どエルフさん ~仲間殺しの罪を背負って騎士団を辞めた元騎士、奴隷狩りに襲われていたエロい女エルフを助ける。エッチなエルフたちとはじめるきままなハーレム冒険者生活。~
第383話 ど男戦士さんと深すぎるカルマ
第383話 ど男戦士さんと深すぎるカルマ
【前回のあらすじ】
まさかの少女漫画王道ファンタジー風で攻めて来た女エルフ。
その世界観の広さと純愛っぷりに、思わず風の精霊王は「75点」を付けた。
しかし――。
「ワシが見たいのはラブコメ。ラブファンタジー、ラブ大河、ラブシリアスは――なんというか重たいから勘弁してほしいんじゃよ。ほれ、ワシ、お爺ちゃんだから、もうそういう深刻な展開とかついていけんのじゃ」
女エルフの話はカテゴリエラーだった。
◇ ◇ ◇ ◇
春。
所属しているテニスサークルの飲み会で、僕は彼女と出会った。
「私、こういう場所に参加するのは初めてで」
「そ、そうなんだ……」
カシスオレンジのジュースを飲みながら淡い桜色をしたガウンを揺らした彼女。薄桃色をした肩の上を流れる金色の髪。そして、その間から垣間見える鎖骨のラインが、どうしてやけに目に付いた。
「ちょっとティトく~ん。目がやらしくな~い」
「や、やらしくなんて!! なに言ってんだよ!!」
慌てて生ビールを口に運んで――むせた。
テーブルとズボンの上に零れた琥珀色の液体を、彼女は嫌な顔をせず、自分の手ぬぐいで拭う。優しく柔らかい指先が僕の太ももを撫でた時、思わず、体の芯が震えるような、そんな衝撃を覚えた。
「わ、悪いよ」
「ふふふっ、気にしないでください」
「あーあーあー、後輩に迷惑かけて。世話のやける先輩ねぇ」
「誰かさんが変なこと言うからだろう!!」
「ごめんなさいね、こんなだらしのない先輩で」
「いえ。可愛らしくって、私、好きですよ、ティトさんみたいな
可愛らしい。
後輩にそんな風に言われて、普通だったら怒るのだろう。
実際、そんな彼女の発言にサークルメンバーたちは、ちょっとどうしていいか分からないという感じでその表情を固まらせていた。
かくいう僕も、痛いくらいに固まらせていた。
この
けれど。
「……ふふっ」
笑う彼女の視線から逃れられない。ぎっちぎっちに張った僕のズボンを、勿体つけるように擦ってから、彼女は琥珀色の液体を吸ったお手拭きを裏返してテーブルの上に置いた。そして、彼女がほったらかしにしておいた、カシスオレンジに視線と唇を向けると、静かに口元へと運ぶのだった。
おいしい。
ただ呟いただけ。
けれど、その言葉の響きが、僕の体の芯を震わせる。
どうしてこうなったのかは覚えていない。
サークルの飲み会が終わり、明日バイトがあることを理由に切り上げようとした僕を、後輩の彼女は捕まえた。
その薄い胸と華奢な手で捕まえた。
彼女も同じ方向である。
家が煩くて二次会は難しい。だから途中まで送って欲しい。
そんな風に話は流れたように思う。
アルコールでぼやけた頭ではよく覚えていられないし、判断もできなかった。
けれども――僕に送って欲しいと言った彼女は、相変わらず直視したら最後、目が離せなくなるほど艶やかで蠱惑的だった。
「送り狼はダメだからねティトくん」
「しませんよ!! そんなこと!!」
「そうですよ。先輩はそういう人じゃないって、信じてますから」
「どうかなぁ~。こいつ、これで結構むっつりだから」
「やめてくれよ!! それより、最終の電車が出るから――急ごう!!」
僕と彼女は都内から郊外へと向かう最終電車に乗る為に夜の街を駆けた。酔っぱらっていたのも忘れて、駅の改札に滑り込み、階段を駆け上がる。
「あっ」
その途中で、彼女が不意に足をもつらせた。
前を行く彼女を咄嗟に受け止める僕。
ほんのりと、金色の髪からシャンプーの香りがして、僕の鼻先をくすぐった。
最終電車が出発するアナウンスが流れる。
彼女を抱き起し、一緒に階段を上り切ると、ちょうど電車は出発していた。
降りる人は少ない。おいてきぼりを喰らった僕たちは、仕方なく近くのベンチに座った。
「大丈夫? 痛くない?」
「……大丈夫です。それよりごめんなさい、私のせいで」
「あぁ、心配しないで。バイトっていうのは嘘だから」
「そうなんですか?」
「あまり、飲み会とかって、好きじゃないんだ。ずっと笑っているのって、疲れるよね」
「……悪い
そう言って後輩の彼女は口元を抑えて笑う。
やはり正視していられない。僕は慌てて、彼女がもつれさせた足を見た。
木製のパンプスに守られたその白い足。それは、彼女の華奢な体に相応しくとても小さく見えた。
その足首をくんと曲げて――後輩は言う。
「先輩が一つ、秘密を教えてくれたので、私も教えてあげます」
「え?」
「……私の秘密」
知りたくないですか。
耳元で囁くように、甘い声がする。
彼女が今、どういう体勢をしているのか、僕に何を告白しようとしているのか。そんなこと、どうでもよくなるくらいに、僕の胸の高鳴りばかりが煩かった。
「秘密? え? なに?」
実は私は――エルフなんですよ。
思わず視線を向けた僕の前で、彼女は耳元の髪をかき上げる。するとそこには、淡雪のような色味をした細長い耳があった。
怪しく歪んだ桃色の唇。
トルマリンのような瞳。
そして金色の穂が夜風に揺れる。
また、痛いくらいに僕の体の芯が痺れた。
◇ ◇ ◇ ◇
「……20点」
「なぜだァっ!! レーティング的にはギリギリ載せられるレベルだろ!!」
「三十歳にもなったおっさんが、大学の後輩がどうのとか、年上の後輩がどうのとか――痛すぎるのう」
「痛い……人がどういう願望を持とうがそんなのは自由だろう!!」
ぶった斬ってやると剣を抜き放つ男戦士。
そんな彼を、まぁまぁ、まぁまぁと、何故かちょっと機嫌よさげに女エルフが止めた。
「いやホント、ティトさん、ちょっと妄想がイタいわよ」
「モーラさんまで!! いいじゃないか!! こういうのが俺は好きなんだ!! エース・ロマン・パティエンス先生みたいな、純愛なんだけど毒気と色気がムンムンな感じの作品が大好きなんだよ!!」
【人物 エース・ロマン・パティエンス先生: こちらの世界で微エロ青年向け異世界ファンタジーを書かせれば右に出る人はいないという巨匠。かつては成年向けの舞台で活躍し、やはりその独特の世界観で多くのファンを獲得した。なお、トラウマメーカーとしても有名で、成年向け作品ではそのアダルトさとストーリーの後味の悪さから、多くの中毒者と廃人を生み出した。豚汁(白目)】
「まぁまぁ。まぁまぁ」
満面の笑みで男戦士の肩を叩く女エルフ。
同じように妄想が否定されたのが嬉しいのか。
それとも、先ほどの役所が個人的には楽しかったのか。
いつもだったら見せない上機嫌な表情に、男戦士は正直イラついた。
「まったくもう、どうしてお主はそうエロ漫画から妄想の域が出んかのう。知能1にしても頭が悪すぎてちと残念じゃ」
「いいじゃないか!! いいじゃないかぁっ!! 大好きなんだ!! エース・ロマン・バティエンス先生が大好きなんだァっ!!」
「なんにせよ、エロコメは求めておらんからのう。もうちょっと、マイルドな感じのにしてくれると助かるかのう。あ、次、エロに走ったら、試練問答無用で失格じゃからのう?」
「そんな!! まだ、グラース・レッド・ワン先生も大好きだというのに!!」
【人物 グラース・レッド・ワン先生: ツンデレとかニーソとかそういうの書かせたら天下無双と称される異世界ファンタジーの巨匠。エース先生と同じく、成年向けでの長い下積みの末、『
「グラース・レッド・ワン先生好きだもんね、アンタ」
「大好きなんだぁ!!」
男戦士が血涙を流して訴える。
悲しき男の雄たけびが、ラブコメしないと出られない部屋に響いた。
「いやぁ……いちおうこれ小説なんだから、小説作品を引き合いに出してよ」
ごもっともである。
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