どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第587話 ど第一王女さんと第二王女の行方
第587話 ど第一王女さんと第二王女の行方
【前回のあらすじ】
第二王女を救うため。
愛する祖国を守るため。
第一王女はついに、女王として君臨する覚悟を決めた。
彼女は白百合女王国を導く者として覚醒したのだ。
出陣の鬨の声がジューン山の裾野に広がる。今、反乱軍と正規軍の正面衝突が始まろうとしていた。
はたして、第一王女エリザベートは勝利をもぎ取ることができるのか。
そして、男騎士たちはそんな彼女たちをどうサポートするのか。
いよいよ第六部クライマックス。
雌雄を決する戦いが始まる。
◇ ◇ ◇ ◇
「全軍前進!! かかれぇっ!!」
「おぉっ!!」
第一王女の剣が青空を指し示す。
ジューン山の頂に広がる水色の空に向かって鋼の剣が鈍く光る。その先に向かって、緩やかな斜面を駆けあがっていく第一王女率いる正規軍+義勇軍。
ランチェスターの法則を今更引き合いに出して戦闘についてうんぬんかんぬんと語ったところで仕方があるまい。結局の所、戦いとは機動力と兵数によって決まるのだが、その定石を覆すからこそ戦略物は面白い。
奇計をして勝敗を断じない。
しかしながら、結果として奇計が勝敗を決することはある。
「なにぃっ!! 何故ここに第一王女とその軍勢が!!」
「数が多すぎる!! いったいいつの間にこれだけの兵力を集めたんだ!!」
「くそっ!! 首領の親衛隊――Ⅵ号戦隊サーバルちゃんは先程の奇襲でダウンしている!! これが元から狙いだったというのか!!」
「汚いぞ!! 白百合女王国軍!!」
レジスタンスの戦力はそこそこに仕上がっていた。
しかし、やはり実戦経験のない部隊というのは数を揃えても適切な動きをすることは難しい。どんなに調練を積んだとしても、所詮は素人集団けだしなのである。
白百合女王国軍と正面衝突する前に、軍事的な行動をとらなかったことが混乱に拍車をかけた。いや、それに加えて、女エルフたちによる強襲もある。
なによりも、彼らの精神的な支柱である、首領ことツナギちゃんにして
レジスタンス側の士気は、この戦いに臨むにあたって完全に消失していた。
士気の消失は機動力の停滞につながる。
機動力の停滞は戦力の減少を呼ぶ。
数の上では拮抗している。山上という地の利もある。
そんな戦略的優位が消失するほどに、レジスタンス軍は指揮系統に大きな打撃を食らっていた。そして機能不全に陥っていた。
そこに、思いがけず女王としての片鱗を発揮した第一王女。
そして彼女が率いる士気の高い兵たちである。
戦線は拮抗――やや第一王女率いる正規軍+義勇軍の優勢で始まった。
幾度となく槍を合わせ、馬が横面から突撃し、弓兵部隊が矢を雨のように降らす。
傷を負った兵たちが次々に後方へと下がり、代わりにせり出てきた年若い兵たちが槍を握る。
しかし、隘路のため全軍が衝突することはない。
本来であれば、数の優位がモノを言う山道での衝突は、奇しくも士気の高い第一王女側に地の利をもたらした。
そうこうしている内に――。
「あぁ、東の砦から煙が!!」
「西の砦からもこちらに向かって矢が!!」
要塞として整備の整えられた梁山パーク。
山道の東西に向かってせり出ている木造りの砦には、第三王女率いる諜報部隊――そこから選りすぐられた工作兵が突入していた。
砦の中を少数精鋭により進軍し、瞬く間に制圧。
打ち寄せる正面軍に気を取られ、また、砦という防衛拠点の運用に手間取った隙を逃さずに、すかさず彼女たちはそこを無力化。
第一王女たちが率いる軍の制圧下に置いた。
こうなるともはや一方的である。
「うわぁっ!! 砦から矢が!!」
「どこにも逃げられない!! どうすればいいんだ――ぎゃぁっ!!」
逆包囲。
本来であれば、砦を左右に正面から敵を迎え撃つはずの梁山パークの拠点は、一転して敵から逃れることのできない袋小路へと変貌した。
西の砦から矢の雨。
東の砦からは炎が風に煽られて迫る。
もはやこれまで。
逃げる場所もないのに後方へ後方へと下がった梁山パークの兵たち。槍を交える者よりも逃げる者の方が多い状況下で、完全に戦の趨勢は定まった――。
かに思えた。
「みなさん!! 落ち着いてください!!」
「おぉっ!! ツナギちゃんさま!!」
「我らがリーダー
「梁山パークの頼れる指導者!! 聖ジョージさま!!」
慌てふためくばかりだった梁山パークの者たちが一斉に正気を取り戻す。頼れる彼らのリーダー役が、その顔を出したからに他ならない。青いツナギがよく似合う、どこかとぼけた顔をしたそのリーダーは、剣を手にして第一王女の前に歩み出た。
人の上に立つ者としての器かどうかは分からない。
しかし、人を率いる者としての矜持と責任感は持っている。
この混乱を前にして、逃げも隠れもせず先陣に出てきたのがその証拠だ。
これに戸惑ったのは第一王女。よもや、レジスタンスのリーダーが、このように正義感に溢れるような行動をとって来るとは思わなかったからだ。
そんな中、ハゲ修験者は偽りの姿で、狼狽える仲間に檄を飛ばした。
しかしその内容は――。
「みなさん!! こんなこともあろうかと、山の北側に脱出用の山道を拓いておきました!! そこを使って逃げてください!! 負傷兵と収容している傷病者たちを連れて行くのも忘れずに!!」
「出雲虎さま!!」
「梁山パークはどうなるのですか!!」
「ここは放棄します。ここまで攻め込まれたとなっては、もはや我々もこれまで。今は一人でも人命を救うことを優先しましょう」
「けれど、このような軍勢どうやって!!」
「それは僕に任せてください!!」
仲間たちに対して撤退するようにというものだった。
かくして、第一王女たちの前に立ちふさがる
レジスタンスのリーダーに殉じようとするものは一人としていない。
それが人徳のなさから来る物ではないことは第一王女にも分かった。
むしろ逆――。
「貴方、よほどレジスタンスの者たちに信頼されているんですね」
「そんなぁ。照れるなぁ」
得体の知れない相手と第一王女が身構える。
そんな彼女に向かって剣を一振り。空を十字に斬ってみせれば、青いツナギのどこかかわいらしい首領の姿が消え果る。
代わりに現れたのは禿げ頭の修験者であった。
そう――。
「ミッテル使徒九傑コウソンショウ参る!! だまし討ちに力なき民への蹂躙と、貴様らの悪行もはや見過ごせぬ!! ここにこの命果てようとも、白百合女王国の呪われし血統を断ってみせよう!!」
その正体を露にして、ハゲ修験者が気炎を上げた。
怒りに、その背中は燃えていた。
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