にある男の部分の本当の使い方を知ったその時からか。
それとも、それを実際に弄り出した時からか。
その境界は曖昧にして不可解、誰しもがその壁を越えているというのに、その越えかたについてはそれぞれである。
しかし、一つだけ確かに言えることがある。
夢見る男――冒険野郎の心はいつだって少年のまま。
汚れなき、男の子なのだ。
だから――。
ちん〇だってはずかしくないもん。
「最近、全体的にちん〇ネタが多い気がするけれど、どうしたの疲れてるの?」
だいたい最新話を書く前に、軽く前の話を確認したりするんですが、読んでて愕然としましたね。ちん〇やん、ちん〇やんばっかりで、ちょっとほんと、どうかしているんじゃないかと、そういう感じの気分です。
いやはや。
疲れているな。(確信)
頑張れネタやった後にあれですが、もしかするとしばらくどエルフさん休むとかそういうのもあるかもしれません。ちょっと本業がしんどくなってまいりましたよ。いやはや、宝くじでも当たらないもんですかね。(笑)
「感情表現をカッコ使ってし出すあたりにどうしようもなさを感じる」
どうしようもないっす。(白目)
◇ ◇ ◇ ◇
さて。
男騎士たちがちん〇がどうのとわめきたて、丸出しのそれを風にそよがせて激闘を繰り広げる一方、新女王と女エルフはモッリ水軍の頭領たちとの戦いに明け暮れていた。
思いがけず発動した新女王の強化魔法【
並みの戦士では躱すこと難しい刀による斬撃。
それをまるで舞う蝶のようにひらりひらりと避けて見せる新女王。
目覚ましい戦闘能力の増加は敵にしても味方にしても予想外。
なんにしても、彼女はここに戦士として一皮むけた。
いや、姫騎士として一皮剥けた。
もちろん、モッリ水軍次男坊とて、そんな彼女にやられっぱなしでは沽券にかかわる。自分の知りうる限りの手を尽くして、攻撃を新女王に仕掛けた。
だが――。
「甘いよ!!」
一歩、届かぬ。
繰り出した刀の切っ先は空を虚しく切って、代わりに新女王の繰り出すレイピアが彼の身体を引き裂いていく。むくつけき水軍の男たち変わらない、褌スタイルの彼の身体は、今、斬り裂かれた傷痕から滴り落ちる血により染まっていた。
血と共に滲み出る汗。
どうして目の前の女に自分の斬撃が届かぬのかという歯がゆさ。
それがモッリ水軍次男の動きを更に荒くする。
冷静さを欠いた攻撃は更に大味となり、新女王に容易く避けられる。いわんや、今彼は完全に、新女王の掌の上で踊らされていた。
この勝負、もはや決着を待つまでも無く新女王の勝ちである。
もっともそれを新女王が独力で勝ち取ったかと言われればそれは違う。
彼女がモッリ水軍の狂犬――次男坊と尋常に立ち会える、また、彼を剣という技術で上回ることができるのは、ひとえに戦闘という混乱の中に置いてそれに集中できる場を作り出している人物がいるからに他ならない。
そう、本来であれば。
「くっ、兄上の擁護に回りたい所だというのに、まったく手が出せない。なんだ相手側のエルフは。ことごとく私の弾丸に魔法を当ててくる」
モッリ水軍の三男坊――カゲが、次男坊をサポートするはずであった。
遠間からの銃による攻撃。
波頭を越えて、背負って持ってきた筒の中に込めてあったそれを、二・三撃ち鳴らして兄の擁護をしようとした彼であったが、上の台詞の通りである。
女エルフが繰り出す魔法により、その攻撃のことごとくは新女王に届くどころか、その行動を脅かすことさえもなく無効化された。
侮るなという感じで、杖を構えて笑う女エルフ。
忘れてはいけないがこの女――まごうことなき冒険者である。
男騎士の後ろに隠れているだけの女ではない。
飛びかう鉛玉を火炎魔法により地に落とし、遠距離攻撃を封殺するなどというのは、朝飯前の芸当であった。
「さぁ、どうするモッリ水軍のみなさん。私とエリィのコンビネーションは、思ったよりも悪くないわよ」
そうこうしているうちに女船長たちが徐々にモッリ水軍の兵たちを押し返す。
多勢に無勢。
精鋭たちで乗り込んできたとはいえ、数の優利を覆すのは難しい。
短期決戦や奇襲戦ならばいざ知らずである。
しかもそのキーマンとなる、モッリ水軍頭領の次男と三男はこの体たらく。
もはや彼らに勝ち目はなかった。
それでも、彼らはまだ手を緩めない。
まだ、戦うことを諦めてはいなかった。
「ちぃっ!! ここで退けるかよ!! モッリ水軍に猛将ありと紅の海に名を馳せた、俺の沽券にかかわるってえの!!」
「同じく――モッリ水軍の智将の名に懸けて、勝てると見込んだこの奇襲を失敗に終わらせることはできない。モッリ水軍の名声がこの戦いにはかかっているのだ」
傷だらけの身体で刀を構えて気迫を飛ばす次男坊。
その背後で、早合――鉛玉と火薬を紙にくるんだもの――を砲身に放り込み、再び狙いを定める三男坊。
東の島国セットウッチ海域を支配した海賊の末。
武力により、自分たちの存在を東の島国に知らしめた彼らにとって、みっともない敗北は決して認められないものだった。
負けられない。
負けてはならない。
負けるくらいならば死を選ぶ。
まずいと女エルフが直感する。
死を賭した攻撃というのが、時に戦局を大きく狂わすのはよくある話だ。
追い込まれたモッリ水軍の将二人。
苦し紛れの攻撃が、思いがけずこの拮抗した場を崩しかねない。
すわ、彼女もまた、彼らを前に気を引き締めた。
大ぶり、上段からの斬り下ろし。
新女王を頭上から襲うモッリ水軍次男坊の唐竹割り。それに合わせて、三男坊の鉛玉が彼女の眼前へと迫る。
「火炎の矢!!」
業火を飛ばして鉛の玉へと合わせる女エルフ。
溶け落ちた鉛玉が勢いを失くして、甲板上にべとりと落ちる。
弾けた炎の横をすり抜けて、次男坊の剣閃が新女王に迫っていた。
躱す、紙一重――しかし。
「――足が!!」
溶けた鉛が甲板の上で急速に乾く。
踏み込んだ新女王の脚は、まだ凝固しきっていない鉛に絡め取られてねちりと甲板の上に縫い付けられた。
その隙をまるで見計ったかのように、モッリ水軍次男坊の返す刃が下から走る。
返した刃に日の光が当たって煌めいた。
かと思えば、担ぐ格好で勢いよく次男坊は刀身を上へと向かって押し上げる。
単なる振り上げよりも力の籠った渾身の切り上げに、半歩後ろにさがって躱そうとした新女王が初めてその身に刃を受けた。
しかし。
「刃が当たれば勝てるとでも?」
したたかかな新女王。
この短期間で母親である女傑と同じく、心まで図太くなったか。
彼女は渾身の次男坊の攻撃を、手にしたレイピアの柄頭で叩いて撃ち落とした。
女エルフと同じく神業と言っていい合わせだ。
次男坊、おもわず息を呑んだ。
その刹那である。
新女王は靴底にへばりついた鉛玉を引きはがして構え直す。
弓なりに刀を引いて、繰り出すのは刺突の一撃。
いざ、その刃の先が、次男坊の肩先を捉えた。
ばねのように身体をしならせて新女王が一撃を繰り出そうとする。
勝負あり。
かに見えた。
しかし新女王が持つレイピアが次男坊の身体を貫くことはなかった。
なぜか。
ここに来て新女王がおじけづいた訳でもない。
次男坊に次善の策があった訳でもない。
女エルフが新女王に攻撃を止めさせた訳でもない。
三男坊が再びその筒に早合を放り込んだ訳でもない。
どこから現れたのか、第三者の手が新女王のレイピアを握りしめていたからだ。
むくつけき男たちと変わらない逞しい肉体。
されど、どこかぼんやりとした顔立ち。
どこか間の抜けた感じの男。
しかして、新女王の攻撃を捌く確かな実力を持った手合いが、彼女のレイピアを握りしめてその場に佇んでいた。
「そこまでにしてもらおうかなぁ。悪いけれど、大事な弟なんだ」
「……兄貴!?」
「……テル兄!?」
モッリ水軍長男坊――テル。
締まらないどこかぼんやりとした男は、けれども機を見て戦場に登場した。
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