第508話 ど女エルフさんと切り札
【前回のあらすじ】
儀式魔法【漢祭】ついに発動。
したはいいのだけれど――。
「……満を持しての発動にしては、演出がなんか微妙過ぎない!?」
まぁ、天武の極引いて単発終了だったのを、未だに引きずってるんですよ。
「もう三年前くらいの台だよね!? というか、筆者のスロ知識っていまさらだけれどだいぶ古くない!?」
病気と貧乏で打てなくなりましたので。
まぁ、そんな訳で、スロネタもバジ絆ネタとかしか拾えないんですわ。
「……いや、病気がどうとかの前に、ギャンブルはやめようよ」
☆小説なんて書いてる時点で俺はギャンブラーなんだよ!!
「煽り文でなんかいいこと言った感じにしてるけど、まったくしまってないからね!!」
◇ ◇ ◇ ◇
天に黄金の光の柱が伸びる。
男騎士が入った赤襖から伸びたそれは、雲を穿って霧散せると、まるで矢のように中央大陸の大地へと降り注いだ。
降り注ぐ光の矢。
流星よりも神々しく、火矢よりも猛々しいそれは、雲の次には大地を穿つ。矢が穿たれたそこにはどうしたことか、金色に輝く人の姿が現れた。これはいったいと息を呑む暗黒大陸の兵士。そして、中央大陸連邦の兵たち。
黄金色に輝くその人影。
彼らは等しく――。
「
タフでワイルドな格好をしつつ、ややっこしい感じの台詞を口にした。
敵味方問わず殺伐とした戦場に戦慄が走る。そして、そんな戦慄のメロディーに合わせて、次々と戦場に光の矢は降り注ぐ。
ダダスダンダダン!!
ダダスダンダダン!!
ここまであまり擬音ネタは使わず、くどい言い回しで伝えてきた本作であるが、ここはこの圧倒的な絶望感を味わっていただきたく候。あえて分かりやすい、激熱演出効果音にて、これよりはじまる
さぁ、これより、中央大陸連邦共和国軍――反撃の時である。
黄金のタフでマッチョな男たちは、まさしく【漢祭】で召喚された中央連邦大陸に眠る熱い戦士たちの魂。この大陸を守るために戦ったもの。あるいは、内紛の中で命を失ったもの。冒険の果てに命を失ったもの。
それぞれ、死した理由はそれぞれである。
しかし、この中央大陸を愛してやまない者たちばかり。
そんな彼らが暗黒大陸の軍勢を前にして、今、気炎と咆哮を上げる。
げぇと暗黒大陸の兵と魑魅魍魎たちが声を上げれば、彼らは拳を振り上げて殴り掛かった。その拳は太くそして硬い。黄金色に輝く男たちの鉄拳制裁、殴りまくりのどつきまくりの戦いが、今ここに始まった。
「……くそっ!! せっかくの暗黒剣による死霊の軍団が!!」
「暗黒大陸にも怨霊が居るならば、中央大陸にも守護者が居るということだ!! シュラト!! ここに今、暗黒大陸と中央大陸の兵力の差はなくなったぞ!! それではこれより総力戦といこうではないか!!」
赤襖が開かれる。
金の褌をはためかせて、男騎士が暗黒騎士を見据えて言った。
両者睨みあうその間に――。
「あらぁん!! ついに使っちゃったのね【漢祭】!!」
「……魔女ペペロペ!!」
魔女ペペロペが踊りこむ。
ゴブリンが聖遺物の鎖により抑え込んでいたはずの彼女は、今その戒めから解放されて、男騎士の前に立ちふさがっていた。その背後には、鎖を握りしめたまま、脚を蔦に絡めとられたゴブリンの姿がある。
あと一手、手が足りなかったか。
しかし――。
「させるか!! ペペロペ!!」
「アンタの相手はこの私たちよぉ!! ティト君たちには手を出させないんだからぁ!!」
後ろから、斬りかかるのはドワーフ男とオカマ僧侶。
ドワーフ男は青いエルフソード。オカマ僧侶は金色の杖。
それぞれ振りかぶって、大魔女ペペロペへとそれを殴り抜く。
だが、やはり、彼女は災厄の魔女ペペロペ。
暗黒大陸の魔神の力を色濃く受け継ぐ魔女は、伝説の勇者二人の挟撃に対して、視線も向けずに障壁魔法を展開させてそれを防いだ。
渾身の一打。
しかし、あえなくそれははじき返されてしまう。
暗黒大陸の巫女は怪しく男騎士に向かって微笑んだ。
「儀式魔法【漢祭】。けれど、それを執り行う触媒の男がいなくなれば、それを執り行うことはできないわ。難儀なものよね、こういう魔法って」
「――くっ!!」
確かに暗黒大陸の巫女の言うとおりである。
儀式魔法の触媒である男騎士が倒れれば儀式はご破算。儀式により中央大陸の大地に満ちた戦士たちの魂も消え去ってしまう。そうさせぬように、男騎士を守らねばならないのは道理である。
しかも男騎士はあろうことにほぼ全裸。
ふんどしの姿である。
丸腰、まるで手が出せない。
これほどまでに早く、魔女ペペロペが肉薄してくるとは思ってもいなかった。迂闊。男騎士を守らんと、海母神マーチの力を借りようとしていた女エルフも、すっかりと油断しきっていた。
「さぁ、では、死になさい――新しい時代の英雄よ!!」
「――ちょーっと待ったぁ!! 古き時代の登場人物が、今を生きる者たちにちゃちゃを入れるなんてナンセンスだぜ魔女ペペロペ!!」
それは光の矢とは別に、男騎士の目の前へと飛来した。
魔女ペペロペの身体を切り裂くようにして飛来した。
男騎士の股間のロングソードにちょうど重なるようにして地面に突き刺さった。
赤い刀身に野太い声。どこか男らしさを感じさせるその声。
そう、法王の手の中から零れ落ちるように男騎士に向けられたそれこそは――。
「まさか!! そんな!!」
「エロス!! どうしてお前、こんな所に!!」
魔剣エロス。
男騎士の愛剣にして、人の精神を操る魔剣。
そいつが男騎士の股の間に刀身を輝かせていた。
「どうしてってか!! んなもん決まっているだろう!! 俺様だって、この瞬間を一日千秋の思いで待っていたんだからよォ!! さぁ、やろうか、暗黒大陸の巫女――!!」
言うや早いか、魔剣エロスの刀身から――金色の光が立ち昇った。
それはまさしく中央大陸の守護者たちと同じ。
いや――。
「だぞ!? 嘘なんだぞ!?」
「まさか、あのお姿は!!」
「……あの時の戦士。まさか、その正体がアンタだったなんてね」
光り輝くその男は、男騎士とそう変わらない背丈。
けれども、他の中央大陸の守護者たちにはない、力強い瞳で暗黒大陸の巫女を睨んでいた。はちきれんばかりのオーラをその身から放って、そこに起立していた。
知る人ぞ知る。
いや、この中央大陸に生きる者で、知らぬ者のいないその男の名は――。
「クリネス、エモア、そして、ネイビア!! ありがとうよ!! やっぱりお前ら、俺様が選んだ最高の仲間だぜ!! がははっ!!」
最も偉大な大英雄。
スコティであった。
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