第259話 魔性少年とリージョン

【前回のあらすじ】


 じわりじわりとバビブに押される魔性少年。

 しかし、そんな彼が不敵に笑った。


「バビブ!! 僕の力がこの程度だと思ってもらっては困るぞ――制限解除キャスト・オフ!!」


 そのセリフと共に宙を舞ったのは、白と黒の布。

 魔性少年は一瞬にして全裸になると、乳首と、尻と、局部に、ギリモザを発生させて、燦然と輝いたのだった。


 そして女エルフは、こいつも変態だったのか、と、げんなりとするのだった。


 ギャグ小説の登場人物に一般常識を求めてはいけないのです。


◇ ◇ ◇ ◇


 全裸になり、リミッターを解除した魔性少年。

 するとすぐさま、魔性少年まで迫っていた極彩色の光のカーテンが、反転してバビブの方に向かって移動しはじめた。


 じわりじわりとしたものではない。

 加速度的にその光はどんどんとバビブの方へと迫っていく。


 それまで余裕の表情を浮かべていたバビブ。

 しかし、まくしたてるようなその一転しての攻勢に、苦渋にその表情が歪む。


「どうしたバビブ!! この程度か!! 所詮、尻に一本ギリモザを背負う程度なのか!! もっと見せてみろよ、お前の本気を!!」


 挑発するように言う魔性少年。

 制限解除すっぽんぽんになってから、どうやら頭の制限も解除されてしまったらしい。


 それまでの理知的で、どこか落ち着いた雰囲気は蒸発してしまったようだ。

 どこか暴力的でそして大胆不敵なその口ぶりに、男戦士たちも思わず唸った。


「……っ、うがぁああああっ!!!!」


 バビブが叫ぶ。

 目前に迫った極彩色の光のカーテンを前に、全力を出し切ろうとしているのだ。


 しかし、悲しいかな、その咆哮は虚しくフロアに響いただけ。

 光のカーテンを跳ね返すことはおろか、彼のギリモザが増えることもなかった。


「そうか……。なるほど……」


「やめなさいよティト。何かに気がついたみたいだけど、至極ろくでもないことは間違いないから、口にするのはやめておきなさい」


「立派立派と思っていたが、バビブの局部はなんというか、こう……」


「ギリというには立派すぎる」


「それなんだよ、コーネリアさん!!」


 女修道士シスターがそれに同調した。

 そして、女エルフが彼らのトークからそっと身を引いた。


「あれではギリモザというより、全モザという感じになってしまう」


「いえむしろ、無修正フリー・スタイルというべきでしょう!! 彼のそれは立派すぎて、なんというか出る国を間違えている、そんな感じがします!!」


「おぉ、流石はシコりん!! 俺の思っていることを的確に言語化してくれる!! 流石は性職者だ、痴識が違う!!」


 なんじゃい無修正フリー・スタイルって。

 思ったが藪蛇になりそうだったので、女エルフはやめておくことにした。


 というか、関わり合いになりたくなかった。


 局部が露出すると、それを隠すために光が差し込もうが差し込まいが、そんなのどうだっていいことではないだろうか。


 というか、なんでそんなことでいちいち大騒ぎしなくてはいけないのか。


「ほらっ!! ほらほらっ!! 露出力の差は超能力の差!! 貴様のように、修正する価値もない大味な○ンコをしているのは、時代遅れなんだよ!!」


 そして、ヒートアップする魔性少年。

 いけない、これ以上は見てはいられない。


 そっと、女エルフはワンコ教授の目を塞ぐと、彼らに背を向けたのだった。


「しかし、今考えると、モーラさんもギリモザが使えなかったな」


「使えないのかと思っていましたが、もしかすると、彼女も無修正フリー・スタイルという可能性が、微粒子レベルで存在するのでは」


「しないから、やめて、もうその話を口にするのは勘弁して。お願いだから」


 魔性少年へと向けられていた視線が、自分の背中に突き刺さっているのを感じて、女エルフはたまらず声を上げた。


 はい、もう、いつもの流れである。


 男戦士も女修道士シスターも、いつもの顔を女エルフに向けていた。


「確かに、ブロンドの髪に碧眼は、無修正フリー・スタイルによくみられる特徴」


「ダークオークの男優とセットで出てくるのがお決まりですからねぇ」


「かけるほどでもないのではなく、あえてかけていなかったとは。まったくもって目から鱗という奴だな」


「えぇ、本当に」


「流石だなどエルフさん、さすがだ」


「流石ですどエルフさん、さすがです」


「あー、もう、みんな○んじゃえばいいのに」


 ギリモザは用法用量と国の基準を守って正しくお使いください。

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