第268話 ど戦士さんと意気投合

【前回のあらすじ】


 エロ知能により、なんとか魔剣の精神汚染を回避した男戦士。

 魔剣はさらに妄想力を高め、男戦士を再度自分の支配下に置こうと試みるが――。


「はっきり言おう!! お前の妄想は古臭い!! 百年前のクオリティの萌え要素しか備えていない!!」


「……なんだと!?」


 そこは流石の男戦士である。

 最新の萌え要素と妄想により、魔剣の精神汚染攻撃を跳ね除け――さらに逆に、魔剣の方に最新のそれを教授するという離れ業をやってのけた。


「あぁあぁ~、こころのちんち○がぴょんぴょんするんじゃぁ~」


「そうだろうそうだろう」


「……なんだこのやり取り」


 という訳で、本日もどエルフさんはじまります。


◇ ◇ ◇ ◇


 すっかりと、男戦士の妄想によって教化されてしまった魔剣。


「……ティトよ、いいものを見させて貰った。俺は、この塔の九階で彷徨うようになってからというもの、大切なものを見失っていたみたいだ」


「なに、良いってことだ。同じエルフを愛する者同士じゃないか」


「そうか、お前もエルフメイトだったのか」


「わからいでか。エルフ学園の妄想が頭の中に流れ込んできたとき、俺は直感したよ。古臭くはあるがお前が玄人のエルフメイトであるとな」


「……ティト!!」


「……エロス!!」


 敵対していたことなどどこへやら。

 もうすっかりとお互いを認め合った魔剣と男戦士。


 その手に握りしめ、刀身を見つめる男戦士の瞳には、どこか魔剣に対する信頼に近い色が見られた。


 一方。

 頭の中身を暴露しあうという、地味で退屈な光景を見せられ続けた女エルフたち。


 会話が一段落したのを察した女エルフ。

 ようやく話が終わったのかという視線を男戦士に遠慮もなく向けると。彼女は、魔剣を手にしたままの彼に歩み寄った。


「で、結局どうなった訳、これ?」


「この魔剣、どうやら話せばわかる相手らしい」


「ティトのおかげで新しい世界に気が付くことができたぜ。俺がここに閉じ込められている間に、世界は随分変わっちまったんだなぁ」


「ふぅん。まぁ、なんかそれらしい結論が出たみたいだからいいけどさ。これ、もうこのフロアは攻略したってことでいいのかしら」


 いや、待ってくれ、と、魔剣がすかさず待ったをかけた。

 同じく男戦士もそれに同調するように女エルフに真剣な表情を向けた。


 なんとなく、次に出てくる言葉が分かった女エルフが顔をしかめる。


「……どうだろう、俺も、お前たちの旅の仲間に加えてもらうことはできないか?」


「この魔剣話せば話すほど良い剣なんだ。是非、俺たちの旅の仲間に迎え入れてやりたいと思うんだが? どうだろうか、モーラさん!!」


 話の流れを見ていれば、なんとなく想像できる展開であった。

 そして、そういうことを予見して女エルフもやって来ていた。


 まぁ、そう言うだろうと思っていたわよ、と、溜息を吐き出す女エルフ。


「……駄目に決まってんだろ!! このすっとこどっこい!!」


 女エルフはきっぱりと男戦士の要望を跳ね除けた。


 いや、当然だろう。


 先ほどまで、男戦士の体を乗っ取って、女エルフや女修道士シスターにセクハラをかまそうとしてきた、危険な剣なのである。


 しかも、言うに事欠いて魔剣エロスである。

 そんなものを仲間にしてしまっては――ただでさえ、セックスモンスターを二人抱えているパーティが、更なる混乱に陥るのは必至。


 断るのはやむを得ない判断であった。

 しかし、男戦士と魔剣も食い下がる。


「お願いだモーラさん!! 大事に、俺が面倒を見るから!!」


「お前と一緒にするのが一番危険なんじゃい」


「俺様、これで結構紳士よ? 心のちんち○言う時も、ちゃんと自分で○入れるくらいには紳士よ?」


「それは入れて当たり前なんじゃい!! というか、女性に面と向かってナチュラルに言ってる時点で、少しも紳士じゃないわい!!」


「お願いだぁ、モーラさん!! 大切に、大切にするから!!」


「俺様も、もうこいつの意識乗っ取ったりしようとせんから!! それに、このエル――いや、俺様ってば、結構切れ味もいいのよ? 挿してよし、斬ってよしの、万能魔剣なのよ? それが今なら、タダでついてくるのよ?」


「いらんわい!! クーリングオフ、帰ってどうぞ!!」


 きっぱりと断る女エルフ。

 彼女が一度こうと決めたら、変わらない性格だということをよくよく知っている男戦士。

 しぶしぶと、彼は、女エルフの言葉に従おうとした――。


 だが。


「待って待って、ちょっと待って!! 俺様を仲間にしてくれるなら、神様への謁見の割符をあげちゃうから!!」


 割符、という言葉にひっかかりを覚えた女エルフ。

 なにそれ、と、彼女が食いついたのを見て、ほほん、と、魔剣が少し余裕のある声をあげた。


「いやぁ、ただじゃ教えられないな。仲間にするって確約してくれないと」


「行きましょうかティト」


「待って待って!! いやほんと、調子乗ってごめん!! っていうか、俺様も、いい加減ここから出たかったんだよ、外の世界に連れてってプリーズ、ミー!!」


 叫ぶ魔剣を放っておいて、先へと進もうとする女エルフ。

 男戦士相手にはいろいろと受け答えするが、他人には容赦のない彼女だった。

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