どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第585話 どエロ魔剣さんとまさかの副作用
第585話 どエロ魔剣さんとまさかの副作用
【前回のあらすじ】
どうして男騎士がバカから一気に天才になってしまったのか。
皆さん、来週までによく考えてきてくださいね。
「おい!! なんだその上から目線のあらすじ!! ちゃんと説明せいや!!」
まぁ、ちょっとややっこしい話になるんですがね。
いわゆるコンピューターの中で数というものは、0と1の組み合わせによる二進数表現により管理されている訳です。それでもって、整数というのは、負の数まで表現できる符合あり整数型と、負の数を表現できない符号なし整数型というものがあるんです。
どうしてそういうものがあるかと言えば、まぁ、同じメモリ容量でも、前者と後者で倍の数を表現することが――。
「なんでそんな小難しい説明になるんや!! 分からんやろ、コンピューター関連の仕事している人間以外にそんなこと!!」
まだ話の途中じゃないですか。
腰を折らないでくださいよどエルフさん。
難しい話だからって茶々入れないでくださいよどエルフさん。
分からないものを分からないという勇気。
そういうのって大切だと思いますよ。
「……いやけど、細かいこと言うと最大値から減算された値じゃなくて、最大値から減算した値に1足した数字になるのが正解じゃ」
とにかく!!
この異世界のステータスは全て
故に、減算処理を間違えると、ステータスがバグってしまうのだ。
男騎士が賢くなったのはつまるところ、バグ技によるものであった。
「……強引だなぁ」
BYTE型で管理してるんじゃないのとか、そういのは勘弁勘弁。
◇ ◇ ◇ ◇
「なにその理屈!? バグ!? はぁっ!? 意味がわかんないんだけど!?」
「安心してくれモーラ。俺様も言っていて自分で自分の言葉が信じられない」
「だぞ。馬鹿をさらに馬鹿にしたら天才になったなんて、そんなことがあっていいのかだぞ。この世の知性に対する冒とくみたいなものなんだぞ」
「けど、実際賢くなっているのだから、何も言えませんよね」
事実は小説より奇なり。
否。ステータスは理屈に合わない。
世界の法則の裏を突くまさかのステータス変化に、女エルフたちはげんなりとすることしかできなかった。そして、その事実を受け入れることができなくなった。
そんなしょうもない理由で、まさか男騎士の馬鹿が治るだなんて。
もはや彼の知性についてはどうすることもできない。
ずっとそのステータスを引きずって、これから先も生きていくしかないと思っていた女エルフたちにとって、それは僥倖よりも驚きの方が勝る出来事だった。
男騎士の馬鹿が、まさか治る病気だっただなんて。
いや、そもそもそんなことが起こりえるのかと、そういう気持ちだった。
「だぞ。確かに、言われてみれば合点は行くんだぞ」
「行くのケティ!?」
ここでいち早く、現状に適応したのは知力がカンスト気味のワンコ教授だ。
彼女はいつものしたり顔でこそないが、なるほどという感じで倒れる男騎士を見ていた。
その隣で、法王もまた何かに気づいたらしい。
ワンコ教授の言葉に首肯を返した。
女エルフ一人だけが納得が言っていない。
いったいどういう理屈なのよと、彼女はワンコ教授に食ってかかる。
「だぞ。知性マイナス系のステータス魔法というのは、古今東西調べても最大2までのものばかりなんだぞ」
「しかも重ね掛けはできないようにできています。そして、知性はどの種族固定値的に見ても、どう頑張っても2を下回ることはありません」
「だから!?」
「だぞ。そもそも、知性がマイナス側に振り切るということは、この世界では起こりうることのないレアケースなんだぞ」
「そう、絶対に起こりえない事象なんですよ」
それがどうしたというのか、事実目の前では起きているではないか。
絶対に起こりえない事象が今起こっている。
その時点で、その絶対に起こりえないという前提は崩れ去っているのだ。理屈は破綻しているのだ。
しかしながら、説明されると女エルフの胃にそれは驚くほどすっと落ち着いた。
男騎士の知能が1しかないという奇跡。
それを更に蒸発させて0にするという必然。
そこから更に知能値を減算するという偶然。
実際問題、この世の誰もが想像していない事態が立て続けに発生している。
そりゃそんなことが重なれば、何かの拍子に男騎士の知性値が逆にマックスに振り切れることもあるだろう。
そう、女エルフは納得してしまった。
破綻した理屈を受け入れてしまった。
だってもう、そう納得するしかなかったから。
これ以上この案件について真面目に考えれば考えるほど、逆に知能が下がりそうだった。いや、より具体的には、違うステータスが下がってしまいそうだった。
そう、S〇N値とか――。
「認めたくないけれども、認めるしかないみたいね」
「だぞ。世の中には不思議なこともあるんだぞ」
「馬鹿と天才は紙一重とはよく言いますが、まさかそれを実際に体現してしまうとは。恐ろしい話もあったものです」
馬鹿から一転して天才となってしまった男騎士。
そんな彼がのっそりと立ち上がる。
どうやら分かってくれたみたいだなという感じにやれやれというため息を吐きだす彼に、再び瞬間的に殴
しかし、それは法王によってどうどうと押し留められた。
確かに、馬鹿だと思っていた人物が自分より賢くなるとか業腹イベントである。
しかも、努力とかまったく関係なく、単なる偶然で賢くなったのだ。
そら火炎魔法で焼いてしまいたいという気持ちにもなろう。
殴
しかし。
「今は俺の知力値についてはどうでもいいだろう。それよりも、白百合女王国の存亡をかけて、力を尽くして戦う時だ」
「……悔しいけれど、その通りよね」
「だぞ。ティトの言う通りなんだぞ」
「このままでは、梁山パークが白百合女王国内で実権を握るのは時間の問題です。今はティトさんのステータスアップもプラスと考えましょう」
今やらなければいけないことは、男騎士の異常ステータスを治すことではない。
それよりも先に、国の建て直しである。
白百合女王国を元ある形に戻さなければならない。
より具体的には、あるべき未来へと導かなくてはならない。
「第一王女であるエリィが白百合女王国の王女として即位する。それが、最もこの国の安寧に繋がることだと、この俺の灰色の脳細胞が囁いていている。梁山パークなどに任せることはできない。故に――」
「なんとしても捕まった第二王女ローラを救い出す」
「だぞ!! そして、女王としての正統性を国の皆に示すんだぞ!!」
「レジスタンスの芽を摘み、同時に誰もが認める実績をということですね、ティトさん?」
法王の問いかけにあぁと男騎士が力強く頷く。
黄色い虎の顔が揺れて、木漏れ日の中に赤い瞳がきらめく。
その力強い眼差しに、女エルフたちも腹を括った。
「だぞ!! 白百合女王国の復活の道はこれしかないんだぞ!!」
「こうなってしまっては仕方ありませんね。行きがかりです。全力で、それに乗っかるとしましょうか」
「エリィの勝利のために。彼女たちのためにできることをやる」
それが私たちが今しなくてはいけないこと。
そう呟いて、女エルフたちは顔を見合わせ頷いた。
目標はここに定まった。
そして道もまた、知らず知らずのうちに出来上がっていた。
あとは全力でそこを駆け抜けるだけだ。
「エリィ達が率いる軍勢の到着を待って、俺たちもゲリラ戦を展開する。あくまで、戦うのはこの国の正統な政府であるエリィ達だ。そのことを忘れるなよ」
「なによ、ちょっと知力があがったくらいで調子に乗らないでよね」
「だぞ。分かっているんだぞ」
「乗りましょう、ティトさんの作戦に」
離れていてもやはりパーティ。
女エルフパーティたちはここに素早く目的と手段を共有し、それに向かって行動を開始するのだった。
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