第63話 どエルフさんと選手入場
【前回のあらすじ】
冒険を終えて拠点としている街へと帰ってきた男戦士一行。
鎧のメンテで街を動けなくなった男戦士とエルフ娘は、街の武闘大会に参加することにしたのであった。
====
「さぁ、というわけでやてまいりました!! 冒険者の街恒例、武闘大会!! 今年も総勢16組のチームがエントリーしてくれました!!」
闘技場の中央でやいのやいのと司会をしているのは、うさぎ耳の獣人娘。
手には拡声の効果を持たせたメガホンを持っている。
石造りの観客席は大勢の人で賑わい、座席の間を籠にぎっしりと食べ物を背負った、行商人達が往来している。
その一角、闘技場の北側ステージの正面に、
ワンコ教授は両手いっぱいにサンドウィッチやおにぎりを。
女修道士はお気に入りの杖を抱えて心配そうな顔つきだ。
「いよいよ始まったんだぞ、武闘大会」
「ティトさん、モーラさん。優勝できるとよいのですが――」
固唾を飲んでパーティメンバーが見守る。
そんな中、とうの男戦士たちは、闘技場横の選手控室で待機していた。
「しかし全選手の紹介から始めるなんてね。そんなの興味あるのかしら」
「大会となれば自然ギャンブルが起こる。氏素性はともかく姿形も分からない状態で賭け事をする気にはならないだろう」
「うげげ、やな理由ねぇ」
「命のやりとりがないだけまだマシな方さ」
苦い顔をした女エルフの肩を叩く男戦士。
そんな男戦士の前を、昨日、選手登録の場で一緒になった、黒衣の騎士が通り過ぎていく。
鎧を外してこそいるが、やはり上から下まで黒ずくめ。
異様な格好に、思わず女エルフは息を飲んだ。
「運良く別のブロックに分かれたな、メチャデッカー」
「剣を交えるのは決勝か。今から楽しみだ、オニーチャンスキスキー」
「本名で呼び合いなさいよ」
冷淡そうな顔つきに似合わない笑顔を見せて、男戦士の横を通り過ぎる黒衣の騎士。そんな彼に続いて、頭の先から踵まで茶色いローブを纏った、相棒が続く。
その体格から、魔法使いではなく戦士タイプか。
あるいは騎士のほうが実は魔法も使うタイプなのかもしれない。
「油断できない相手だな」
「うん」
そんな会話をする男戦士と女エルフの元に、会場からの声が響く。
「全身黒ずくめと全身ローブの二人組!! その思わせぶりな出で立ちだけでお腹いっぱいだ!! シュラト選手とアリエス選手!!」
「なんかよくわかんない感じの紹介ね」
「まぁ、勢いでぱっと言っているんだから仕方ないだろう」
さぁ、俺達の出番だ、と、男戦士が女エルフの手を引く。
正直気乗りがしないとばかりに、うんざりとした顔をするエルフ。
勘がいいというかなんというか。
この手の展開になれてきたからだろうか、しぶしぶという感じで、彼女は闘技場の舞台へと歩み出たのだった。
陽の光と共に、わぁと浴びせかけられる観客たちの声援。
「さぁ、さぁ続いて出てきたのは、口を開けばエロばかり、身体に色気はないけれど大人のお話ならどんとこい、ドスケベエルフ娘モーラ選手!!」
「おい、ちょっと、ティト!! アンタ、絶対あらかじめ情報流しておいたでしょこれ!!」
「さて、なんのことやら――」
「そしてそんなドスケベエルフの下ネタに毎日お悩み中。もっと包容力とバブみのあるママエルフ募集中、ティト選手です!!」
「アンタもアンタでなんて情報流してんのよ!! というか、何よ、ママエルフって!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます