第592話 ど聖剣さんと正体

【前回のあらすじ】


 影分身の術により分裂させた自分を、無限に敵に突撃させる。

 男騎士はこの技を――無限の変態アンリミテッド・HENTAIと名付けたよ。


「また!! 多方面に迷惑をかける必殺技!!」


 どうでもいいけど、エミ〇くんが宝具レベル5突破しまして、これはやっぱり聖杯捧げて、もういっちょ底上げしてメインアタッカーにしたるべきかなとか思っている訳なんですが、既に弓枠にはギ〇くんが居りまして、どうしたもんかなと困っているんですよね。

 宝具レベル1か、宝具レベル5か、それが問題だ。


「だから!! なんでそんな遠慮もなく、ぽんぽんとFG〇ネタを!! KAD〇KAWAさんがいろいろと絡んでいるの間違いないけれど、他にもいろんな出版社と取引のあるコンテンツなんだから、喧嘩売っちゃダメでしょ!!」


 強者は弱者に牙を剥きませんよ。

 ただ、無視するだけです。

 かわいいもんですよ。

 ただ吼えるだけなんだから。

 しかもそんなに煩くない。

 ハハッ。


 なのでまぁ大丈夫でしょう。


「おい!! そんな冷めた反応で返すな!! 自分で言ってて悲しくならんのかい!!」


 もういろいろと達観してますのでねー。

 はっちゃける所まではっちゃけますよー。


 という所で、男騎士の必殺技が決まって、はたしてどうなるドエルフさん。

 その辺りは――タイトルでお察しください。


「このおざなりかん!! 仕事を最近はじめたからって、ちょっとやっつけ過ぎない!?」


 安定した続きが読みたければ、俺を専業で食っていけるようにするんだな!!

 ふはははっ!!


 すんません、実は仕事でトラブってダウナー状態で無理くり書いてます。(マジ)

 三十超えての未経験分野への再就職って、やっぱり難しいですね。気合が必要ですわ。つって、もう経験分野への転職も絶望的ですが。

 なかなか人生上手くいかないもんです。


 乱歩賞も講ラノも掠りもしなかったしね!!


「落ち込みの本題はそれかい!!」


◇ ◇ ◇ ◇


「ギブ!! ギブギブ!! ギブアップよ!! やめて、これ以上暑苦しいことしないで!! というか、何処触ってるのよ!! 変態、変態、へんたぁい!!」


 それまでの凛として余裕のある感じから一転。

 なにやら可愛らしい声を上げる聖刀トウカ。


 男騎士にもみくちゃにされ、プレスされればギブアップの言葉も出てくるというもの。それでなくても、若い男にのしかかられるなんて、なかなか普通の女性でも耐えられないショッキングな出来事だろう。


 紳士な男騎士である。

 請われればそれは当然辞めるだろう。

 そう思われたのだが。


「言っただろう!! 理想に溺れて溺死しろと!! このティットッツォー容赦せん!!」


「また絶妙に混ぜてる!! どことどこを線でつないでいるのよ!!」


「何を言っているんだ――型月と言えば吸血鬼だろう!!」


「はじまりは確かにそうだったけれども!!」


「というか、絶妙にノリがいいなトウカちゃん。なんだい、聖刀のくせに俗っぽいことしっているのね。魔剣エロス出番なくてちょっとしょんぼり」


「いいから!! 助けなさいよ、この馬鹿スコティ!! ほんとにもう肝心な所で役に立たないわね!! いっつもそう!! ほんとバカ!! 馬鹿バカアンポンタン!!」


 おっと魔剣が声を上げる。

 それまで、まったく聖刀トウカの素性について、思い当たる節がなくてどうしたものかと参っていた彼にとって、その台詞は何か記憶をこじあけるためのヒント足りえるものだったらしい。


 お前、その言いぐさはと魔剣エロスが唸る。

 それに合わせて、男騎士は無限の変態アンリミテッド・HENTAIを解除して、一人に戻ったのだった。


 はんべそをかいて地面に転がる黒髪の美女。しかしながら、さきほどののっぴきならない泣き声の通り、それまでの雰囲気は一気になりを潜めていた。

 まるで少女のような感じで、もうやだぁとその場に突っ伏す。


 もはやその姿に、神々しさは微塵もない。

 あるのはとてつもない親近感だ。


 いや、既視感と言っていい。


「なんだろう、どっかで見たことがあるような。こんな人――いやエルフを」


「……うっぎゃーぁっ!! ちょっと、ちょっと待て!! そういうことか!? おい、なんだよそれ!! それならそうとさっさと言えばいいだろう!! なんで勿体つけるんだよ、意味わかんねーな!!」


 やはり、何かに気が付いたのだろう。

 魔剣エロスが驚きの声を上げる。


 いささかはしゃぎすぎと言えなくもないその叫び声。それに合わせるように、きっと聖刀の乙女が、涙目でエロ魔剣を睨みつけた。

 まるで、全部お前のせいだとそういうばかりに。


 しかしながら、心からの憎しみは籠っていない。


「気が付きなさいよね、馬鹿スコティ!! アンタ私に、って、そう言って渡したんじゃない!! どれだけ私がこれを大事にしていたか分かるの!! 分かっていたら、もうちょっと察しなさいよ!! そんなだからダメなのよアンタってば!!」


「いや、あの、それは、その。そんなの忘れるじゃんかよ」


「……やっぱり、知り合いだったのかエロス?」


 あぁ、残念なことになと、本当に血の気が引くような声で答える魔剣。

 なんでそんな嫌そうなのよと、叫ぶ聖刀の声色には、やはりもう、微塵のカリスマも威厳も何もなかった。


 そう、そして男騎士にはこんなやりとりに馴染みがあった。

 なんというか、これまでにさんざ経験してきたというか、見て来たというか。

 そういう覚えが少なからずあった。


 そしてその既視感の答えはすぐに明らかになる。


「まさかお前、そんなことしているなんて、想像する訳ないだろう。なんで剣になってるんだよ。びっくりしたなぁ、もう」


「五月蠅いわね!! アンタがエルフソードに魂を固着させることができたんだから、私だってできるんじゃないかってやってみたらできたのよ!!」


「だからって邪魔することはないだろう!! お前はほんといっつも空気読めないな!!」


「これは私なりに考えがあるのよ!! どうしてそうやって、いつもいつも私のやることなすことにケチつけるのよ!! そういう所!! 本当に腹立つわね!!」


「大事だからに決まってるだろ!! はぁーもう!! はぁーもう!! お前、もう、これでも心配してティトたちと一緒に行くことにしたんだからな!! それをお前!! はぁーもう、これだからエルフは困る!! 困ります元祖どエルフさん、困りますぅ!!」


「誰が元祖どエルフじゃーい!!」


 あっと気が付く男騎士。

 その喋りに親近感が湧くのは当たり前。

 そのやり取りに、どこか既視感を感じるのも当たり前。


 仕方なかった。

 だって、目の前の聖刀の正体は――。


「おとなしく寝てればいいだろセレヴィ!! お前、危険な状態なんだから!!」


「アンタと義娘の一大事に、おちおち眠ってなんていられないわよ!! 馬鹿!!」


「モーラさんのお養母かあさん。大魔法使いセレヴィなのか?」


 バグ技で底上げした頭脳でも分からなかった謎が今ここに解明する。

 謎の聖刀にして、かつての大英雄の愛刀というのはまさしく真実。

 しかしながら、それに魂が宿るまでのプロセスがいささかややっこしかった。


 その魂は、彼の愛刀ではなく相棒でできていた。


 大魔女セレヴィ。

 大英雄スコティが愛した、唯一無二のエルフであった。

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