第401話 逃がし屋さんとダブルスパイ
【前回のあらすじ】
そんなところで引っ張っちゃダメだ。
もう少しすっきりとしたところまで書かないとダメだ。
「愛はジェ〇ガやめろ!! 若い子にはわからないでしょ!!」
前回はもう作者の趣味全開。
ケロ〇、スネークマ〇ショー、フロッグマ〇ショーと、やりたい放題やらせていただきましたが、いったいどれだけ分かるのでしょうか。
いや、僕もスネーク〇ンショーは「ピエール〇カトリーヌ」くらいしか知らんのですが。
「……ほんと、パロディやりたい放題よね」
書籍化とか万が一にもなったらその時は自重します。
「……つまり自重しないと」
書籍化したいなー。したいけど、パロディもしたいなー。
いや、単に他人の実力に縋るんじゃなくて、この時代の空気を残す、自分の愛するモノを正直に伝えるという意味で、パロディって僕はとても好きなんですよ。
「……その割には〇ヴァ見てないじゃない」
パチンコでさんざん貢いだからええやん!!
ビ〇ティさん!! ほんまもう、金枠演出で外すとか勘弁して!!
「それと最近あらすじ遊びがひどい気がするけど」
そうですね、ここら辺にしといた方がいいですね。
という訳でこんな所で引っ張って、今週末も逃がし屋さんパートに突入です。
老騎士から、凶騎士が怪しいと打診された彼は、いったいどうするのか――。
「こっちの方が、よっぽどファンタジーしてるわよね」
どエルフさん外伝『逃がし屋カロッヂ』、はじまります。
◇ ◇ ◇ ◇
黒い死神ヨハネ・クレンザー。
かつてこの世界を救った大英雄スコティの終生のライバルにして、魔女ペペロペの争乱の際には彼と共に力を合わせ戦った、もう一人の英雄である。
しかしながら、スコティパーティーが、ペペロペとの戦いを境にして、歴史の表舞台から退場したのと違い、彼は長く人の歴史に関わり続けた。
暗黒大陸での決戦の後、片手と片目を失い、普通の戦士であれば再起不能となる大けがを負った黒い死神。
しかしながら彼はその身体的欠損をものともせず、その後も戦士として冒険者家業を続けることとなる。死神は、どうあっても死神と、噂されること六十年。その脅威の活躍ぶりを評価した当時の連邦騎士団が、彼を団長として登用した。
とはいえ、黒い死神の異名は伊達ではない。
連邦騎士団という最高権威の申し出にも拘わらず、彼はそれを三度拒否した。それを、必死に説き伏せて、なんとか騎士団第一部隊の隊長へと据えたのが――当時は第三部隊を預かっていた、若き智将――のちの老騎士バルサ・ミッコスである。
若き智将は五回りほど年の離れた凶気の戦士を気遣い、礼を尽くし、そしてこの大陸の平和を説いて騎士団へと勧誘した。
聞く耳を持たなかった凶戦士だが若い騎士の情熱についに折れた。
以来、二人は連邦騎士団の双璧として、大陸の平和を担っていくことになる。また、連邦騎士団の顔である第一部隊の団長に就任した凶騎士は、徐々に人間としての落ち着きを獲得していき、最終的には好々爺――とまではいかないが退団の後に孤児院を開くほどの人格者へと成長した。
魔女ペペロペの争いより百と八十余年。
凶戦士ヨハネ・クレンザーはこの世を去った。
ハーフエルフの血を継いでいた彼の寿命は人にしては長く、しかしながら暗黒大陸との戦いにより摩耗したのかエルフとしては儚かった。
歴史の生き証人にして大英雄の死に連邦騎士団の誰もが喪に服し、彼が建てた孤児院はしかるべき者へと受け継がれた。
しかし――。
「親子、いや、祖父と孫くらいに歳の離れた相手だった。だが、ワシとあの方は、心の深いところで通じ合う戦友であった」
「バルサ殿」
「だからこそ、ワシは知っている。ヨハネ殿が死の間際に、禁を犯して海を渡ったことを。そしてその帰りに――あのカーネギッシュを連れて来たことを」
それは本当に、逃がし屋も初めて聞く情報であった。
二代目黒い死神のカーネギッシュ。あの、ヨハネ・クレンザーが、死を前にして己の技術のすべてを教え込み、育て上げた次代の凶戦士。
ひとたび戦場に姿を現せば、黒い嵐のように暴れまわり、血しぶきと砂嵐を巻き上げて戦場を駆ける鬼と化す。鬼さえも、ひるんで逃げだす戦闘狂。その太刀筋は余人を持ってして捉えることはできず、不幸にもその死神と相対した者は、気づいたときには一の太刀と返す刃で三つに斬られているという。
その強さはてっきりと、凶戦士ヨハネ・クレンザーの薫陶によるものだと、カロッヂは思い込んでいた。
しかし――。
「彼のその強さは、暗黒大陸出身だからということか」
「……それだけではない。ヨハネ殿は、彼――カーネギッシュの力を引き出すために、とある仕掛けを使っていた」
「とある仕掛け?」
「呪いのヘルメット――
凶戦士という名を冠するにはどうにもなよなよとした男だ。
彼を見たときに、逃がし屋が感じた素直な評価であった。それを覆すのに、その呪いのヘルメットが使われているというのならば、なるほど納得はできる。
しかし、なんとも背筋の凍る話である。
暗黒大陸出身の人間に呪いの装備。
それだけの手間をかけて、先代黒い死神は何をしようとしていたのか。
今の話を聞くだけでは――。
「まるで、ヨハネ・クラウザーが、この時のために彼を育てたように聞こえる」
「いや、彼はそうではない。純粋に、カーネギッシュに、戦士として強くなって欲しいと、望んであのようなことをしていたのだ。それは間違いない」
「本当にそう言い切れるのですか?」
「言い切れる、この命に誓って」
ならば逆にカーネギッシュを疑うのは何故なのか。
先代黒い死神を信じると言いながら、当代の黒い死神に疑惑の視線を向ける。老騎士の思惑が逃がし屋にはわかりかねた。
もう自分が内偵であることは割れている。
臆すことなく、逃がし屋は老騎士へと真意を問い詰めるように視線を浴びせた。
老騎士はその視線から一度逃げ、そして、意を決したように再び視線を戻した。
「暗黒大陸と縁があるのはあ奴だけじゃ――それと」
「それと?」
「信じたいのだ。私は、友と、そして師と仰いだ人間が、最後に残した一粒種。それが善良なるものであるということを、はっきりと信じたいのだ」
なるほど。
カーネギッシュが裏切っているという根拠は何もない。
書類にあった通りだ。
誰が裏切っているのか、調べた限り第一部隊でもわからない。
そんな状況で――彼を調べるというのは、彼が怪しいから調べるのではない。
彼を信じたいから調べるのだ。
老騎士の目の端に涙が浮かんでいる。
やはり、この男が暗黒大陸と通じているようには、逃がし屋には思えなかった。
「……わかりました。探ってみましょう、カーネギッシュの周辺を」
「頼めるか?」
「その代わり、俺もあなたの組織の中で好きに動き回らせてもらう。貴方が裏切っているということも十分に考えられるのだから」
そう言いながらも、逃がし屋は一つの結論を得ていた。
この男は白だ。
連邦騎士団を裏切るには、あまりに――。
背負っているモノが大きすぎる、と。
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