第547話 ど男騎士さんと鉄壁の男
【前回のあらすじ】
謎の包容力を発揮して男騎士をときめかせるモノリス男。
「もたれかかってもいいのよ」
ウホ、いい壁。
思わず壁にドンしたくなる。
いや、されたくなる男っぷり。
男騎士も魔剣も謎のパパみを感じずにいられないのだった。
流石のパン・モロ。
昭和洋画の名男優みたいな男っぷりである。
「だから!! そういうネタ!! 大丈夫なの!?」
いざとなったら、ショーン・コネ〇ーとかに変えます。
そっちならきっと大丈夫のハズ。アライブできるはず。
☆頑張れKADOKAWAさん!! 難しい話が発生したら解決してくれると僕は信じている――!!
「別に書籍化作家でもないのにその煽り必要!? というか、ハリウッド以外にもいろいろ解決しなくちゃいけない問題山積みよね、これ!!」
☆もう書籍化不可能(版権問題的に)の傑作といって過言ではないかな――!!
「過言だよ!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「ふーん、気がついたらこのカタコンベの中にねぇ」
「あぁ。まったく、困った話もあったものだ。まさかこんなことになっているとは俺も思っていなかった」
「だろうなァ。なにせ白百合女王国の女王たちが、魔神シリコーンの呪われた血を受け継いでいるなんて、誰も知らないだろうからな」
「秘匿されてきたことだからな。王族でも、知っている人間は限られるんじゃないか。特に、それと知らずに結婚しちまった、婿養子の王なんかはたまったもんじゃねえだろうなぁ。まぁ、囚われちまったもんは仕方ないんだけれどな。ごちゃごちゃ言うのは男らしくねぇ。俺はもう腹を括ってるぜ」
「おぉ、なんと男らしい。流石だなパン・モロさん、さすがだ」
「……ふん」
すっかりとモノリス男に心服した男騎士。
そんな彼に対して、同じくモノに宿った元冒険者だからだろうか。
それとも、稀代の大英雄だからだろうか。
魔剣エロスはいささか冷ややかかつ淡白な返事をした。
どうやらモノリス男のことを彼は警戒しているらしい。
いつもは喋り出したらやかましいくらいに色々言うインテリジェンスソードは、珍しく沈黙する。
そんな愛刀の様子に、気が付かない男騎士でもない。
まぁついて来いと先を行くモノリス男。
彼からそれとなく距離を取ると、彼は心の声で魔剣エロスと会話をした。
「エロス。何か警戒しているのか」
「警戒するだろ。お前、あんな得体の知れない奴。元は冒険者とはいえ、こんな魔窟みたいな場所に簡単に適応できちまう神経からしてまずどうかしてやがる。どう考えてもまともじゃねえぜ」
「……確かに。しかし、彼は実に男らしい冒険者だ。それを考えれば」
「俺も環境適応能力には自身のある方だがよ、あんな風に塔の上でおっ死んだ時には自分が分からなくなっちまった。お前の身体を乗っ取ろうとしたことを覚えているだろう?」
それは未遂に終わったではないか。
男騎士がすっかりと自分のされたことを水に流して魔剣に言葉を返す。
だが、確かにその事実は、モノリス男の異常さを浮き出させる一つの指標だ。
世に知らぬ者のいない大英雄。
勇者スコティでさえ、百年の魂の牢獄の中で修羅に心を堕とさなければやりきれなかった。それを考えれば、ただの一介の冒険者であるモノリス男が、この狂気のようなカタコンベの中で正気を保っていられるのは異常と言える。
それに――。
「他にも怪しい部分はいろいろある」
「いろいろとは?」
「まず、この迷宮のことについて知り尽くしているが、脱出していないってことだ。おおっぴらに外を出歩けない体になっちまったってのは分かるが、それにしたって、悪霊たちから身を隠しながらここに留まる理由が分からねえ」
魔剣の推理は冴えていた。
確かに、モノリス男がこのカタコンベの中に、適応しているのは妙だ。
男騎士たちを脱出させてみせると言いながら、彼はこの場所から何故か脱出できずにいる。しかも、やってくる子供の幽霊たちからその身を隠してだ。
どうしてそこまでしてカタコンベに執着するのか。
その理由をモノリス男は男騎士たちに語っていない。
よもやとは思うが自分たちを嵌めようと思っているのではないか。
そんな暗い不安が男戦士の胸を過る。しかし、先ほどまでのやり取りの中で、モノリス男から感じた頼り甲斐は本物である。
本能を信じるべきか、それとも、状況から導き出した推理を信じるべきか。
不安に奥歯を噛み締める男騎士。
そんな彼に、ふっと鼻で笑って魔剣が語った。
剣なので表情は分からないが、どうやら彼なりに何か思惑があるらしい。
「まぁけど、そうは言ったが、だいたい俺様的には察しがついてる。たぶん、どういう事情なのかについても、うっすらとだけれど思い当たる部分がある」
「……本当なのか、エロス?」
「嘘ついてどうすんだよ。まぁ、このカタコンベから出る所まで、無事に送り出してくれるのは間違いねえよ」
そこは間違いないけれど、と、言った時。
ぴたりと、前を歩いていたモノリス男が、その足――と言っていいのかどうかわからないが、のっしのっしと上下させていた壁の下辺を止めた。
参ったなと、焦りを滲ませた男の声がカタコンベに響く。
幽霊の気配はない。
しかし、それ以外の気配が前から迫ってくる。
「本当に厄介なことをしてくれる。暗黒大陸の連中め。ここに封印されている魂まで回収して、魔神の力にしようって言うんだからなぁ。ごうつくって奴だ」
「なに?」
わらわらと姿を現すのはオークたち。
以前、南の国との国境で、暴れていた者たちと似た感じ――つまり、暗黒大陸の出身を思わせる、不逞の輩たちであった。
手に斧を、剣を、メイスを。
数々の得物を手にしたモンスターたちは、暗いカタコンベの中でもありありと分かる白い吐息を捲いている。
すぐにそれに混じって怒号が飛んだ。
男騎士が魔剣を抜き放つ。
「すまない!! 壁役は任せてくれて構わないが、攻撃の方は頼む!!」
「任せてくれ、パン・モロ!!」
突然の交戦がここに始まった。
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